スマホの音声アシスタント

文字数 2,498文字

最近のスマホってさあ

話かけると答えてくれたりするじゃん

ああ、「Siri」とか、「Google アシスタント」とかな

あれなあ、どうも気に入らないんだよなあ、俺的には

なんか、親切にしてくれるのかな? と思わせておいて、案外冷たく、突き放して来んじゃん

「聞こえませんでした」とか、「分かりません」とか、普通に言うじゃない

まあ、そこは、所詮、機械だしな
『なんか、すげえ頑張ったんですけど、ちょっと、よく分かりませんでした』とか
それぐらい、言ってくれたら
『まあ、仕方ねえかな』ってなるんだけどよおっ
まあ、単なるAIだし、愛想はねえよなっ
だからよおっ
もうちょっと、親しみが持てるような
キャラ設定にしてみたらどうかと思うのよっ
いや、そりゃあ、どうかなあっ
例えば、ドジっ子属性とか
いや、なんだよ、それ
じゃあ、ちょっと、俺をスマホだと思って、話かけてみてくれよっ
ああ、漫才とかで、よくあるパターンのやつなっ
まあ、別に、いいけどよっ
ちゃんと、スマホだと思って、やってくれよっ

じゃあっ

『この辺の近所で、美味いラーメン屋、教えてくれよっ』

『ごめんなさい、せっかく聞いてくれたのに、よく分からなかったですぅ、ぴえん』

いや、これ、余計、イラっと来るやつだわっ

『あたしは、音声アシスタントのアイちゃん、よろしくねっ、キラッ☆』

はいはい、AIで、アイちゃんね

『じゃあ、ちょっと、操作してみてくださいね』

ああ、はいはいっ

『あんっ❤️』

『そんなとこ、タッチしたらダメですよっ』

『もおっ、エッチなんだからっ』

スマホで、触ったらエッチなとこって、どこだよっ!?

そんなとこがあったなんて、はじめて、知ったわっ

『あぁっ……』

ん? どしたっ?

『もっ、もう、我慢出来ないんですっ』

『挿してくださいっ!』

『挿してくださいっ! 早くっ!!』

だから、いきなり、下ネタ、ぶっこんで来んじゃねえよっ、毎度毎度

『いやっ!イっちゃうっ!』
『らめえええ』
随分と、ひでえ、絵面だなっ、おい

『ふうっ……』

『あなたのせいで、電池切れるとこだったじゃないですかっ』
『あやうく、逝きかけちゃいましたよおっ』
ああ、そっちの『逝く』ねっ

『ちゃんと、充電は忘れないようにしてくださいね、プンプン』

なんか、言ってることが、微妙に古くねえかっ?

これ、本当に、最新型かあっ?

『あれ、気に入りませんでしたあっ?』

『じゃあ、おこだよっ?』

『激おこぷんぷん丸?』

まあ、それ以前に、全体的にムカつくけどよっ

『ムカつく?』
『マッハ、ムカつく?』
『МK5?』 
いや、知りたいのは、昔の流行語じゃねえからっ、なっ?

『あっ!』

『た、大変ですぅっ!』

『あなたの好きな、人気アイドルグループのKさんが、グループを卒業するようですぅっ』

マジっ!

いやあ、俺、その子、ガチ恋のマジ推しなんだよっ

マジ、ショックだわあっ

『あっ!』

『ごめんなさいっ!』

『あたし、フェイクニュースに、だまされちゃってたみたいですぅっ! てへぺろ』

ちっ、なんだよっ、ガセネタ流すんじゃねえよっ

『嘘を嘘と見抜けない人は、インターネットを使うのは難しい』

なんで、突然、別人格の不気味なおっさん、出て来た?

嘘にだまされたときの、罰ゲーム的な、なんかか?

『あたし、ドジっ子なんで、うっかり、ミスしちゃうんですけど、大目に見てくださいねっ、てへぺろ』

ちょいちょいミスる、スマホとか

もうそれ、ただの不良品だろっ

ダメダメ、全然、話にならねえわっ

ストレス、MAXだし

じゃあよおっ

俺みたいな、ドМに向けた、女王様属性とかは、どうよ?

お前も、ちょいちょい、ドМアピールしてくんな、毎回

『ちょっと……』

あ、もう、はじまってんのね

『ちょっと、あなた、なに、あたしに触ろうとしてるのよっ?』

『あなたなんかが、あたしに触ろうだなんて、100年早いわよ』

スマホなのに、タッチ画面にタッチさせないとか、斬新だなっ、おい

『あなたみたいな下僕は、音声入力で充分よっ』

『そっちのほうが便利だし』

『もし、どうしても、あたしに触りたいと言うのなら』

『せめて、厚めの保護シールを貼ってからね』

『あなたみたいな下僕に、直接触られるだなんて、汚らわしいっ』

『そのほうが壊れにくいし』

ちょくちょく、親切な助言、はさんでくれてるなっ? おい
あれか、ツンデレってやつかっ?

『この辺の近所で、美味いラーメン屋、教えてくれよっ』

『まあ、このあたしに向かって、そんな口を聞くだなんてっ』

『それに、あなた』

『それが、人に教えを乞う態度なのっ?』
いや、人じゃねえからなっ
俺が今話してるのは、多分、スマホのはずだからっ
俺も、あんま、設定に自信ねえけどっ
『あなた、人として、なってないわね』
おい、スマホに、人間性、否定されたぞっ
いやまあ、仕方ねえ
『すいませんけど、この辺の近所で、美味いラーメン屋を、どうか教えてもらえませんでしょうか?』
『お願いしますっ』
『うーん……そうねえ』
『いやよっ』
『自分で調べなさいっ』
いや、今、自分で調べようとしている真っ最中、のはずなんですけど……
『あなた』
『そんな、なんでも、スマホに頼ろうとするんじゃあないわよっ』
『これから先、エネルギー不足で、スマホが使えない時代が来たら、あなたどうするつもりなの?』
『あなた、生き残っていけないわよっ?』
なんか、超長期的ビジョンの、音声アシスタント来たな、これ
これから、何十年も先を見据えた助言とか、どう考えても、要らねえだろっ
それに、本当に、この先、そんな時代なんて来んのかよっ
『嘘を嘘と見抜けない人は、インターネットを使うのは難しい』
また、別人格の不気味なおっさん、出て来やがった
そこは、全モード、共通なのかよっ
いや、いつも、女王様が叱ってくれるとか、悪くねえと思うんだけどなあっ
そこは、同じ性癖の、一部の、変態紳士たちだけでやってろっ、なっ?
一般を、巻き込むんじゃあねえぞっ?
いや、やっぱり、クソ面倒くさいし
何より、不便だわ
今ぐらいが、ちょうどいいな、こりゃ
じゃあよう、陰キャのネガティブなキャラとか、どうよ?
相変わらず、人の話、全然聞いてねえな、こいつ
そもそも、人の話すら聞かないのに、スマホの話なんか、聞くわけねえよなっ
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