第6話:書生としての仕事と結婚

文字数 2,033文字

「明日、午前中の明るい時間に、先生の家へ行けと言われた」
「10時に行くと倉木先生が来て、お手伝いの吉野さんを呼んでくれ彼女に聞いてと言われた」
 少しすると、太めの、お手伝いさんが来て話を始めた。
「あんたかい、今度の担当者はと言い、じっと上から下まで見られた」

「そうです何卒宜しくお願いしますと言うと、わかったとぶっきらぼうに答えた」
「先生は、相当な変わり者だから前任者の様にクビにならないと良いねと笑った」
「頑張りますので宜しくと言うと、朝食は、前の晩に作っておく」
「昼食は11時半には用意する」

「夕食と風呂の支度は、18時には、できてると答えた」
「今後とも宜しく、お願いいたしますと、伊賀が、挨拶」
「すると、あんたも、頑張りなさいと、軽く肩をたたいた」
 その後、先生の書斎に行くと、何かの手紙を読んでいた。

 そんな倉木先生だが、伊賀には、優しく接し、これ宜しく頼むよと言われ、仰せつかった仕事を黙々と処理した。そこで、新聞をじっと読み終えるのを待ち、今日は、どちらかへお出かけですかと聞くと、KR病院に14時に行き、会議に参加すると答えた。17時には病院を出ると言われ、全てメモした。タクシーを13時半に用意しますと言うと、これからは、いちいち復唱しなくて良い。

ただ、間違いなく、実行してくれと言われ、ハイと答えた。定刻にタクシーを用意し先生を後部座席に座らせた。自分も乗って20分しての病院の玄関に下り、先生の後をついて行くと、玄関近くの喫茶店で、待てと言われ、喫茶店に入った。16時半、先生が来るのを待つと17時前に来てタクシーの後部座席にのせた。案内し自分も同乗して先生宅へ帰った。

 その時、先生、お風呂を先にしますか夕食にしますか聞いた。君に話す必要はないと言い風呂場へ向かった。気になったので風呂の外で待機してますと言って待った。10分で出て来て、夕食の置いてある棚に行った。そして、お盆に乗ったご飯とおかずを持ってテーブルに座った。そして、自分で味噌汁と食べ始めた。その後、君は、あっちへ行けと言われた。

 リビングの外に出て待つと、お盆を返す音が聞こえたのでリビングに行くと書斎で買い物があると言った。そこで30分位して先生の書斎の横の部屋に待機しますと言うと勝手にしろと言い部屋を出ていった。その後、夕食を食べて風呂に入って先生の書斎の隣の部屋で本を読んだ。9時過ぎに先生が出てきて寝ると言うので先生の寝室の隣の部屋に布団を敷いて床についた。

 翌朝、物音に気付き、起きて、先生に、おはようございますと挨拶。挨拶は、今後とも、いらんと言われ、了解しましたと答えた。ジャージに着替え、先生の後をついて行くと、目立つなよとだけ小さな声で言った。それに対して、小さくハイと返事した。まだ薄暗い道をかなりの速さで、すたすたと歩を進めていった。その後、長い登り坂に差し掛かっても早足で登り始めた。

 伊賀は若いので、ついていけたが、次第に、汗が噴き出してきた。10分たち20分近くなった頃、頂上が見えた。そして大きな国道の上の橋を渡り、終わると、今度は長い下り坂。それも早足で休まず歩き、小一時間して、先生の家に到着。出発から45分経っていた。その後、風呂へ行き、シャワーの音がして、タオルで顔をふいた。

 すると待ち構えていたように、あのお手伝いさんが、先生、珈琲と紅茶とケーキを置いて去っていった。すると、先生が、お前も疲れただろうと言い朝食を食べろといった。すると同じセットが置いてあった。ありがとうございますと言うと無駄口はいらないと笑った。そして、おもむろに朝のこの感じが一番好きだ。本当に生きている感じがすると告げた。

 次に俺の資料は、書斎を探せば出てくるから俺のいない時に勝手に調べてよろしい。それを参考にし、僕の小説を書いてくれ給えと、にこやかに言った。思わずハイと言うと、余計な言葉はいらないと、また注意された。この先生、意外と立派じゃんと思った。その後、伊賀は、先生の行動、言動を見聞きして感心した。そんな日々が続いて1990年6月を迎えた。

 毎朝の散歩を終えて、一休みしている時、先生、ちょっと私事で恐縮ですが、6月17日、結婚式するので3日間休ませていただきたいと伝えた。すると、わかった。おめでとうと言ってくれた。
「この言葉を聞いて、先生は、心の優しい人のだろうと涙を見せると弱い奴だなと笑った」
「1990年6月14日、散歩から帰ると結婚おめでとうと言い祝福し家に帰れと言った」

 その後、1990年6月15日の朝、帰ってよいぞと先生言った。そして、ありがとうございますと涙を見せると馬鹿者、泣くんじゃない笑えと言った。その後、失礼しますと倉木先生に深々と頭を下げ先生の家を後にした。そして八王子の結婚式場へ向かった。ホテルに着くと妙子さんが伊賀に抱きついた。昼食まだですかと聞くので、そうだと答えるとホテルのレスランで一緒にランチを食べた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み