第2話:どうも。“上の下の”美青年です

文字数 716文字

 お嬢様は「アレ食べたい」だの「読みたい」だのうるせぇのなんの、だった。
 おんぶや抱っこも、さんざ要求してきた。俺のお得意の“作り穏やか笑顔”を信じて、さんざナメきった態度をとりまくった。
 
 屋敷内の家事も、こなしてやった。
 掃除、縫い物、料理、洗濯……。昔の友人に教わったスキルを遺憾なく使った。
 ちなみに、その友人の顔はぼんやりとしか思い出せなくなっていた。
 
******** 
 
 ところで、その友人いわく俺は“上の(じょうのげ)の美青年”だそうだ。
 そう評価された当時は「そんな事ないです」と否定していたが…………成程。
 屋敷内の家政婦たちが、友人いわくに言い寄ってくる。
 ちょっと優しくすると、家政婦たちはきゃあきゃあ言った。…………ので、たまに相手をした。
 女は、俺に抱かれて嬉しい。俺は心の謎の寂しさを一瞬でも埋めることができて、いい。
 昔は気がつかなかったが、顔がいいのは得である。
 
 その友人は昔、俺に「女と付き合え」とやたら出会いの場を設けた。しかし、俺はことごとくその場から逃げ続けた。
 
 人と親しくなる事が、怖かった。
 人と仲良くなって、最終的に行き着く先は“性行為”だ。当時の俺は“性行為”を嫌悪していた。金をもらえたり、脅されれば仕方なくソレをしたが、基本的にはしたくなかった。
 友人は俺を「可哀想なヤツ」と嘆いた。
 
 その友人が、今の俺を見たら「女を抱けるようになったのかぁ!」と喜んでくれるだろうか。
 そう考え事をしている間に、俺の下の女が果てた。
 
********
 
 自分には何もほしい物がなかったので、いただいたお給料はお嬢様が欲しがっていた物を買ってあげて消費した。
 すると、ひどく喜ばれて更になつかれた。
 
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登場人物紹介

※自作絵 

お嬢様。生意気わがままツンデレ。

政略結婚から、逃亡する。

※自作絵

土から現れたから『ツチオ』とか名付けられた執事。

ヘラっヘラしているが……?

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