第31話 僕の負け…

文字数 827文字

 お父さんも中講義室から出て行った。一人残った僕は、泣いた。
 涙をハンカチで拭いたら、僕も中講義室を出た。でも四組には戻れない。みんなに会わせる顔がない。僕はそのまま、学校を出て家に帰った。

 帰り道でまた、涙が出た。
 みんなと一緒に戦えたのに。
 みんなと仲良くできたのに。
 先生も協力してくれたのに。

 お父さんの話は、その全てを破壊した。僕を降伏させるには、十分すぎる爆弾だった。


 家に帰ると、お母さんの話を無視して僕は自室に直行してベッドに籠った。
 しばらくするとお父さんが帰って来た。僕の部屋のドアを叩く。でも僕は無視した。僕に対して、学校での仕打ちを謝りたかったのかもしれない。でも僕は今まで、校長先生は校長先生、お父さんはお父さんと別に考えていた。学校ではお父さんではなく、校長先生だ。僕も息子ではなく生徒の内の一人。この戦争において先生と生徒は敵同士でしかない。だからお父さんの謝罪は一切受け付けないつもりだ。

 そもそも、勝手に帰宅したことを叱ろうとしているのかもしれない。それなら僕は息子として怒られるべきだろう。でも学校で僕とお父さんの関係を言い出したのはお父さんの方だ。お父さんが言わなければ、僕は帰って来たりしなかった。僕が帰って来た理由を作ったのはお父さんだ。
 無視しているとお父さんの方も諦めたようだ。


 次の日、僕はお母さんに起こされた。部屋から出るともうお父さんは出勤していた。

「劉葉。早く準備して学校に行きなさい」

 お母さんはそう言うけど、

「もう行かないよ…」

 僕はそう返して部屋に戻った。もちろんお母さんは怒ったけど、それでも僕は部屋から出なかった。
 僕は今日、学校に行かなかった。敗北を完全に認めた。
 もう学校の勝ちだ。僕には、完璧絶対授業を止めることができなかった。みんなにどんな顔をすればいいんだろう? それもわからなかった。

 僕の戦争は、僕の負けで終わった。
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