第9話 新しい風
文字数 3,466文字
*R18の表現があります。
第一章 ドライブとチューリップ
<久我の驚き: ユウリのチョイス>
「今回の旅行プラン、俺のお任せでいい?
行きたいところあれば言ってくれ。かなり自由度高いから、久我の希望あればいくらでも対応可能だからな。
それと、宿は二連泊にした。あちこち移動ない方が落ち着くしな」
ユウリはナビにあらかじめ決めていた行き先を登録し始め、帆を開けてオープンにしてゆっくり車をスタートさせた。
車はグレーの落ち着いたカラーで、オープンにしても悪目立ちしない彼らしいチョイスだ。
お互い免許は持っているが、車は所有者していない。
たまの移動はレンタカーを借りているが、高級車のレンタルは初めてだ。
ユウリはおもむろに、使う様だったらと俺にサングラスを渡し、自分もサングラスをかけた。
今日は日差しがあり、オープンカーなので目の保護でサングラスが必要なのは分かるが、あまりのカッコ良さに目を奪われた。
「ユウリ、カッコ良すぎるんだけど。スッゴイ似合っている!」
ユウリはもともと空手を嗜んでいたが、社会人になってから運動らしい事をしていない。でも車の運転は俺より上手い。
本人は島根の田舎だから仕方なく覚えたと言っているが、安全運転な上に技術力が高い。安心して乗っていられる。
しかも運転の所作が丁寧で、白い肌と細い小鼻に乗せたサングラスをつけた横顔は、いつもに増して色気がある。女子なら惚れるレベルだ。
「久我に言われたくないよ。お前、サングラスかけたらもう俳優かモデルだな。他の車とすれ違うとき大変かも。オープンカーにして失敗だったかな」と、破顔した。
走ってしばらくは、ユウリばかり見つめていて風景が目に入ってこなかったが、ふと広い道をユウリと2人で駆け抜けている現実に幸せが込み上げてきた。
立山連峰はまだ雪が残っており、海の近い富山は雨が降りやすい。立山連峰がこんなに綺麗に見えるのはこの時期だと聞いた事がある。
天気に恵まれてよかったと思った。
しばらく走ると、車は道の駅の横にある大きな会場に停まった。車の帆を閉めて、ユウリがこっち、と俺の手を引く。
会場の中に入ると一面、チューリップ畑だ。
「春の今時期だけの、チューリップフェスタなんだ。ここでしか見られない、珍しいチューリップが沢山咲いているの。ゆっくり見ていこうよ」
会場内は色とりどりのチューリップが見事に咲き誇り、見たことのない色のチューリップもある。
可愛いチューリップ大使もいて、愛想良く一緒に写真を撮ってくれた。
市民から県外の人まで、思い思いに花を愛でて楽しんでいる。ステキだ。。
え、、でもなんでチューリップ??
俺の驚きが顔に出ていたのだろう。ユウリはニヤリと笑い、チューリップ畑を指さした。
「久我、チューリップ畑とか縁がないもんな。たまには自分の知らない世界もいいぞ。
それに、ここは単なるチューリップ畑ではないんだ。毎年、この時期に合わせて根の出た球根を一度冷蔵して、この日に合わせて春に土に埋める。
凄く手間がかかって、地域な方の思いが詰まっているんだぞ、凄くないか!
写真撮ろう!ほら、あのフサフサしたチューリップ、”ベルソング”とかオシャレな名前ついている、すごくキレイだ」
ユウリの説明がわかりやすく、俺はいつの間にか、チューリップの写真を撮るのに夢中になった。
確かに珍しい品種ばかりだ。
タワーに登って見下ろすと、地上絵を意識してチューリップが配置して植えてある。何十と言う種類のチューリップがあるなんて、知らなかった。
俺は脳の隙間に未知の風が吹いた気がして、大きく深呼吸した。
広い会場でユウリがこっち!と手を振る。
まるでチューリップ畑に埋まっているかの様なユウリ。とてもかわいい。
その無邪気な顔を、チューリップと一緒に写真に収めた。
第ニ章 広がる世界
<久我のくつろぎ: ユウリの選択>
「4月後半の風は気持ちいいな。チューリップ、凄くキレイだった。本当に癒されたよ、ありがとう。
ねぇ、ユウリ、今回の旅のこともう少し教えて。少し、車停められる?」
ユウリは人気のない高台の駐車場に車を停めた。
街を一望できる所だが、人影もなく静かに眺めを楽しめる。
「久我、年度代りでここしばらく忙しかったろ。それに加えて俺へ気遣いも変わらなくて。お前のアウトプットが過多になっていたと、心配してたんだ」
アウトプット?俺自身からそんなに何か出てたっけ?
「それに営業部のお前の後輩の二階堂から聞いたんだ。俺との事で、取引先から酷い事言われたって。社外だとセクシャリティの発言も制限難しいし、凄く嫌な思いをしただろ。
久我は綺麗すぎるから、男のやっかみも半端ないだろうし、振った女性からの逆ギレもあるだろ。
理不尽なストレス感じているの、分かっている。
人って、自分のリソースをアウトプットばかりしたり、解決できない言葉を受けていたら、自分が空っぽになると思うんだ。
久我、無理してても自分で気づかないだろ?
今、少し自分が空っぽになって虚しくないか?
家族なんだから、俺には気を使わなくて良いからな。俺、凄く心配で。
だからこの旅は、久我の空っぽになった身体と心に、新しい何かを補充するイメージかな。
要は日常忘れて、リラックスして欲しいんだ」
そして、おもむろに俺の頬に手を添えてキスをした。
辛かったよな、ごめんと言いながら、ユウリは唇を離して、俺の目を覗き込んでつぶやいた。
「目の下にクマも出てるし、身体、限界だろ?」
ああ、ユウリっていつもさりげなく俺を見ててくれる。凄く愛情を感じる。
今度は俺がキスをした。
軽くでは済まず、激しく舌を絡ませてユウリの思考が止まるくらい、長く強く離さなかった。
「うんん、あ、、エイジもうやめて、、」
とユウリが合間に喘ぐ。
その声を聞いたら更にやめられず、そのまま車のシートに押し倒した。
ユウリはびっくりした顔をしたが、優しく俺の頭を両手で包みこんで、耳を甘噛みしながらつぶやいた。
「早めにホテルにチェックインしよう、そしたらお前の好きなことするから」
不意打ちの誘惑に、余計煽られて欲望をどう処理して良いか困ってしまった。
俺がシュンとすると、ユウリは困ったな、と言い、人影のない小道に車を移動させた。
おもむろにユウリは俺の上に跨った。
少しだけだぞ、と俺のものを取り出しゴムをつけて、自分の腰をゆっくり下ろした。
その姿がとても卑猥で、しばらく成すがままになっていた。ふと、激しい締め付けと熱い体温を感じて我に返り、俺は激しく下から突き上げた。
ユウリは揺さぶられながら俺の首に腕を回し、潤んだ目で俺を優しく見つめた。
お互い、声を押し殺す事もなく喘いだ。
木々の香りと優しい日差しが俺を包み、欲望で汗ばんだ肌に爽やかな風が吹く。
目の前が白くなり達した後も、頭も身体も熱が引くまでユウリの唇を離せなかった。
「もう、元気ないって心配してたのに、お前全然元気だな。どこにそんな体力残ってたんだよ。心配して損した」
人が来るかもとユウリに咎められるまで、唇を離そうとしなかった俺に少しおかんむりだ。
プクッと怒った顔もかわいい。
乱れた髪と服を正して、ユウリは再び車を発車した。
俺は先程の快楽ですっかり心身が癒され、汗ばんだ身体に吹き付ける風を感じながらお気に入りの音楽をかけて口ずさむ。
ユウリも好きな音楽なので、気づくと2人で歌いながらドライブを楽しんでいた。
「ね、今度はどこに行くの?お前チョイス、凄く良いから楽しみだな!」
ユウリはふふ、とほくそ笑んで、喉乾いたからお茶しようと言った。
しばらく走ると、見晴らしの良い大きな公園の向かいにある立派な美術館に到着した。
今度は美術館?と聞くと、駐車場利用させてもらうと言う。
車を停めて公園の方に歩き、橋を渡る。
綺麗な川の向こうに、ガラス張りの建物が見える。
「ここ、富山の環水公園にある、”世界一美しいスタバ”と言われているんだ。海外の観光客が多いみたいだよ。行ってみよう!」
ユウリは嬉しそうに俺の手を握った。
世界一綺麗と言うだけあり、室内は大きなガラス窓から日差しが心地よく降り注ぎ、テラス席からは水辺と緑、天門橋を眺めることができた。
テラス席で穏やかな日差しを受け、コーヒーを飲んだ。
いつの間にか何も考えずに、雲の動きを映す穏やかな川面と、木々の合間の遠い街並みを眺めている自分がいた。
隣に座るユウリに目を向けると、クリームが乗った甘い季節限定のドリンクを、とても美味しそうに飲んでいた。
本当にかわいい。風景にもユウリにも癒される。
俺はただ、幸せだけを感じていた。
第一章 ドライブとチューリップ
<久我の驚き: ユウリのチョイス>
「今回の旅行プラン、俺のお任せでいい?
行きたいところあれば言ってくれ。かなり自由度高いから、久我の希望あればいくらでも対応可能だからな。
それと、宿は二連泊にした。あちこち移動ない方が落ち着くしな」
ユウリはナビにあらかじめ決めていた行き先を登録し始め、帆を開けてオープンにしてゆっくり車をスタートさせた。
車はグレーの落ち着いたカラーで、オープンにしても悪目立ちしない彼らしいチョイスだ。
お互い免許は持っているが、車は所有者していない。
たまの移動はレンタカーを借りているが、高級車のレンタルは初めてだ。
ユウリはおもむろに、使う様だったらと俺にサングラスを渡し、自分もサングラスをかけた。
今日は日差しがあり、オープンカーなので目の保護でサングラスが必要なのは分かるが、あまりのカッコ良さに目を奪われた。
「ユウリ、カッコ良すぎるんだけど。スッゴイ似合っている!」
ユウリはもともと空手を嗜んでいたが、社会人になってから運動らしい事をしていない。でも車の運転は俺より上手い。
本人は島根の田舎だから仕方なく覚えたと言っているが、安全運転な上に技術力が高い。安心して乗っていられる。
しかも運転の所作が丁寧で、白い肌と細い小鼻に乗せたサングラスをつけた横顔は、いつもに増して色気がある。女子なら惚れるレベルだ。
「久我に言われたくないよ。お前、サングラスかけたらもう俳優かモデルだな。他の車とすれ違うとき大変かも。オープンカーにして失敗だったかな」と、破顔した。
走ってしばらくは、ユウリばかり見つめていて風景が目に入ってこなかったが、ふと広い道をユウリと2人で駆け抜けている現実に幸せが込み上げてきた。
立山連峰はまだ雪が残っており、海の近い富山は雨が降りやすい。立山連峰がこんなに綺麗に見えるのはこの時期だと聞いた事がある。
天気に恵まれてよかったと思った。
しばらく走ると、車は道の駅の横にある大きな会場に停まった。車の帆を閉めて、ユウリがこっち、と俺の手を引く。
会場の中に入ると一面、チューリップ畑だ。
「春の今時期だけの、チューリップフェスタなんだ。ここでしか見られない、珍しいチューリップが沢山咲いているの。ゆっくり見ていこうよ」
会場内は色とりどりのチューリップが見事に咲き誇り、見たことのない色のチューリップもある。
可愛いチューリップ大使もいて、愛想良く一緒に写真を撮ってくれた。
市民から県外の人まで、思い思いに花を愛でて楽しんでいる。ステキだ。。
え、、でもなんでチューリップ??
俺の驚きが顔に出ていたのだろう。ユウリはニヤリと笑い、チューリップ畑を指さした。
「久我、チューリップ畑とか縁がないもんな。たまには自分の知らない世界もいいぞ。
それに、ここは単なるチューリップ畑ではないんだ。毎年、この時期に合わせて根の出た球根を一度冷蔵して、この日に合わせて春に土に埋める。
凄く手間がかかって、地域な方の思いが詰まっているんだぞ、凄くないか!
写真撮ろう!ほら、あのフサフサしたチューリップ、”ベルソング”とかオシャレな名前ついている、すごくキレイだ」
ユウリの説明がわかりやすく、俺はいつの間にか、チューリップの写真を撮るのに夢中になった。
確かに珍しい品種ばかりだ。
タワーに登って見下ろすと、地上絵を意識してチューリップが配置して植えてある。何十と言う種類のチューリップがあるなんて、知らなかった。
俺は脳の隙間に未知の風が吹いた気がして、大きく深呼吸した。
広い会場でユウリがこっち!と手を振る。
まるでチューリップ畑に埋まっているかの様なユウリ。とてもかわいい。
その無邪気な顔を、チューリップと一緒に写真に収めた。
第ニ章 広がる世界
<久我のくつろぎ: ユウリの選択>
「4月後半の風は気持ちいいな。チューリップ、凄くキレイだった。本当に癒されたよ、ありがとう。
ねぇ、ユウリ、今回の旅のこともう少し教えて。少し、車停められる?」
ユウリは人気のない高台の駐車場に車を停めた。
街を一望できる所だが、人影もなく静かに眺めを楽しめる。
「久我、年度代りでここしばらく忙しかったろ。それに加えて俺へ気遣いも変わらなくて。お前のアウトプットが過多になっていたと、心配してたんだ」
アウトプット?俺自身からそんなに何か出てたっけ?
「それに営業部のお前の後輩の二階堂から聞いたんだ。俺との事で、取引先から酷い事言われたって。社外だとセクシャリティの発言も制限難しいし、凄く嫌な思いをしただろ。
久我は綺麗すぎるから、男のやっかみも半端ないだろうし、振った女性からの逆ギレもあるだろ。
理不尽なストレス感じているの、分かっている。
人って、自分のリソースをアウトプットばかりしたり、解決できない言葉を受けていたら、自分が空っぽになると思うんだ。
久我、無理してても自分で気づかないだろ?
今、少し自分が空っぽになって虚しくないか?
家族なんだから、俺には気を使わなくて良いからな。俺、凄く心配で。
だからこの旅は、久我の空っぽになった身体と心に、新しい何かを補充するイメージかな。
要は日常忘れて、リラックスして欲しいんだ」
そして、おもむろに俺の頬に手を添えてキスをした。
辛かったよな、ごめんと言いながら、ユウリは唇を離して、俺の目を覗き込んでつぶやいた。
「目の下にクマも出てるし、身体、限界だろ?」
ああ、ユウリっていつもさりげなく俺を見ててくれる。凄く愛情を感じる。
今度は俺がキスをした。
軽くでは済まず、激しく舌を絡ませてユウリの思考が止まるくらい、長く強く離さなかった。
「うんん、あ、、エイジもうやめて、、」
とユウリが合間に喘ぐ。
その声を聞いたら更にやめられず、そのまま車のシートに押し倒した。
ユウリはびっくりした顔をしたが、優しく俺の頭を両手で包みこんで、耳を甘噛みしながらつぶやいた。
「早めにホテルにチェックインしよう、そしたらお前の好きなことするから」
不意打ちの誘惑に、余計煽られて欲望をどう処理して良いか困ってしまった。
俺がシュンとすると、ユウリは困ったな、と言い、人影のない小道に車を移動させた。
おもむろにユウリは俺の上に跨った。
少しだけだぞ、と俺のものを取り出しゴムをつけて、自分の腰をゆっくり下ろした。
その姿がとても卑猥で、しばらく成すがままになっていた。ふと、激しい締め付けと熱い体温を感じて我に返り、俺は激しく下から突き上げた。
ユウリは揺さぶられながら俺の首に腕を回し、潤んだ目で俺を優しく見つめた。
お互い、声を押し殺す事もなく喘いだ。
木々の香りと優しい日差しが俺を包み、欲望で汗ばんだ肌に爽やかな風が吹く。
目の前が白くなり達した後も、頭も身体も熱が引くまでユウリの唇を離せなかった。
「もう、元気ないって心配してたのに、お前全然元気だな。どこにそんな体力残ってたんだよ。心配して損した」
人が来るかもとユウリに咎められるまで、唇を離そうとしなかった俺に少しおかんむりだ。
プクッと怒った顔もかわいい。
乱れた髪と服を正して、ユウリは再び車を発車した。
俺は先程の快楽ですっかり心身が癒され、汗ばんだ身体に吹き付ける風を感じながらお気に入りの音楽をかけて口ずさむ。
ユウリも好きな音楽なので、気づくと2人で歌いながらドライブを楽しんでいた。
「ね、今度はどこに行くの?お前チョイス、凄く良いから楽しみだな!」
ユウリはふふ、とほくそ笑んで、喉乾いたからお茶しようと言った。
しばらく走ると、見晴らしの良い大きな公園の向かいにある立派な美術館に到着した。
今度は美術館?と聞くと、駐車場利用させてもらうと言う。
車を停めて公園の方に歩き、橋を渡る。
綺麗な川の向こうに、ガラス張りの建物が見える。
「ここ、富山の環水公園にある、”世界一美しいスタバ”と言われているんだ。海外の観光客が多いみたいだよ。行ってみよう!」
ユウリは嬉しそうに俺の手を握った。
世界一綺麗と言うだけあり、室内は大きなガラス窓から日差しが心地よく降り注ぎ、テラス席からは水辺と緑、天門橋を眺めることができた。
テラス席で穏やかな日差しを受け、コーヒーを飲んだ。
いつの間にか何も考えずに、雲の動きを映す穏やかな川面と、木々の合間の遠い街並みを眺めている自分がいた。
隣に座るユウリに目を向けると、クリームが乗った甘い季節限定のドリンクを、とても美味しそうに飲んでいた。
本当にかわいい。風景にもユウリにも癒される。
俺はただ、幸せだけを感じていた。