第18話

文字数 722文字

「それに、面倒な事は弁護士に任せてある」
ダリウスは、狡猾な視線をリセにやった。罠に入ったウサギを見ている視線だ。

時間魔法を使えば・・リセは考えた。

時間魔法・・
それは一瞬、時を止め、自分だけが動くことができる魔法だ。
スカンク玉を簡単に取り返す事はできる・・が,

それを使えば1か月は寝込むし、何よりも王族に魔法を使う事は侮辱罪、不敬罪にあたる。
そして、自分が逮捕される。あまりにも分が悪すぎる。

ダリウスは逡巡しているリセを見て、楽しそうだ。
「そうだなぁ・・返すのはやぶさかではないのだが、ただ返すのではつまらない」
ダリウスは手の平で、スカンク玉を転がしながら

「俺はいろいろな女と、つきあったのだが・・」
ダリウスは立ち上り、目の前で「気を付け」姿勢で固まっている、リセの手首をつかんで引っ張った。
リセの体がフカフカのソファーに投げ出され、ダリウスがその上にまたがった。

「どうだ?動けないだろう?」
リセの両手首は、ダリウスに押さえこまれている。
ギシギシとソファーが揺れ、リセの背中が座面に沈み込む。

ダリウスがリセの耳元に顔をつけ、ささやいた。
「シナモン、あと、草の匂いがする。草原で、野兎を捕まえたって感じだな」

「魔女は薬草を色々扱うので・・臭いが・・し・・しみつくのです・・」
そう答えながら、リセは助けが呼べるかどうか、顔を横に向けて、扉の方に視線をやった。

執事が戻って来てくるまで・・何とか時間を稼いで・・

「ああ、そうだなぁ・・俺はまだ、魔女と付き合った事がないからな」
ダリウスが少し顔を上げて、リセの瞳をのぞき込んだ。
その金の瞳は潤んで、琥珀のように赤みがかっているように見える。

「さて、魔女とのキスはどんなものなのかな?」

キス・・・・なんて・・
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