2022年4月

文字数 3,156文字

「モービウス」
よくよく考えたら、ジャレッド・レトは蝙蝠男の宿敵から蝙蝠人間を演じる事になった訳か……。
しかし、悪役の方が色々とキャラが濃過ぎて食われてる感は有る。
ついでに、どう考えてもBLもの。この見解に異論が有る方とは最高裁まで争う用意が有る。
ヒーローものにして吸血鬼モノである以上、夜の戦闘シーンが多くなるので、普通のスクリーンより画質の良いIMAXやドルビーシネマの方がオススメ。
あと、ロッテン・トマトあたりの評価は妥当とは言えないにせよ、予告が嘘八百だらけだったので、その点に怒る人が居るのは、確かに判る。ただ、あれ、製作と公開の間が結構デカかった上に、しかも、新型コロナが無ければ公開が後だった「スパイダーマンNWH」が先に公開された影響で、脚本なんかに手を入れざるを得なかった結果かも……。
あと、アメコミ映画は観たいけど、これまでの話の予習は嫌、って人にはオススメかも。

「湖のランスロ」
昔の名作のデジタル・リマスター版。
と言っても昔の作品なので、今の感覚で観るのはキツい。
芸術映画として評価すべき作品で、アクション・シーンは「えっと……なぜ、そこでカットを割る?」的な……。
ただ、音響効果には凝っているので、観るなら劇場で。

「シャドウ・イン・クラウド」
馬鹿映画だけど下手したら今年観た映画の中でもかなり上位に入りそうな馬鹿映画。
主演俳優の過去の出演作のイメージが有るから「彼女なら出来るが、普通の人間には絶対無理」な場面が次々と……。
この主人公をブチのめしてたDV夫って、どんだけ強かったんだよ? 範馬勇次郎か何かか?

「ベルファスト」
白黒映画なのに、のっけっから今風の演出とカメラワーク。
21世紀になって、わざと白黒で撮る映画は何本か有ったが……いや、この発想は無かった。
冒頭のほんの数分のシーンで、1つの画面の中に過去と今が共存している。
そう、この映画は過去の悲劇を描く作品である同時に、それが今も形を変えて続いている事を提示してもいるのだ。

「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」
おい、ダンブルドア先生の秘密じゃなくて、ダンブルドア家の秘密かよ。
しかも、前作のラストで人の心を読める能力を持ってたティナが悪役側に付いてった理由は……なんと何も無かった。
悪役は前作の時点では自分を正義だと信じていたが、今回の時点では、「自分が正義だ」って確信が揺らいでいる、ってした方が話の辻褄は合ったんじゃないかな?(ティナがグリンデルバルド側に付いた→グリンデルバルドの心を読んだら、とんでもない善人だった。グリンデルバルドが小細工をした理由→だが、今回の時点では自分が正義だと信じ切れなくなっている。血の誓約が破れた理由→グリンデルバルドが無意識の内にダンブルドアと自分のどちらが真の正義かを知る事を望んでいた)
面白い事は面白いが、映像や役者の演技の面白さであって、シナリオについては熱心なファンもそれほどじゃない人も色々とモニョるのも判る。

「ハッチング −孵化−」
本年暫定1位。
映画館のロビーで待ってる間、1回前の上映を観たらしい人がネタバレ会話をしながら俺の前を通り過ぎたんで、この野郎、○○○すぞ、と云う凶暴な気持ちが湧いてきたが、いや、たしかにこの映画、連れが居たなら観た後に何か語りたくなる。
常々、何で「注目されたい気持ちダダ漏れ」のネトウヨさんに限って「日本を愛してるだけの普通の日本人」とtwitterのプロフィールに書いてる事が不審でたまらなかった。
何かが注目されるのは良かれ悪しかれ普通ではないからであって、「日本を愛してるだけの普通の日本人」ならその意見は誰も注目などすまい。
ところが、これは国・地域や政治思想の有無には関係ない万国共通なモノのようで、この映画の主人公の「動画配信で注目される事以外、何か好きな事が有るのか?」的な母親は動画で「普通のフィンランド家庭の様子を配信します」とか言ってる訳である。とても普通じゃないキラキラした動画にも関わらず……。何なんだろうね、「注目される事以外に好きな事無さそう」なのに限って、自分を「普通」だって言いたがるのって。
ホラーこそ日常から始めると云うのは一種の定番だが、この映画の冒頭は「日常→その日常が明らかにおかしい→ドタバタコメディ」と云うモノ。たしかに、これは巧い話の始まり方。
さぁ、これから、どんな惨劇が起きるでしょう? と云う所で話は終るが、まぁ、「あの一家は何事も無かったように末永く幸せに暮しました」と云う世にもおぞましい末路しか想像出来ない。

「TOKYO VICE」
WOWOWのドラマを1話だけ特別劇場公開したもの。
1990年代末〜2000年代初頭の暴対法以前の東京。
ヤクザ映画みたいなヤクザが居た最後の時代。あと、ヤクザ映画に出て来るようなヤクザとつるんでる腐敗警官が居た最後の時代。
アメリカ人だが日本に留学し、日本の新聞社に就職した青年は、サツ回りに配属されるが、たまたま最初に担当した事件と、偶然目撃した事件の2つに、ある闇金が絡んでいる事を知る。
その闇金の住所に行っても……有るのは人1人居ない机1つない空の事務所。
やがて、それが2年後に大ネタを掴む事につながるようなのだが……。
連続ドラマの1話だけなので当然「これからどうなる?」と云う所で終る。
しかし「日本の新聞社では新人記者は、まず、体育会系的な部署に配属され、徹底的に『自分の考え』を奪われ、記者クラブでの発表をそのまま文章にするだけのロボットに改造される」って描写は、どこまで本当か? 問題の新聞社のモデルになった読売新聞だけの慣習なのかはともかくとして……まぁ、日本のマスコミのどこが駄目かを考えると、いかにも「らしい」描写ではある。
あと、主人公の学生時代の描写が「日本を満喫している」と云うより「生き急いでいる」ように見えるんだが……これは後の展開とどう繋がるんだろ?

「マリー・ミー」
成行きで女性トップスターと結婚する事になったサエない男性数学教師……と云う女性向けの恋愛小説を引っくり返したような話。
まぁ、「今日は名作を観たい気分じゃない日にオススメする映画」みたいな感じかなぁ……良くも悪くも。
「男性主人公と女性主人公の仲を取り持つ同性愛者の女性」と云うのは、多分、大半の日本人男性には目新しいけど、どうやら、アメリカの女性向け恋愛小説では「女性主人公と男性主人公の仲を取り持つ同性愛者の男性」は定番キャラらしいので、多分、これまでの人生で、どんな小説を読んできて、どんな映像作品を観てきたかで、感想が変わりそうな話ではある。

「ドライブ・マイ・カー」
なるほど、たしかに日本で初公開された時の評価はイマイチなのに、オスカーを取れた理由が良く判る。
戯曲「ワーニャ伯父さん」の事を調べてから観たら……もっと楽しめただろうが……俺の場合、近所の映画館での公開が終る直前に、あわてて観たので……。
とは言え、ある意味、親切な映画。
主人公が舞台の演出家と云う設定なので、作中で「この映画では、出演者に、こう云う演技指導をしてますよ」と云うのを事細かにメタ解説してくれてるので、一見、演技が下手に見える登場人物でも「ああ、そう云う事ね」と納得出来る。
ただし、聾者の方々による手話描写への批判も納得出来るものは有る。
どうやら手話とは、表情も文法の一部らしいのだが、「手話においては表情も文法」の一部と云うのと、かなり相性が悪い展開が確かに有る。
喩えるなら、批判されてるのは「日本人と云う設定のキャラに日本語として変な日本語をしゃべらせた」事ではなく、「日本人と云う設定のキャラが日本語として変な日本語をしゃべらざるを得ない脚本になってた」事なのだろう。
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