1:21 犠牲者

文字数 1,122文字

占領側、グレン・リヴァルとクロタニ、他、5人の部下の計7名、
対する、被占領側、柳部長、浅見課長、他、新人含む10人の国際決済部のメンバーは、睨み合っていた。

グレン・リヴァルの部下達が構えるアサルトライフルの銃口は国際決済部のメンバー達に向けられていた。

「お前が、責任者か?」

グレン・リヴァルが柳部長に問いかけた。

「お前達は何が望みなんだ、なぜこんな事をする!」

柳部長は冷や汗をかきながら苦しそうに答えた。冷や汗の原因は、銃を突きつけられたためだけではなかった。

「我々は民族解放戦線グングニル。我々の要求に従えば貴様らはすぐに解放する。要求を断るのであれば1人づつ殺していく」

グレン・リヴァルの部下が国際決済部の新人 工藤梨花の髪の毛を掴んで国際決済部の集団の中から引き摺り出した。

「ひ・・・ひいぃ・・・」

工藤梨花が悲鳴をあげた。

「やめろ!部下達に手を出すな!
お前らの要求とは何だ!」

グレン・リヴァルは柳部長に一枚の用紙を差し出した。

「東京帝都銀行の口座から、この用紙に書いてあるスイス口座に1億ドルを送金するよう、SWIFTネットワークへの送金処理メッセージを打て。それだけだ」

柳部長はその用紙を見た。

本番環境ルームのコンピュータシステムは、東京帝都銀行の実運用されている銀行口座に直接繋がっている。TOTEI-GSCを用いれば、銀行に開設されているどこかの口座から、用紙に記載のある口座に1億ドルを国際回線を用いて送金することは、極めて容易なことだった。

だが・・・

「貴様らのような犯罪シンジゲートの口座に1億ドルを送金しろだと?
断る!
そんな犯罪に加担するためにTOTEI-GSCを使うわけにはいかん!」

「ならば仕方ないな、やれ!」

グレン・リヴァルの部下がアサルトライフルの銃口を工藤梨花の頭に向けた。

「部下に手を出すなと言ったはずだ!」

「そうか、我々の要求を拒む責任者など必要ない。お前から始末してやる」

ガンッ!
グレン・リヴァルは柳部長を、手に持った短銃の銃口で殴りつけた。

「やめろ!柳部長は心臓が悪いんだ!」

国際決済部の課長代理、嶋田が叫んだ。

嶋田の声に構わずグレン・リヴァルは柳部長を暴行した。
国際決済部の社員達はなすすべなく呆然とその光景を見るしかなかった。
しばらくして、柳部長はそのまま動かなくなった。

「死んだか・・・」

社員達の悲鳴が本番環境ルームにこだました。

『ジャマール、お前は、この死体をどこかに持っていけ。
あと、お前達2人は、ジャマールと共に死体運びを手伝い、そのまま11階の非常階段を見張れ』

『ハッ!』

グレン・リヴァルが異国語で部下達に命じた。
グレン・リヴァルの部下3人が心肺停止した柳部長を連れて本番環境ルームの外に出た。
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