2:15 過去の業務経験

文字数 1,014文字

「これでよし、と」

山極は、17階ネットワークルームの本番環境ルームのルータへと繋がっている赤色のLANケーブルを、ネットワーク集線装置(ハブ)から外して言った。

「これで奴らが気付くまで、本番環境ルームのネットワークは遮断されたままだ。TOTEI-GSCを使ってSWIFTネットワークに送金処理メッセージを送信することは出来ない」

「しかし、よく、どのLANケーブルが本番環境ルームに接続しているものなのかとか、分かりましたね」

神坂結衣が関心したかのように山極陽平に言った。

「白色のLANケーブルが、社用ネットワーク用のLANケーブル。
赤色のLANケーブルが、本番環境ルームネットワーク用のLANケーブル。
社内規定上、そう決まっているからね。
本番環境ルームと、SWIFTネットワークの中継地点であるこの17階のネットワークルームの配線さえ遮断してしまえば、本番環境ルームから処理メッセージを送信することは出来ない」

「よく知ってますね。
山極さん、なんでそんなに詳しいんですか?」

「僕も君と同じように、システム部署から総務部ビル管理課に左遷された身でね。こういうのは昔、システム部署で、多少経験があるんだ」

「そうだったんですね・・・」

「でも、TOTEI-GSCでネットワーク接続エラーになったことが分かれば、すぐにテロリスト達は、この17階ネットワークルームに異常があったことに気付くだろう。奴らと鉢合わせる前に、すぐにここを出て、20階の執行役員室に行かないと」

「20階の執行役員室へ?何故?」

「今日はTOTEI-GSCの大型システムリリースプロジェクトの最終管理責任者である谷本美里専務と、僕の同期の風間人事部長も出勤している。
彼らの無事を確認しに行かないといけない」

「なるほど、分かりました。
でも、20階には、テロリスト達が待ち受けていますかね?」

「その可能性は高い。
もし出くわしたら、奴らと戦闘になるかもしれない。
奴らと戦う準備は出来ているかい?」

「大丈夫です!」

「命を失うことになるかもよ?」

「それは、ここに居ても同じです。
それに、私、護身術習っています!」

そう言って神坂結衣はブレザーの腕を捲った。

「なるほど、神坂さんは、頭脳だけじゃなくて、武闘派でもあるんだね。頼もしい」

山極陽平と神坂結衣は17階のネットワークルームを出た。

「一気に20階まで駆け上がるよ!」

「任せて下さい!」

2人は非常階段を使って一気に20階を目指して走った。
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