第6話
文字数 1,457文字
三日後、小さな記録媒体をもってツムギがクラスにやってきた。預かって「放課後にまた」と別れた。ツムギは極端に沈み込んでいた、先に自分だけで見たのだろうか? さすがにそれはできないと思うけれど。
放課後、どういう嗅覚を働かせたのか知らないが、呼んでもいない七海が現れた。タブレットとリーダーをケーブルで繋いでチップを差し込んだ。みんなで三角形になってタブレットをのぞき込む。七海は腕組み後方彼氏面だ、なんだこいつ。
動画再生が始まった、え? 小さなカメラでこんなに鮮明に映るの? ツムギの部屋は嫌に片付いていた、もっと乱雑に散らかして生活感出した方が効果的だったんじゃないのか、いやエロい意味じゃなくて。ソータの雑念を尻目にレンリは動画を5倍速まで加速させた。さすがに映ってないかなー、ちょっと! 待って止めて!
巻き戻す。高速で影が動いたように見えた。
再生する。どこからか発生しているホワイトノイズ…… に、急にドアのカギを解除する音が入った。
ツムギは首を振った。鍵ならここにあります、と。やっぱり勝手に合鍵を作られていた? 男の影が入室した。
レンリが物凄い勢いでソフトケースで画面を隠した。
七海が口を開いた。
「なんだこの男、めちゃくちゃ黒じゃないか。動画を撮り出して初日でこれなら、きっと毎日物色してるだろ。よし長浜、これでどこに行っても勝てるぞ。児相に行っても、警察に行っても、法律相談でもな。保護を求めるなら児相がいいのかな? 警察は…… この場合ちゃんと機能しないか。しっかしとんでもねぇ奴だな、太え奴だ。確かに長浜は女に縁のなさそうな男には刺激が強すぎるのかもな。もしかしたら本人はいたってピュアな恋愛しているつもりなのかもしれない。無茶苦茶な酔い方をしてなけりゃこんなに大胆に振る舞えないよな」
レンリは目でソータに合図をした。黙らせて!
まかせろ。
「おい、七海。てめえ口くせえぞ、黙れ」
「は? なんでお前が突っかかってくるんだ? そうじゃなくて…… 画面のブタ野郎が…… いや、何言ってんのお前、おれは毎日お口くちゅくちゅしてんだぞ!」
「くせえっつってんだろ、黙れ」ピキピキ。
ああん、やんのかゴラァ、ブチ転がすぞドラァ、めためたのギッタギタだぞオラァ。
ヒョロヒョロの不健康男ども二人は、それぞれに間違ったヤンキー概念を用いて威嚇しだした。
「ごめんなさい」と、なぜかツムギが謝った。
「ごめんなさい!」走って逃げた。「待って!」レンリ、追いかける。
ところがツムギの走り方は手足の連動がバラバラで、廊下を教室一つ分走ってすぐにレンリに捕まった。
「待ってツムギちゃん、待って!」
レンリは「逃げないで」とは言わなかった。
「ひとりにならないで! ひとりになっちゃダメ!」
ツムギはレンリの胸の中でわんわんと泣き出した。
七海だけ目の前で繰り広げられる青春ドラマについていけていなかった。
「え? なんで長浜が謝るんだ? 違うだろ、悪いのは映像の中の男だろ明らかに。もう長浜は勝ち確じゃないか。あとちょっと頑張るだけじゃないか」
「居場所もないのに頑張れないって」
「何言ってんだ、それが現実だろ、リアルだろ。むしろ居場所なんて誰にもないじゃないか、アルコールで誤魔化したり、勢いで誤魔化したりして闘うしかないんだ」
「仲間もいないのに闘えないって!」
「嘘だろ……」
「あとは大人に任せろって、言ってやれないのか?」
「え? なんで?」
「もういいよ! バカ!」
もうこの手のタイプの大人に期待しちゃだめなんだ。
放課後、どういう嗅覚を働かせたのか知らないが、呼んでもいない七海が現れた。タブレットとリーダーをケーブルで繋いでチップを差し込んだ。みんなで三角形になってタブレットをのぞき込む。七海は腕組み後方彼氏面だ、なんだこいつ。
動画再生が始まった、え? 小さなカメラでこんなに鮮明に映るの? ツムギの部屋は嫌に片付いていた、もっと乱雑に散らかして生活感出した方が効果的だったんじゃないのか、いやエロい意味じゃなくて。ソータの雑念を尻目にレンリは動画を5倍速まで加速させた。さすがに映ってないかなー、ちょっと! 待って止めて!
巻き戻す。高速で影が動いたように見えた。
再生する。どこからか発生しているホワイトノイズ…… に、急にドアのカギを解除する音が入った。
ツムギは首を振った。鍵ならここにあります、と。やっぱり勝手に合鍵を作られていた? 男の影が入室した。
レンリが物凄い勢いでソフトケースで画面を隠した。
七海が口を開いた。
「なんだこの男、めちゃくちゃ黒じゃないか。動画を撮り出して初日でこれなら、きっと毎日物色してるだろ。よし長浜、これでどこに行っても勝てるぞ。児相に行っても、警察に行っても、法律相談でもな。保護を求めるなら児相がいいのかな? 警察は…… この場合ちゃんと機能しないか。しっかしとんでもねぇ奴だな、太え奴だ。確かに長浜は女に縁のなさそうな男には刺激が強すぎるのかもな。もしかしたら本人はいたってピュアな恋愛しているつもりなのかもしれない。無茶苦茶な酔い方をしてなけりゃこんなに大胆に振る舞えないよな」
レンリは目でソータに合図をした。黙らせて!
まかせろ。
「おい、七海。てめえ口くせえぞ、黙れ」
「は? なんでお前が突っかかってくるんだ? そうじゃなくて…… 画面のブタ野郎が…… いや、何言ってんのお前、おれは毎日お口くちゅくちゅしてんだぞ!」
「くせえっつってんだろ、黙れ」ピキピキ。
ああん、やんのかゴラァ、ブチ転がすぞドラァ、めためたのギッタギタだぞオラァ。
ヒョロヒョロの不健康男ども二人は、それぞれに間違ったヤンキー概念を用いて威嚇しだした。
「ごめんなさい」と、なぜかツムギが謝った。
「ごめんなさい!」走って逃げた。「待って!」レンリ、追いかける。
ところがツムギの走り方は手足の連動がバラバラで、廊下を教室一つ分走ってすぐにレンリに捕まった。
「待ってツムギちゃん、待って!」
レンリは「逃げないで」とは言わなかった。
「ひとりにならないで! ひとりになっちゃダメ!」
ツムギはレンリの胸の中でわんわんと泣き出した。
七海だけ目の前で繰り広げられる青春ドラマについていけていなかった。
「え? なんで長浜が謝るんだ? 違うだろ、悪いのは映像の中の男だろ明らかに。もう長浜は勝ち確じゃないか。あとちょっと頑張るだけじゃないか」
「居場所もないのに頑張れないって」
「何言ってんだ、それが現実だろ、リアルだろ。むしろ居場所なんて誰にもないじゃないか、アルコールで誤魔化したり、勢いで誤魔化したりして闘うしかないんだ」
「仲間もいないのに闘えないって!」
「嘘だろ……」
「あとは大人に任せろって、言ってやれないのか?」
「え? なんで?」
「もういいよ! バカ!」
もうこの手のタイプの大人に期待しちゃだめなんだ。