2021年1月

文字数 1,958文字

「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」
別の映画でブルー・リーの師匠を演じた役者が、今度は「燃えよデブゴン」の主演をやると云う……もう何が何だか。
まぁ、この映画の中の「日本」と違って、警察とヤクザがズブズブと云う牧歌的な時代(なお家畜は一般のカタギ)は暴対法と共に消え去った訳ですが、そこは御愛嬌。
特殊メイクでデブになる前でもドニー・イェンと気付かなかった。ある意味でドニーの新境地かも。
あと、最終決戦直前のシーンは「嫌な食事シーン」マニア必見。

「新感染半島 ファイナル・ステージ」
よりにもよって公開日前日(2020/12/31)のニュースが「新感染列島 ファイナル・ステージ」的なモノだった訳だが、それはさておき。
作品内のクライマックス・シーンにおける勝ち負けのルールは斬新さは有るが明快でもある。
敵を振り切るか全滅させれば主人公側の勝ち。
主人公側を捕えるか全滅させれば敵側の勝ち。
ただし、カーチェイスのルート上には双方にとって障害物にもなれば武器にもなる「ゾンビ」が無数に居る。
ゾンビを巧く使うor乗り切るのが勝敗の重要な要素。
一瞬のひらめきや判断ミスで有利・不利が逆転する事も有り得る。
バトルものでの「クライマックスの戦い」をどうすべきかのお手本みたいな展開。
「勝ち負け」の基準は判り易く、戦いの方法は目新しく、と。
とりあえず、アクション・シーンが多めなので大画面で観るのがオススメ。

「82年生まれキム・ジヨン」
原作を読んでなくても、どんな話かを知っていると……観ながら常に緊張感を強いられる。だが、おそらく、この緊張感は、主人公が(そしておそらくは原作者が)これまでの人生で強いられてきた緊張感には及ぶまい。
「あなたが一般的な高校生男子だとする。高校や予備校の前の席の可愛い女の子が、貴方に微笑んでいるように見えても、本人は微笑んでるつもりも無い可能性が有るし、まして、貴方に気が有る確率はもっと低い。そして、勘違いした結果、貴方がやらかす行為は『貴方が100%悪い痴漢/ストーカー行為』になりかねない」
これこそが現実なのであり、もし、そんな真似をやっても許されていた男が居るなら、それは社会の歪みの恩恵を受けていただけに過ぎない。
まぁ、たしかにあの夫役はコン・ユで正解だろう。
「気が弱かったり周囲に流されるせいで事態を悪化させるヤツ」の演技が巧い。
個人的な事でアレですが……実は10年以上前だが……当時の職場で女性用トイレに隠しカメラを仕掛けた痴れ者が居まして(誰がやったかは結局不明)……はい、この映画を観た人は、俺がどんな気持ちになったか御理解いただけると思います。
この映画、そして原作小説は、隣の国だけの話ではない。日本で起きてる事でも有るんですよ。
原作からの改変は賛否両論でしょうが……まぁ、原作小説によって韓国社会が、ほんの少し変った結果、ああ云う結末にしないと不自然に思う人が増えたのだとしたら……1つの国・地域の社会の常識を変えてしまう程のフィクションを別のメディアに展開する時、一体、どうするのが正解なんですかねぇ?
ある悲惨な現実を描いた物語は、その物語が社会を変えた時に、一世代前のモノになる宿命なのか?
ちなみに、主人公とその夫を演じる2人の俳優が出た映画が切っ掛けになって、韓国では十三歳未満の児童への性的虐待に対する厳罰化と公訴時効の法改正が行なわれている。
主人公側夫婦を演じる役者と、この映画の原作は、共に、韓国社会を変えている……それも近い方向に変えているのだ。
そう云う意味では、セクハラ防止の社内講習を受けた主人公の夫の同僚が、主人公の夫に「息苦しい世の中になったもんだ」と愚痴を言うシーンは、ある意味で極めてメタ・フィクショナルな状況かも知れない。

「ワンダーウーマン1984」
80年代に有名になった「金持ちの変人」。金持ちを装ってはいるが実は借金まみれ。金髪は染めているらしい。最後に大きな権力を手にし……。作品のテーマそのものが「『真実』に依らずに手にしたものは、いつか破綻する」。
今回の悪役は、どう考えても、あの御仁である。
ご丁寧にも、あの人物がTV番組のホストだった時の決め台詞「君は馘だ!!」を裏返した台詞を何度も叫ぶシーンまで有る。
挙句の果てに新型コロナさえ無ければ、この映画は、アメリカ大統領選挙より前に公開されていた筈だったのだ。
確かに、この悪役の造形は……ドナルド・トランプへの批判に満ち満ちているかも知れない……。
だが……この映画におけるドナルド・トランプへの最大の批判は……ドナルド・トランプをモデルにしたキャラを悪として描いた事ではなく、ドナルド・トランプをモデルにした悪役を人間的に描き、改心させ……そして英雄的な選択をさせた事ではないだろうか?
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