2021年4月

文字数 2,811文字

「野球少女」
たまたま、この映画を観る1ヶ月ぐらい前に読んだのが、この本。
https://www.amazon.co.jp/%E8%84%B1%E3%83%BB%E7%AD%8B%E3%83%88%E3%83%AC%E6%80%9D%E8%80%83-%E5%B9%B3%E5%B0%BE-%E5%89%9B/dp/4909394257
要はこの本で言われてるのは「スポーツにおいて、筋力その他の数値で表わせる身体能力を重視した練習をやるのは『根性論』よりは遥かにマシだが、それで十分な訳じゃねぇぞ」と云う事。例えば筋力や走る速さが上っても「足」を使った動きや身軽さを活かした動きが出来るようになる訳じゃないし、下手に「筋力重視」の練習を続けた結果、脳の方が「『足』を使った動き」「身軽さを活かした動き」を忘れちまう事が有るぞ、と。
そして、この映画のオチは、
「野球の勝敗はピッチャーで7割方決まる。そして、ウチの業界では『160kmを投げられる投手は地獄からでも連れて来い』と言われている」
と言うプロチームの偉いさんに対する主人公の反論が、
「貴方達が必要としているのは『剛速球を投げられる投手』なのか?? それとも『勝てる投手』なのか??
主人公は女性としてはチート級の剛速球を投げられるが、男性投手に比べれば平均を遥かに下回る。
それは、レスリングや柔道の軽量級のオリンピックのメダリストでも、無差別級では地方大会さえ突破出来るか判らないようなモノだ。
だが、ここで、ある発想の転換が成される。プロ野球では、怪我などで筋力が落ちても、活躍を続けている投手が居る……それは何故か?
そして、更にもう1つの発想の転換……かつてブルース・リーは言った。「私は一万種の蹴りを一度だけ練習した男は怖くないが、一つの蹴りを一万回練習した男は恐ろしい」……しかし、この「真理」はどこまで拡大解釈が許されるモノなのか?
かつての得意技に限界が有り……新しい得意技を身に付けたとしても、かつて身に付けたモノは、決して無駄にはならない。「一万種の蹴りを一度だけ練習した相手は怖くない」……たしかに真理かも知れない。だが「二種類の蹴りを五千回づつ練習した相手」と「一つの蹴りを一万回練習した相手」とでは、どちらをより恐れるべきなのか?

「ミナリ」
レーガン政権時代、アメリカに引っ越した韓国人一家の日常を描く……「子供の頃、アニメや特撮で、主人公がドン底に落ちたり、悪役にボコボコにされたりするシーンが恐くて見れなかった」ってタイプの人には絶対にオススメ出来ない「日常系」映画。
ただし、あっちこっちで指摘されてるが……韓国からアメリカの田舎に移住した主人公が「地元の人間になる」事を象徴する描写が「ダウジングを受け入れる」なのは困ったモノだが……。

「JUNK HEAD」
「PUI PUI モルカー」の大ヒットに続いて、日本製ストップモーションアニメの傑作が出現。
観終った後、背後(うしろ)の席から……一言「すげえなこれ」。
ただ、製作に何年もかかった上に、更に公開まで何年かお蔵入りの作品なので……「ヴィジュアルは時代の先を行っているが、ストーリー・設定に見え隠れしている価値観は古い」は仕方ないかも知れない。
今後、「製作に何年もかかる作品」が「発表された時点で読者/視聴者が『ん??』となる」のを避けるには……ってのは難しい問題になるかも。

「トムとジェリー」
マイケル・ペーニャは、いい人だと思うが、この作品でマイケル・ペーニャが演じてるヤツが罰されずに終るのは納得いかん。
いや、主人公も、かなりアウトな事をしてるが、この作品の「作り手の腕の見せ所」は「アウトな真似してる主人公に如何に感情移入させるか?」なので。

「21ブリッジ」
ニューヨークの一画で、麻薬組織から麻薬を奪い別の組織に売ろうとするチンピラ2人組。
しかし……麻薬組織が倉庫代りに使っていたワイナリーで、チンピラ達が見たモノは……事前情報では子供1人分の重さ(30kg)だったのに、何故か相撲取り2人分(300kg)の……しかも超高品質な麻薬だった……。あまりの量の麻薬に……チンピラ達は、敵に回してしまった組織は一体全体、何者なのかと訝しがり……そしてビビり始める。
しかも、どう考えても犯行がバレてない時点で、何故か、そのワイナリーに警官達がやって来て……。
後に残されたのは……250kgの麻薬と、いくつもの警官の死体。
チンピラ2組を追うのは、年1人弱のペースで容疑者を射殺して査問にかけられてる最中の刑事アンドレ(演じるは今は亡きティチャラ陛下。R.I.P.)と所轄の分署の麻薬担当捜査官バーンズ。
しかし、チンピラ側にとっても、それを追う刑事側にとっても、次々と想定外の事が起こり始め……果たして、チンピラ2人が奪った麻薬には、どんな事情が有り、誰が何の目的で、裏で糸を引いているのか?
まず、「教会から運び出される殉職した警官の棺に、同僚の警官達が敬礼をする」……それだけのシーンなのに「今、何起きた?」と云う映像的な驚きを感じさせる冒頭。ツカミはこれで十分。
やがて、「人殺しを躊躇わない警官」と「人殺しを躊躇う犯罪者」と云う対照的な2人の主人公の言わば「本当の姿」が少しづつ明らかになり……。
そして……訪れるのは、何人もの人間が無惨な死を遂げた真の原因は……「悪」などではなく単に「それぞれが抱えている問題に対して、あまりに安直な対処方法を選んでしまった」愚か者達が居た為だったと云う、あまりにも苦いオチ。

「ザ・スイッチ」
男女入れ替わりモノだが……まぁ「周囲から舐められてる自分に自信が無い女子高生」と「男の基準からしてもガタイのデカい連続殺人犯」の魂が入れ替わる話なので、入れ替わった2人の間には、当然、恋愛感情など成立しない。
いきなり冒頭から「面白殺人」の連続。こんな嫌なフェ○○オ見た事無い。
しかし、連続殺人犯の魂と女子高生の魂が入れ替わると、当然ながら片方は「女子高生の体に連続殺人犯の魂」と云う状態になるので、いつもなら、あっさり殺せるヤツにさえ一苦労する羽目になる。
しかも、被害者からすると、自分を殺そうとしてる相手は「男の中でも体がデカいヤツ」じゃなくて「普段、舐めてる女の子」なので恐怖心など感じない。いつもなら、こっちが襲えば逃げ出す相手でも、「どっちが連続殺人犯か判んねぇ」級の容赦無い反撃をしてくる。ええ、俺もガキの頃、いじめっ子に反撃したら、こう云う目に遭いました、はい。
一方、女の子の方は、並の男などあっさり返り討ちに出来る体を手に入れ……。
しかし、2人の魂を入れ替えた「呪いのアイテム」を使って、24時間以内に再度体を入れ替えないと、永遠にそのままだと云う事が判明し……。
とりあえず、「殺人犯役」なのか「女子高生役」なのか「両方の役」なのか判然としない役者さんの演技は見事。
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