明かり

文字数 376文字

 私たちは、いつか、「火」を追い求めるに違いないと思った。無機質で、もしくは極めてあっけらかんとしたそれらの明かりは、すでに私たちの心をじわじわと疲弊させている。苦悩へと追いやっている。これは、あくまでそういう人がいる、というだけで、普遍的な事象ではないともいえる。
 しかし「火」においては、私たちに何者でもない優しさをさしのべてくれる。火は、辺りだけではなく、自身の輪郭さえも歪ませて、ぼんやりとつかめないものにさせる。ゆらゆらと空間に溶けていく。

 心のなかで何物かがざわめいているときは、火を探してみてもいいかもしれない。
 例えば、暗闇に浮かばせた僅か20本のキャンドルを、そのままにしてみてもいいかもしれない。そして、自然に消えるか、夜が明けてしまうか、いずれにしても、それらを無意識下におくだけで、私たちは、きっと英気を養うことができるだろう。
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