第8話 序 業火の隙間

文字数 239文字

 助けて。
 助けてよう。
 誰か。
 アディソン? アレクサンドラ?
 みんな、みんなどこにいったの。
 ここはどこ?

 もうもうと白く煙る世界の中で蠢く僅かな影。
 けほ、けほ。
 息を吸えば白い煙は口から体の中に入って、もう動けなくなる。

「いたぞ、こっちだ」
「囲え!」
「化け物め!」

 たくさんの黒い影が僕を取り囲む。
 その後ろでは白い煙がもうもうと立ち上っていて、パチパチと赤い火の粉が待っている。
 怖い。
 い、や。
 助けて。こないで。
 お願い。
 いやだ、もう。
 助けて、誰か……
 怖い。
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登場人物紹介

土御門鷹一郎

京生まれ。もともとは公家の傍流。

明治14年8月に旧東京大学の理学部星学科を卒業するまでは学生、

それ以降は神津の辻切西街道にある土御門神社の宮司をしている。

山菱哲佐

生まれたときは久保田藩の貧乏藩士の長男。

明治13年に旧東京大学理学部工学科を中退するまでは学生、

そのあと日雇い仕事をしていて明治15年ごろに鷹一郎に呼ばれて神津に引っ越す。

ミケ

とても大きなジャコウネコ。もともと四風山に住んでいて、いまは土御門の森に住んでますます太っています。

にゃんと鳴く。哲佐君がよくアラで餌付けをしています。

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