(二)-8

文字数 355文字

 そもそもあそこは山の中だ。崖崩れの現場には、家の残骸は見当たらなかった。あくまでも山の斜面の木々や地面が崩れただけだった。そんな中を、車がないと不便なあのエリアを、雨の中歩いている人がいるのだろうか。急峻な地形で、森の中を気軽に散歩できるような場所ではない。野生のイノシシや猿ならまだしも、マタギでもなければ人がいる方が不自然なところだ。事件を疑わずにはいられなかった。
 とはいうものの、遺体の検死もまだだ。死因も特定されていない。確かに単純に土砂崩れに巻き込まれたという単純な事故である可能性も十分にあった。
 ともかく、二人の事情聴取が終わると、汎人と秀美は竹並警部補の運転する車で土岐川村の駐在所まで送ってもらった。そもそもレンタカーを駐在所に置いてきてしまっており、取りに戻らねばならなかった。

(続く)
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