第8話:重症メニエールで倒れ、退職

文字数 2,133文字

 夏休みも疲れを取る事に専念したかったが赤ちゃんの世話で忙しかった。その後も人手不足で出張し仕事をミスなく継続するだけで精一杯だった。そんな年も押せ迫った12月20日、伊藤史郎は体調を崩して倒れた。ひどいめまい発作で大学の内科を受診すると重度のメニエール病自律神経失調症といわれ、ステロイドの大量療法をするため2週間休みを取った。年が明けて1980年1月6日になり、めまいは収まったが左耳の聞こえが極端に落ちた。

 耳鼻科を受診すると耳の聞こえは回復しないと告げられ重度のメニエール病、自律神経失調症だから出張は禁止と言われ、1月中は休職して首から上を冷やさない様にして安静にし様子を見ようと言われ長期休暇をとった。2月20日吉川部長が設計部の不公正人事を調査してみると以前、設計3部ともめたことがあったが、その時、激怒した唐沢部長が取り入ってる山下専務に
言って決まった人事だそうだ。君も僕もTK建設では厄介者になっているんだと教えてくれた。

 だから君の将来を考えたら転職した方が良いと思うと言った。吉川部長が僕は、もう少しで60歳定年だ。君も将来を考えたら転職した方が良いと思うと言い東京湾の橋の協議会でも史郎君の働きは評判で実は幹事のSM建設の山下専務が史郎君の様な優秀な人が欲しいと飲んだ席で言っていたんだと教えてくれTK工務店は大型ゼネコンの中では最下位でSM建設の方が格上で
海外でも特にトンネル工事の技術水準は今や世界一だと言った。

 そこの専務が君を欲しいと言っているんだ、もし良かったら話してやるよと言った。そこで史郎は意を決してわかりました。転職の件、宜しくお願いしますと言った。翌月の協議会の後、吉川部長がSM建設の山下専務に転職の件をお願いした。TK建設での年収も知らせると2割増しで引き受けると言ってくれたそうだ。その話を吉川部長が家に帰って史郎に話してくれ、史郎が今後、どんな風に振る舞えば良いのか聞いたので今まで通りにやっていれば良いと言った。

 手はずは全部、吉川部長がやるからと言い翌々月の7月が吉川部長の定年であり、その日付でSM建設への史郎の転職とい言う手はずで行く事になった。6月に辞表を書いて私に提出しなさいと吉川部長に言われ、梅雨が過ぎて1980年7月7日、吉川部長が退職した。その日、史郎は会社を休んだ。吉川部長が人事部の池山部長に部下の伊藤史郎の退職願を先月もらい説得したが彼の決心が堅く阻止できなかったと話すと池山部長は困った顔をした。

 史郎は翌日、手はず通りSM建設の山下専務の部屋に行き、これからも宜しくお願いしますと挨拶。君の熱心さ実力は良くわかった。うちで存分にその実力を発揮して欲しいと言われ歓迎された。その後TK建設から電話がかかってこないか心配していたが遂に電話はなかった。その後聞いた話によると東京湾の橋梁建設にTK建設は全く参加できなくて協議会から脱退した。その後SM建設ではドラフター、製図版のある個室を与えられて係長という肩書ももらった。

 ほとんど毎日定時、夜7時前には帰宅できるようになった。そして1980年8月になり、SM建設は、2週間の休暇が有り1歳になった誠一とゆっくりと遊んで、過ごす毎日が続いた。TK建設の時は毎晩9時近くで出張ばかりの仕事だった。1980年9月になり仕事は現場視察でなくて設計の仕方の指導ばかりになり、。若手が来ては実際に設計図を書いて見せて、やらせ
て指導する方法が一番身につくようで好評だった。

 その他は協議会の資料づくりとか、広報の仕事を頼まれてはワープロで書く仕事が増えていった。会社では大学の建築学部を出たばかりの新入社員を次々に史郎の部屋へ来させて1日、午前、午後、1人ずつ、毎日2人に教えた。製図の書き方だけでなく、どういう気持ちで書くべきかとか、誰が見てもわかりやすい製図の書き方を懇切丁寧に教えていき、いつしか伊藤設計教室と呼ばれるようになり社内でも有名になった。

1980年も11月になり風邪やインフルエンザが流行して家に帰ると義理の父が具合が悪く熱が37度を超えたので翌日は午前中、休暇をもらい義理の父を近くのKU病院に連れて行き、熱を測ると38.2度と上がっておりインフルエンザ陽性だろうと言われ緊急入院した。お母さんに午後から出勤する事を話し会社に出かけた。

 その日の夕方、仕事を終え父が入院してる部屋を訪ねると寝ていたので、そっとして家に帰った。翌日は史郎は、いつも通り会社に出かけた。帰る途中で父の病室を訪ねると、お母さんがいて36度台まで熱が下がり食欲も出たので数日後に帰れそうだと言い、翌々日には退院して自宅療養になった。11月も終わりを告げ12月のクリスマスパーティーとなった。

 今年は可愛い住人が一人増えて喜びいっぱいのパーティーだった。やがて1981年がやってきて年末年始の休みも10日あり以前の会社が嘘のように待遇が良かった。東京の山本家に新年の挨拶に行くと山本康男さんが、後で、ちょっといわれ、別室でセブンイレブンが東証1部に昇格の噂が出てるので、安いうちに追加で買った方が良いと言った。
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