第5話 ジブリ・炭酸水・電磁波

文字数 1,304文字

 なな月にじゅう日
 きょおから なつやすみです
 うれしいな
 きょおは いえで えいがをみました
 おかあさんは ないていました
 ぼくは いみが よくわかりませんでした


 しち月にじゅうご日(はれ)
 きょうは、とてもいいてんきでした。
 おかあさんは、そとであそんできなさいといいましたが、いとこのまーくんが「そとは、ねっちゅうしょうになるよ」といって、ぼくたちはずっとげーむをしてあそびました。
 ねっちゅうしょうってなんだろう。


 七月三十日(晴れ)
 今日は漢字ドリルの宿題をやりました。
 ねっちゅうしょうは「熱中症」と書くそうです。「熱中」は良いことなのに、「症」が付くと悪い言葉になるなんて、不思議だなあと思いました。


 八月五日(快晴)最高気温摂氏三十六度
 僕は「熱中症」に気をつけながら、毎日勉強に「熱中」しています。
 宿題のおかげで勉強の面白さに気付きました。ゲームなんてあんなもの一体どこが面白いのでしょうか。将来何の役にも立たないし、時間の無駄遣いです。
 そんなものばかりやっていると馬鹿になるよと、親切に教えてあげたのに、まー君はひどく怒って僕を強く突き飛ばしました。今の僕の力では仕返しできないので、格闘技の勉強を始めました。


 八月十日(雨)不快指数七十七%
 将司氏を正拳突きで病院送りにした件について、母をはじめ大人たちから苛烈な叱責を受けたが、未だに納得できない。はじめに突き飛ばしてきたのは将司氏であり、私は何も間違ったことは言っていないはずである。
 ともあれ、夏休みも折り返しだ。不愉快な事柄にいつまでもかかずりあってはいられない。私には勉強がある。


 八月拾伍日(大安)
 勉強の時は好んで炭酸飲料を飲んで居る。此れを飲むと痺れが喉の奥から脳まで届いて、明晰になるのだ。
 此の聡明な頭脳を更に明晰にし、此の世の謎を須らく解明するには、より強力な炭酸飲料が必要である。
 私は逡巡なく、炭酸水の研究に着手した。先ずクエン酸と重曹で試作してみたが、こんな物は子供騙し以下と言わざるを得ない。


 8・20
 ガス
 代用
 波動
 光と闇
 役目
 尊師


 8月25日
 偉大なる尊師のお導きにより、私は炭酸水などよりはるかに強力な刺激を手に入れた。
 電磁波である。
 アムガーハ・エスティード三式ヘッドギアを装着し、レベルを最大にしてスイッチを入れると、

 あはははは!!!!

 全部わかる!!!!

 母親がジブリ映画で泣いていた理由もよくわかる!!!!

 わかりみの爆弾が爆発する!!

 アリガ・トウゴ・ザイ・マス!!!!!!!!!!



 八月三十日(くもり)上村将司
 いとこのゆうくんがいなくなって、今日で一週間になります。
 とてもとても心配です。
 ぼくを叩いたこと、ぼくはもうおこっていません。はじめにつきとばしたのはぼくでした。はやく仲なおりしたいです。
 ゆうくん、今どこにいて、何をしていますか。明日から学校が始まります。ぼくもみんなも、本当に心配しています。どうかぶじで帰ってきてください。
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