2:22 執行役員室銃撃

文字数 1,093文字

執行役員室で、女性役員の谷本美里専務と、山極陽平の同期社員でもある風間人事部長は、来年度の全社経営施策について議論を交わしていた。

「貴方の話は良く分かったわ。風間部長。貴方の案は、年始明け、藤堂社長に報告しましょう」

「ありがとうございます、谷本専務」

「あらあら、もう深夜2時過ぎてるわ。今日の議論はもう終わりにしましょうか」

「承知しました」

「柳部長達、国際決済部のみんなにも何か挨拶してこようかしらね」

「そうですね。谷本専務が激励すれば、皆の励みにもなるかと思います」

谷本美里専務がソファから立ち上がって執行役員室から出ようとすると、

バンッ!

突然その執行役員室の扉が蹴り開けられた。

「お前が、谷本専務、そして、風間部長か」

扉を蹴り開けたのは、クロタニだった。

「誰だ?君は。
ここは専務執行役員室だ。
失礼じゃないか」

風間人事部長がクロタニに注意を促すと、

ガガガガガ!!

クロタニと一緒にいたグングニルのテロリスト、チャンクが、突然、アサルトライフルで執行役員室内を銃撃した。

風間人事部長は、咄嗟に谷本美里専務を庇って伏せた。

しばらくして銃撃が止むと、壁に掛けられていた絵画が銃撃で留め具が外れ、ガタンと床に落ちた。

「このビルは、俺たち民族解放戦線グングニルが占拠した。
俺たちの目的が達成されるまで、お前達を拉致する」

「ど、どういう事だ!何故こんな事をする!」

風間人事部長がクロタニに向かって怒鳴る。
その風間人事部長にクロタニが銃口を突きつけると、風間人事部長はその場に立ちすくんだ。

「チャンク、お前のその無線通信機器で、グレン・リヴァル達に、20階役員室の制圧が完了したことを伝えろ」

「ワ・・・分カリマシタ、クロタニサン・・・」

チャンクは持っていた無線通信機器でグレン・リヴァルと異国語で会話しようとした。

「そうか、貴様、思い出したぞ!
1か月ほど前に、東帝データの中途採用面接を受けに来た、白峰とかいう男!
経歴に怪しい点が見つかって、人事部で採用を見合わせていたが、国際決済部の浅見課長が強引に引き入れたと聞く。
貴様!やはり反社会組織に繋がりがある男だったのか!?」

風間人事部長の声に、クロタニは何も答えず、ニヤリと笑った。

「ク・・・クロタニサン、コノ使イ方、良ク分カリマセン」

「こうだろ、ここのボタン押すだけだ」

「ア、ナルホド・・・」

クロタニに無線通信機器の操作方法を教わり、チャンクはグレン・リヴァルと交信した。

「頭の悪い人間が同じ組織に居ると、お互い大変だな!」

そう言ってクロタニは風間人事部長を見て、ハハハと、笑い声を上げた。

風間人事部長が、恐怖に震える谷本美里専務の肩を抱き抱えた。
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