モグラの手紙

文字数 452文字

カモメよ 飛んでいるか
私もいずれは空を飛ぶものだと思っていたが
翼を生やして空を駆る日が来るのだと思っていたが
どうして私はモグラだから
やはり土の下が心地良いようだ

カモメよ 飛んでいるか
空の青さは知ったのかい
風の冷たさは知ったのかい
私は土の温かさと
揺れる大地の怖さを知ったよ
君は知らないだろうが
染み込む雨の冷たさも
そちらと違わず冷たいものだよ

カモメよ 飛んでいるか
今日は俄かに風が強いようだから
気をつけてくださいね
モグラの私はどのみち
土の下で静かに眠っているけれど

カモメよ 飛んでいるか
昔は私も君と並んで飛ぶ未来を思ったものだが
どうして私はモグラだから
この暗くて温かい土を下へ下へと
潜っていくのが生き場所なのだよ

カモメよ 飛んでいるか
いずれまた会うこともあるだろう
その時は空の青さや
跳ねる魚たちのことを教えておくれ
私も土の温かさや
たくさんの虫たちのことを話すよ

カモメよ 飛んでいるか
たまには地面に降りて来てくれ
そしたら私も空の下に顔を出すから
そんな日もいずれ来るだろうから

カモメよ どこまでも飛んで行ってくれ
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