第20話

文字数 2,358文字

「う、う~ん」

「コ、コウル?」

サンドゴクンに飲まれたコウルとエイリーン。目が覚めた場所は――。

「ここは……そうかあのモンスターに喰われて」

「すいません。わたしが力不足なせいで……」

コウルは首を横に振る。

「そんな、エイリーンのせいじゃないよ。とにかく今はどう出ようか考えよう?」

コウルはエイリーンを慰めると、さっそく出る方法を考えるが――。

(出るなら口からがいいな。尻から出るのは嫌だなあ……)

余計なことも考えていた。

「コウル?」

「い、いや、どう出ようかなと思って?」

エイリーンは考える。

「鼻の方へ向かって、くすぐるのはどうでしょう?」

「くしゃみで出るの?」

「はい。一番無難ではないですか?」

「うん、そうだね」

コウルはほっとした。尻から出ようと言われたらどうしようかと思ったからだ。

「ただ……どこから出るにしろ、砂の中になるのは覚悟するべきですね。サンドゴクンは基本砂の中にいるモンスターですから」

「それは……仕方ないね」

コウルは周りを見て改めて感じた。たしかに体内だというのに砂が多い。

「とりあえず行こうか」

「はい」

二人は体内を歩き出す。だが数歩歩いてコウルは気づいた。

「鼻ってどっち?」

「あ……」

さっそく二人は立ち止まる。適当に行ってそこが尻だったら、目も当てられない。

「そ、そうです。こんな時こそ!」

エイリーンは、砂に混じって落ちていた枝を拾うと、以前コウルがやったように、枝を立てる。そして枝は倒れた。

「あっちです」

「エイリーンも人のこと言えないじゃないか」

コウルは苦笑いしながら言った。

「女神見習いの力を甘くみないでください。こっちで間違いありません」

エイリーンがそう言ったすぐ後だった。

サンドゴクンが息を大きく吸ったのか、体内に風が吹く。

その吹いてくる方向は確かに、枝が倒れた方向であった。

「ほら!」

「ええ……」

コウルは唖然とするしかない。

しかし、風が吹いたのは事実。二人はその方向に歩き出す。しかし――。

「グゴゴ……」

「モンスターの中にモンスター!?」

モンスターの体内であるはずの場所にまたモンスターがいた。

「きっと、サンドゴクンが他のモンスターも飲み込んでいたんです」

「飲まれたもの同士だけど、襲ってくるのなら!」

コウルは剣を抜く。試してみたいこともあった。それは――。

「二刀流だ!」

前から使っているサファイアミスリルの剣と、神具の剣による二刀流。これをコウルはやりたかった。

コウルの斬撃がモンスターを蹴散らす。が、いまいちバランスが安定しない。

その隙を付かれ、モンスターの攻撃がコウルをかすめる。

「っ……。このっ!」

最後の一匹を斬り倒し、コウルは剣をしまった。

「いてて、いきなり慣れないことはするものじゃないね」

「手としては悪くないと思いますが、練習ですよコウル」

治療しながらエイリーンが言う。

「そうだね。治療ありがとう。さあ、行こうか」

二人で改めてサンドゴクンの鼻を目指す。その後も喰われてきたモンスターと戦いながら。

そして――。

「ここがおそらく鼻です。ですが……」

二人は周りを見る。鼻の穴らしきものが見当たらない。

「行き止まりだね。鼻じゃないのかな?」

「ここで間違いないはずですが……」

その時だった。二人の目の前で大穴が開く。

「これだ、今のうちに――!?」

コウルがエイリーンの手を引き、外に出ようとした時だった。

暴風が二人を体内に引き戻す。

「そ、そうか。息を吸い込んでいるから……」

「ですが、それなら」

二人はなるべく吸い込まれないように堪える。そして少しすると逆に息が吐きだされる。

二人はその息の勢いに乗るように、外、いや砂に放り出された。

「あいたっ」

「きゃっ」

二人は砂の中に突っ込む。

「コ、コウル。今のうちになるべくサンドゴクンから離れましょう」

二人は、サンドゴクンから離れるように走る。そのまま柱の陰に隠れた。

しばらく隠れているとサンドゴクンはまた砂の中に潜っていく。

「……行ったみたいだね」

「はい」

コウルは柱に寄りかかり座った。

「ふう。一時はどうなるかと思ったよ」

「ですが、ここはどこでしょう?」

二人が吐き出されたのは、神具があった場所とはまた違う洞窟の中のようだった。

「洞窟……遺跡にも見えるね。ここにも何か置いてあるのかな?」

「神具以外に珍しいものはないはずですが……」

二人はせっかくなので周りを探してみる。すると奥に何かが見えた。

「これは……」

「宝石……のようですね」

二人の目の前にあるのは黄金色の宝玉。

いかにも高級感があるが二人はそれがなんなのかはわからない。

「せっかくだし、持っていく?」

「えっ、いいんでしょうか?」

コウルはとりあえずと、宝玉を荷物にしまう。すると周りが揺れ始めた。

「あー……やっぱり、取ったら作動する罠?」

「に、逃げましょう」

二人で洞窟を走る。そしてなんとか外に出た。

「はあはあ、罠にかかったり、喰われたり、大変だね今日は」

「宝玉は……置いて来れば問題なかったのでは……」

二人で息を切らしながら苦笑いした。

そのまま二人は、またサンドゴクンに喰われないように、海辺へと向かい、そこで一休みする。

「神具は残り三つ。このままのペースで早く手に入るといいね」

「何事も起きなければなおいいんですけど……」

二人は眠りに落ちる。また次の日、何か起きることを感じながら……。
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