第1話:イケメンを拾う
文字数 835文字
「何もやる事がないのなら、私に仕えなさいよアンタ!」
私は男に命令した。男は、ぼんやりとした顔のまま頷いた。
父が「山奥に旅人用の宿を建てて儲けよう」と山で工事を始めたところ、1つの棺が掘り出された。
中には、長いぼさぼさの髪の毛で全身が全く見えなくなっている人間の男がいた。
「気味が悪い、すぐに処分しよう」
父がそう言った瞬間、そいつは起き上がった。
私は従者たちの静止を振り切って、そいつに近づき、そいつの髪をかきあげた。体格と雰囲気的に美男だと思っていたが、やはり美男だった。汚れを落とせば更に相当の美男になるだろう。
「これを屋敷に連れてって。そして、洗いに洗いまくって!」
父はおろおろと拒否したが、私は全力で駄々をこね、男を屋敷に連れ帰らせた。
男はウチの従者たちに洗われに洗われ、うざったい髪も切られ、とてもさっぱりとした美男に進化して私の前に引きずり出された。
「あんた、なんなの!?」
男は答えずただ自分の口を指さした。
「……なぁに、しゃべれないの!?」
男はこくりと頷く。
「そんなザマじゃ、世間で生きていけないわね!!」
男はこくりと頷く。
「行く所はあるの!?」
男は首を横に振った。
そして、私は冒頭のセリフを吐いた。
美男がそばでお世話してくれるとか、いいじゃない。ステキじゃない。
土から出てきたから適当に「ツチオ」と名付けておいた。
それを聞いた瞬間、ツチオは苦笑した。
ツチオは万能だった。掃除、縫い物、料理、洗濯……。
私が「アレ食べたい」とか「読みたい」とか言った物を、イヤな顔ひとつせずにすぐに作ってくれるか、買ってきてくれた。父親より、おんぶや抱っこをよくしてくれた。
他の使用人からも評判は良く、悪い噂は全く聞かなかった。「いつもニコニコ穏やか気持ち悪い」という嫉妬混じりの賛辞なら、よく耳にした。
お給料をはずんであげたら、この前出かけた時に私が欲しがったビロードの傘ランプを買ってきた。
バッカじゃないの、自分の為に使いなさいよ。
私は男に命令した。男は、ぼんやりとした顔のまま頷いた。
父が「山奥に旅人用の宿を建てて儲けよう」と山で工事を始めたところ、1つの棺が掘り出された。
中には、長いぼさぼさの髪の毛で全身が全く見えなくなっている人間の男がいた。
「気味が悪い、すぐに処分しよう」
父がそう言った瞬間、そいつは起き上がった。
私は従者たちの静止を振り切って、そいつに近づき、そいつの髪をかきあげた。体格と雰囲気的に美男だと思っていたが、やはり美男だった。汚れを落とせば更に相当の美男になるだろう。
「これを屋敷に連れてって。そして、洗いに洗いまくって!」
父はおろおろと拒否したが、私は全力で駄々をこね、男を屋敷に連れ帰らせた。
男はウチの従者たちに洗われに洗われ、うざったい髪も切られ、とてもさっぱりとした美男に進化して私の前に引きずり出された。
「あんた、なんなの!?」
男は答えずただ自分の口を指さした。
「……なぁに、しゃべれないの!?」
男はこくりと頷く。
「そんなザマじゃ、世間で生きていけないわね!!」
男はこくりと頷く。
「行く所はあるの!?」
男は首を横に振った。
そして、私は冒頭のセリフを吐いた。
美男がそばでお世話してくれるとか、いいじゃない。ステキじゃない。
土から出てきたから適当に「ツチオ」と名付けておいた。
それを聞いた瞬間、ツチオは苦笑した。
ツチオは万能だった。掃除、縫い物、料理、洗濯……。
私が「アレ食べたい」とか「読みたい」とか言った物を、イヤな顔ひとつせずにすぐに作ってくれるか、買ってきてくれた。父親より、おんぶや抱っこをよくしてくれた。
他の使用人からも評判は良く、悪い噂は全く聞かなかった。「いつもニコニコ穏やか気持ち悪い」という嫉妬混じりの賛辞なら、よく耳にした。
お給料をはずんであげたら、この前出かけた時に私が欲しがったビロードの傘ランプを買ってきた。
バッカじゃないの、自分の為に使いなさいよ。