北の独裁国家

文字数 1,163文字

ある薄暗い、窓のない部屋の中、30代前半の1人の男がテーブルの上に黒いノートパソコンを起動し、オンライン会議で誰かと話していた。

「何度も、言うように、スイスの、我々の口座に、1億ドルを、入金、しろ、そうすれば、お前の、願いは、叶う」

画面の向こうの男は、辿々しい日本語でそう言った。

「では、お前たちの言う通りの額、1億ドルをお前たちの指定口座に振り込もう。
1億ドルの指定口座への入金予定時刻は、2024年1月1日元旦の午前2:00から5:00の間だ。
入金確認出来次第、当初計画通り、全ての作業を実行してもらおう」

「いいだ、ろう。金さえ、手に入れば、我々は、決して、約束を破らない、一族だ」

男はフフッと笑い、そして、突如真面目な顔をすると腕を組んで答えた。

「で、その保証はどこにあるのかね?
お前達が俺を裏切らないという保証だよ」

「我々の、取引は、全てコンピュータシステムで、管理されている。口座への入金が、コンピュータ、システムで、確認、できれば、自動的に、発射装置は、起動する。人の、手が介在することは、無い。だから、コンピュータシステムの処理が走れば、裏切ることも、約束を破ることも、出来ない」

画面の向こうの男は、プレゼンテーション資料を映し出して、1億ドルの資金の流れと計画を図で示した。そのターゲットはG7サミットが開催されている広島に指定されている。

「フン、最近は、犯罪シンジゲートですら、デジタル化やオートメーションが進んでいるのだな」

男は手元のコーヒーカップを口につけた。

「とにかく、パク・リョンジュよ。来年初1月1日朝5:00までに、必ず150億は指定口座に入金する。俺は絶対に失敗しない。
お前達のような北の独裁国家を使うことは、こちらにも大変大きなリスクがある。
必ず成功させろよ」

「気安く、名前を呼ぶな、クロタニ。
偉そうな事は、金を、振り込んでから、言え」

パク・リョンジュと呼ばれた、北の独裁国家の男は、クロタニと呼んだ男に注意を促した。

そして、パク・リョンジュはオンライン会議から姿を消した。

クロタニの目の前のパソコン画面には、黒いウィンドウだけが不気味に映っている。

クロタニは思った。とにかく、今の所属する指定暴力団木村組で、実績を上げてのし上がるには、金だ。とにかく多くの金を上納するしかない。

そして、今のところ、その金の準備については、全てが順調に進んでいる。

男は偽装した免許証や卒業証書、自身の名刺を再度確認した。名刺の会社名には、株式会社東京帝都データソリューションズと書かれていた。

後はターゲットの会社に潜り込んで、【奴】に計画の全てを任せ、自身はただ監視していれば良い。

(フフ、たった1億ドルで、世界全体を震撼させる大事件が起こせるとはな)

クロタニはもう一度コーヒーに口をつけると、薄暗く笑った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み