6畳間の慰み

文字数 290文字

ベランダで死んだ神様
その遺体はひどく美しかった
朴訥とした空気の狭間から湧いた焦燥が
遺体の周りを飾り立てた
その時の光景はいかなる壮麗な絵画も凌駕して
神秘的な美貌を湛えていた
窓から入る空気は腐臭がしたが
美貌の前には膝まづくしかなかった
真夏の湿気が肌を腐らせたが
そんなものは二の次だった
分かってはいたが知らぬふりをした
明晩その神様の遺体も腐り落ちて
階下の住人から苦情が来た
実は分かっていた
だがわざとショックを受けて見せた
それは信仰のためかもしれないし
そう書いて慰めと読むかもしれない
涙が枯れていたおかげで
厚顔無恥とのそしりは受けずに済みそうだ
ベランダで死んだ神様
それが暴いた6畳間の慰み
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