4:02 送金強制取消メッセージ

文字数 1,131文字

送金処理メッセージの有効化まで、後3分。

山極陽平と、神坂結衣は、19階本番環境ルームに着いた。

「神坂さん、TOTEI-GSCを起動するんだ!」

「え!?今!?」

「早く!」

「は・・・はい!」

神坂結衣はTOTEI-GSCのコンピュータを再度立ち上げた。

「柳部長、山極です。聞こえますか?」

山極陽平がトランシーバーで柳部長を呼んだ。

【山極君か、どうした?】

「反社会組織送金遮断システムへの、今現在のログインIDとパスワードを教えて下さい。今から、反社システムを単独状態(スタンドアロン)で起動して、送金強制取消メッセージをSWIFTネットワークに投げます」

【なるほど、その手があったか!】

「時間がありません!早く!」

【わかった、今から言うログインIDとパスワードを画面に打ち込め!いいか、言うぞ!】

山極陽平は反社会組織遮断システムのコンピュータを起動させると、柳部長の言った通りのログインIDとパスワードを打ち込んだ。



4:05まであと90秒

「よし、反社システム、ログイン成功!」

「こっちも、TOTEI-GSCにログイン出来たわ!
どうすれば良いの?」

「反社システムの構造は、めちゃくちゃシンプル。送信元口座と送信先口座、それに送金金額を画面に打ち込んで取消送信するだけ。神坂さん、TOTEI-GSCの臨時手入力送信処理の入力履歴を出すんだ!」

「ええ・・・
・・・今、画面に出したわ!」

「一番最後に入力された履歴!
おそらくそれが、グレン・リヴァルが打ち込んだSWIFTネットワークへの送金処理メッセージに違いないはずだ!」

「あった!これね!最後の入力履歴!
確かに1億ドルを不正口座に送金しようとしている!」

TOTEI-GSCのタイマーが、残り40秒を伝えた。

「山極さん!あと40秒!!」

「モニター画面を僕の方に向けて!」

山極陽平は、自身の方向に向けられた、神坂結衣が表示した画面を確認し、反社会組織送金遮断システムの画面に、送金元口座と送金先口座、そして、送金金額を、全集中かつ最速のスピードで打ち込みはじめた。

「あと20秒しかありません!」

神坂結衣が叫ぶ。

(間に合うか!?)

「山極さん!お願い!頑張って!!」

神坂結衣が応援し、山極陽平が凄まじい速さでキーボードを打つ。

「あと10秒!・・・9!・・・8!・・・」

山極陽平は入力をさらに早める。

「・・・7!・・・6!・・・5!・・・」

入力が終わった。送信ボタンを押下!

「・・・4!・・・3!・・・2!・・・」

山極陽平がバッと身を翻すと、神坂結衣と隣り合って、2人、TOTEI-GSCの画面を食い入るように見る。

タイマーが0:00:01を指した。

すると、次の瞬間、TOTEI-GSCの画面に、大きく、【送金処理メッセージ強制削除】の文字が現れた。
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