朝灯

文字数 355文字

 代り映えのしない日を二か月ほど過ごしていた。随分久しぶりにカーテンを開けた。私の目は、日の光を敵視しているようだった。雨上がりの夜明けに、皮膚と衣服がざらざらと擦れ合っている。蒸し暑い。

 こだわりのないドリップ珈琲とあっさりめのインスタントラーメンを食べようとする。お湯を沸かすためにコンロに火をつける。目線とコンロを水平にさせるためにしゃがみこんだ。ゆらゆらわずかに揺れる火は、やかんの底をじっと温めている。霧に溶け込んでしまいそうなほど弱弱しい火だ。しかし決して消えることはないだろうという確信がある。ぼんやりと見つめ続けていた。火はつむじ風のように渦巻いて、私の目を回した。
 どうやらそのまま私は、旧友と高校生活をしていたようだ。いつしか沸騰して、やかんは甲高い音を鳴らせた。私はその音で夢から覚めた。
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