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文字数 1,036文字

「まだ……高校生の筈だったよね……あの人?」
(らん)の事か、そうだけど?」
 クソ女のウチには、あたしと茶髪のボブカットの女だけが居た。
「な……何、これ?」
 本棚には……結構な数の英語で書かれた本が有った。
「それ作る為だそうだ」
 そう言って指差した先には……机の上に有る……。
「まさか、これ、フィギアとかオモチャじゃないの?」
 あたしは、全長六〇㎝ぐらいのロボット恐竜を眺めながら、そう言った。
 同じ机の上には……妙に小さめのPC用のキーボードと恐竜か怪獣の足をデフォルメしたみたいな形をしたマウス、そしてPC用としてもかなり大き目のモニターが2つ。
 モニターの1つは横置きで、もう1つは縦置き。
「下手に触るなよ。壊したら、あいつ怒るぞ。ようやく、最近、走れるようになったそうだ。人間が走るのと同じ程度のスピードでな」
「あの人が……作ったの?」
「ああ……」
「一体……何者なの、あの人?」
「ただの高校生だ……あの……久留米駅の近くの進学校の理系コースに通ってて……」
「ちょ……ちょっと待って、県内の公立ではトップ3に入るとこじゃ……」
「らしいな……久留米に引っ越して1年経ってねえんで良く知らないけど。で、部活は電子工作部」
「は……はぁ……それで、武術の達人?」
「あいつの伯父さんも知ってるけど……まぁ、あんな一家に育ったならフツ〜程度の腕だろ」
「どう言う一家よ?」
「訳有りの一家なんてめずらしくもねえ」
「あなたも……訳有り?」
「まあな……去年の終わり頃までNeo Tokyoの台東区(Site04)に居た」
 Neo Tokyoとは、一一年前の富士山の噴火と、それによる旧首都圏壊滅で大量発生した「関東難民」が暮す人工島で、現在、日本各地に計5つ存在している。
「何で、こっちに?」
「『自警団』の上司とトラブって千明と一緒に、こっちに逃げて来た」
 「自警団」ってのは……たしか、警察とも本土(こっち)の「正義の味方」とも違うNeo Tokyo独自の治安維持組織らしいけど……良くは知らない。
 そう言えば……「御当地魔法少女」が()()()()登場したのは、一一年前の富士山の噴火以降だけど……何故か、同じく富士山の噴火が切っ掛けで出来たNeo Tokyoに「御当地魔法少女」が居るって話は聞いた事が無い。
 その事と「御当地魔法少女」の運営の多くが暴力団だった事とは、ひょっとしたら何か関係が有るのかも知れない。
「向こうで何やったの?」
「色々だ」
「こっちと向こうでは、どっちが……」
「どっちもどっち……一長一短かな?」
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