第7話 これからの2人
文字数 4,522文字
*R18の表現があります。
第一章 高速鉄道の旅
<久我の旅: ニースへ>
「高速列車ヤバいな。心臓止まりそう」
ユウリが真顔で心臓を押さえた。
そんな顔も可愛いからすごく困る。
俺とユウリは2日目のルーブル美術館を中心としたパリ観光後に、フランスでパリに次ぐ2番目の観光都市、ニースへ高速列車TGVに乗って向かっている。
ずっと会いたかったユウリが不意打ちでフランスまで来てくれて、しかも観光なんて何のご褒美だ。
俺は嬉しさを隠しきれず、ニヤニヤしている。
高速列車を使うと、約6時間で世界的に有名なリゾート地のニースに到着する。
今回は俺が行ったことのない観光地にしようとのユウリの提案だ。
「良かったの?パリの近場にも色々と観光地あったけど、移動で結構時間かかるし、無理してない?」
俺の心配をよそに、ユウリは高速列車からの風景に身を乗り出し、目を離さないまま答えた。
「全然無理してない、って言うか、俺、ニース行きたかったんだ!パリから高速列車出てるって聞いて、ここしかないって思ってさ。久我も初めてだしな。
それに、この列車乗ってみたかったんだ!!
このTGV、今はイヌイに改名したけど、最高時速574kmで走るんだよ、凄くない?新幹線より早いんだよ。在来線にも直通していて、ここまで来るのに60年以上紆余曲折あってさ。あ、でも単に日本の新幹線が劣るとかそう言う問題ではなく、要は地形と用途なんだよ。日本は山が多く大量輸送の観点、ヨーロッパは土地が平で広いメリットを活かし…(以下略)」
電車や乗り物の事となると、ユウリは熱い。
ダサいメガネをかけたいつものユウリが知識を披露する姿が微笑ましい。更に言うと、鉄オタをリスペクトしているこの姿勢も好きだ。
「久我、ニースってイタリアっぽい雰囲気なんだろ?すごく楽しみだな、俺、赤いブラッドオレンジジュース飲みたい」
そのジュースはもはや日本でも普通に飲めるようになって久しいが、オレンジジュースのチョイスが可愛すぎる。よし、飲もう。
俺たちはひと月ぶりの逢瀬を余すことなく楽しむように、フランスの車窓から2人の目に映る景色を楽しんだ。
昼前にパリを出発し、17時にNice-Ville駅の立派な駅舎に到着した。
俺たちは海沿いのホテルにチェックインし、さっそく夕暮れのディナーを楽しむことにした。
夕日の差込むテラス席で海を見ていると、ようやくリゾートに来た実感がわいてきた。
考えたらお互い忙しすぎて、新婚旅行もそこそこ、10日間も休みをとる機会はなかった。初めての2人の海外リゾートだ。
昨日のパリの夜は、ノートの告白もあって愛が高まりすぎて、俺は制御ができなくユウリを気絶させてしまった。
翌日の朝、やりすぎたとヒヤヒヤしたが、目覚めた時に幸せだったと抱きつかれ、死ぬかと思った。
ただ、ニースではくれぐれも自制しようと心に決めている。
「久我は本当にフランス語が流暢だな。さっきの店員さんもホテルのスタッフも、久我見てなんか嬉しそうに話してたぞ。お前の美しさは国境を越えるな」
ユウリは少し嫉妬したという割には「さすがだな」と、何だか嬉しそうに笑った。
「でもさ、フランスって何だか同性同士、付き合ってるのかな?っていうカップルが多いな。
パリでも手を繋いでいる同性カップル多かったし、俺、こんなに自然にお前と手を繋いで歩けて嬉しいよ。
このレストランだってほら、隣は女性カップルかな、キスしてたしさ。何かいいな。好きな人と好きに過ごせて。俺、フランス来て本当によかった」
同性のカップルが少ない日本では、やっぱりユウリも気を使うことが多いのだろうと、少し申し訳なく思う。
「フランスは、結婚してもしなくても法律的メリットは変わらないし、10年以上も前に同性婚が認められたしな。
日本はまだまだ成熟してないけど、これから少しずつ変わるよ。
フランスには『理想の生き方』というのは存在しなくて、幸せの在り方や生き方がそれぞれ違う考えが浸透しているんだ。やっぱりその点は成熟した文化だと言えるな」
ユウリは、少し遠くを見る目をした。
「じゃあ、この国には幸せな俺たちみたいなカップルが沢山いるんだ。嬉しいよ」
そう言ってふわりと優しく笑った。
「Bonjour, je m'appelle Kuga」
携帯が鳴った。客先からの電話だ。俺は席を立ち、しばらく仕事の対応をした。
少しして戻ってくると、ユウリは若い男性と英語で談笑していた。
日常英会話は少しできるユウリだが、実際に話しているところは見た事がなかったので新鮮だ。
俺が席に戻ると、男性はユウリにウインクして立ち去った。
何があったか聞くと、「日本人か?と聞かれてさ、ニースのオススメの観光地とか教えてもらってんだフランスでは何回かこんなやり取りあったけど、国民性かな、フレンドリーだよな」とユウリは微笑んだ。
仕方ない、きちんと説明するか。
「ユウリ、あの人達はお前狙いだよ、自覚してる?要はナンパだからね。
さっき店員が俺のこと見てたとか言ってたけど、あれはお前のこと、きれいな青年ねって褒めてたんだよ。俺のこと彼氏とわかってたみたいで声かけれなくて残念っていう会話だから。
もう、本当に警戒感がなくて心配だよ」
「えぇ、青年?俺、おじさんだけど」と、ユウリは心底びっくりして目をぱちぱちした。フランス人ってお前みたいになんか感性違うな、と真剣な顔をする。
ほんと、1人にしてやれないな。今度からトイレも共連れだ。
海風が気持ちよく、ワイン片手に暮れていく街並みと、黒く静まる海を見つめた。
「世界って広いんだな。知らない街や考えがまだまだ沢山ある。久我っていつも俺の手を引いて、知らない世界を見せてくれるな」
いつの間にか月明かりに照らされて、残りの旅の予定を話しながら、俺たちは見つめ合ってキスを交わした。
第ニ章 愛しい人
<ユウリの願い: ふたりの時間>
ついつい飲み過ぎてしまい、久我に寄りかかりながらホテルに帰った。
部屋から見える海を見て、今、久我と何も縛らねない時を過ごしているんだな、という実感を改めて感じた。
大きめのバスタブに2人で入ると、久我が優しく後ろから抱きしめてくれた。気持ちよくてゆっくりと目を閉じると何だか眠たくなってきた。
「ユウリ、そろそろ出て寝よう。今バスローブ持ってくる」
久我は俺をバスローブでくるんでベットに横たえてくれた。
抱き合ってうとうとしていると、久我は電気をそっと消し、お休み、と額にキスをした。
少し寝ていたようだ。
ふと目を覚ますと、久我が観光ガイドを読んでいた。
「寝ないの?」
「俺は列車で少し寝たからな。ユウリは風景見てて寝てないだろ。ゆっくり休んで」
久我は優しく布団をかけてくれた。
思わず俺は久我の上によじ乗り、高い鼻や瞼に軽くキスをしていた。
久我はくすぐったそうにして、寝ぼけた?っと笑う。
俺はそのままゆっくり下に降りながら、久我の香り良い肌にキスをしていき、久我のものを手で包み込んでそっと口に含んだ。
びっくりする久我に何も答えず、俺はしばらく唇や舌を好きに動かして恋人を堪能した。
なんだかすごく気持ちいい。
時間を気にせず好きな人を思いやり、身体で愛情伝えるのって、心地よいな。
自分がされて気持ち良いと感じる箇所を、何度も強く吸ったり舐め上げたり軽く歯をたてた。
久我がいっそう大きくなり、声にならない吐息を漏らす。
いつも久我はこんな気持ちで俺を抱いているのかな、すごく気持ちいい。
焦る顔も、余裕のない声も、俺の頭を苦しげに抱き寄せる手つきも、すべて愛おしい。
舌と唇から水音をさせ、更に奥に咥えて久我を盗み見た。お互いの欲にまみれた視線が絡み合った。
上りつめるのに合わせて舌を激しく動かし、更に追い込んだ。
久我は苦しそうに声を震わせ、俺の口でゆっくりと果てた。震えが止まるまで、俺はそっと口に含んだまま舌で慰めながら、全てを飲み干した。
「ユウリ、、すごかった…こんなの初めてだ…嬉しいけど、大丈夫?」
目元を赤くした久我は、余韻に浸りながら俺の髪をサラサラとなでた。
返事の代わりに、俺は久我の首に手を回し、首すじに舌と唇を這わせ、何度もキスを繰り返した。
また固くなると、自分の中に久我を入れて、肩に手を添えて、腰を揺らして強く締め付けた。
今、とても久我が欲しい。
俺を見上げる久我は、髪を振り乱してきれいなおでこを出し、口を半開きにした可愛い子供のように泣きそうな顔をしている。
思わず舌を絡めてキスをねだった。
しばらくは俺の動きに合わせて喘ぎ声をあげていたが、しばらくすると可愛い表情は消え、獣のように俺の動きを見つめ、いつ襲おうか思案している顔になった。
そっと起き上がった久我は、俺を抱きしめながらシーツに沈めた。強い力と身体の重みに抵抗できず、俺は久我にされるがままに激しく抱かれた。
何度も襲う激しい快楽の波が、いつの間にか窓辺の海の波音と重なりあった。いつの間にか、2人で寄り添い深い眠りに落ちていた。
「ユウリ、俺のいない間、何かあった?あんなイタズラ、どこで覚えた?」
いつもの過保護な久我に戻ってから、本気で俺の浮気を心配し始めて、なだめるのに骨を折った。
「え、俺はお前しか知らないよ。イヤだったらもうしてあげない。
それと俺の気持ち、少しはわかった?俺、いつもお前の余韻消えずに仕事モードに切り替えるの苦労してんの。少しは反省しろよ」
「いや、、イヤとかそう言うのではなく、何というか気持ち良すぎたと言うか、ユウリの色気がすごいというか、天使が小悪魔に目覚めたというか…
俺の留守の間に変なビデオとか見たの?ダメだよ一緒に見ないと」
うるさい。せっかくの朝焼けの海を堪能させてくれ。俺は久我の口に朝食の苺を入れて黙らせた。
そして2人でふわっと笑った。
俺の身体に、また大きく深い何かが刻まれた気がする。重なって流れていく時間の中で、いつか俺も久我もこの世から消えても、互いの時間だけは真実で永遠なんだろうな。
朝日に染まるニースの風景を目に焼き付けながら、そっと手を繋いだ。
・・・・
「雨夜さん、肌艶イイわね。パートナーさんとフランスを満喫したのかしら?うふふふ」
休み明け、花井さんとの打合わせでも気づかれるくらい、俺はすっかりリフレッシュしたようだ。
久我とフランス観光を満喫し、仲良く日本に帰国した。久我はさっそくフランスで締結した業務報告と社内調整で忙しい。
俺はプロジェクトリーダーとしての企画推進のため、花井さんと商品開発で忙しい毎日に戻った。
そして帰国して初めて休日、俺たちはいつまでも布団から抜け出せずにいた。
旅の疲れもあるが、いつもの場所で2人でいる日常を噛みしめて、久我の腕の中で温もりに包まれていたい。
でも、お腹は空くんだよな。
「久我、コーヒー飲みたい。俺、朝ごはん作るから」
「いいね。一緒に起きよう。お土産のトリュフ塩使って、美味しい目玉焼き食べよう」
今回のフランス出張の別離は、俺達には愛を深める良い機会だった。
でも、やっぱりもう離れるのはイヤだ。
別々に生きてきて、ようやく出会えたんだ。
残りのふたりの時間は一緒にいたい。
俺たちのいつもの日常が、また動きはじめた。
第一章 高速鉄道の旅
<久我の旅: ニースへ>
「高速列車ヤバいな。心臓止まりそう」
ユウリが真顔で心臓を押さえた。
そんな顔も可愛いからすごく困る。
俺とユウリは2日目のルーブル美術館を中心としたパリ観光後に、フランスでパリに次ぐ2番目の観光都市、ニースへ高速列車TGVに乗って向かっている。
ずっと会いたかったユウリが不意打ちでフランスまで来てくれて、しかも観光なんて何のご褒美だ。
俺は嬉しさを隠しきれず、ニヤニヤしている。
高速列車を使うと、約6時間で世界的に有名なリゾート地のニースに到着する。
今回は俺が行ったことのない観光地にしようとのユウリの提案だ。
「良かったの?パリの近場にも色々と観光地あったけど、移動で結構時間かかるし、無理してない?」
俺の心配をよそに、ユウリは高速列車からの風景に身を乗り出し、目を離さないまま答えた。
「全然無理してない、って言うか、俺、ニース行きたかったんだ!パリから高速列車出てるって聞いて、ここしかないって思ってさ。久我も初めてだしな。
それに、この列車乗ってみたかったんだ!!
このTGV、今はイヌイに改名したけど、最高時速574kmで走るんだよ、凄くない?新幹線より早いんだよ。在来線にも直通していて、ここまで来るのに60年以上紆余曲折あってさ。あ、でも単に日本の新幹線が劣るとかそう言う問題ではなく、要は地形と用途なんだよ。日本は山が多く大量輸送の観点、ヨーロッパは土地が平で広いメリットを活かし…(以下略)」
電車や乗り物の事となると、ユウリは熱い。
ダサいメガネをかけたいつものユウリが知識を披露する姿が微笑ましい。更に言うと、鉄オタをリスペクトしているこの姿勢も好きだ。
「久我、ニースってイタリアっぽい雰囲気なんだろ?すごく楽しみだな、俺、赤いブラッドオレンジジュース飲みたい」
そのジュースはもはや日本でも普通に飲めるようになって久しいが、オレンジジュースのチョイスが可愛すぎる。よし、飲もう。
俺たちはひと月ぶりの逢瀬を余すことなく楽しむように、フランスの車窓から2人の目に映る景色を楽しんだ。
昼前にパリを出発し、17時にNice-Ville駅の立派な駅舎に到着した。
俺たちは海沿いのホテルにチェックインし、さっそく夕暮れのディナーを楽しむことにした。
夕日の差込むテラス席で海を見ていると、ようやくリゾートに来た実感がわいてきた。
考えたらお互い忙しすぎて、新婚旅行もそこそこ、10日間も休みをとる機会はなかった。初めての2人の海外リゾートだ。
昨日のパリの夜は、ノートの告白もあって愛が高まりすぎて、俺は制御ができなくユウリを気絶させてしまった。
翌日の朝、やりすぎたとヒヤヒヤしたが、目覚めた時に幸せだったと抱きつかれ、死ぬかと思った。
ただ、ニースではくれぐれも自制しようと心に決めている。
「久我は本当にフランス語が流暢だな。さっきの店員さんもホテルのスタッフも、久我見てなんか嬉しそうに話してたぞ。お前の美しさは国境を越えるな」
ユウリは少し嫉妬したという割には「さすがだな」と、何だか嬉しそうに笑った。
「でもさ、フランスって何だか同性同士、付き合ってるのかな?っていうカップルが多いな。
パリでも手を繋いでいる同性カップル多かったし、俺、こんなに自然にお前と手を繋いで歩けて嬉しいよ。
このレストランだってほら、隣は女性カップルかな、キスしてたしさ。何かいいな。好きな人と好きに過ごせて。俺、フランス来て本当によかった」
同性のカップルが少ない日本では、やっぱりユウリも気を使うことが多いのだろうと、少し申し訳なく思う。
「フランスは、結婚してもしなくても法律的メリットは変わらないし、10年以上も前に同性婚が認められたしな。
日本はまだまだ成熟してないけど、これから少しずつ変わるよ。
フランスには『理想の生き方』というのは存在しなくて、幸せの在り方や生き方がそれぞれ違う考えが浸透しているんだ。やっぱりその点は成熟した文化だと言えるな」
ユウリは、少し遠くを見る目をした。
「じゃあ、この国には幸せな俺たちみたいなカップルが沢山いるんだ。嬉しいよ」
そう言ってふわりと優しく笑った。
「Bonjour, je m'appelle Kuga」
携帯が鳴った。客先からの電話だ。俺は席を立ち、しばらく仕事の対応をした。
少しして戻ってくると、ユウリは若い男性と英語で談笑していた。
日常英会話は少しできるユウリだが、実際に話しているところは見た事がなかったので新鮮だ。
俺が席に戻ると、男性はユウリにウインクして立ち去った。
何があったか聞くと、「日本人か?と聞かれてさ、ニースのオススメの観光地とか教えてもらってんだフランスでは何回かこんなやり取りあったけど、国民性かな、フレンドリーだよな」とユウリは微笑んだ。
仕方ない、きちんと説明するか。
「ユウリ、あの人達はお前狙いだよ、自覚してる?要はナンパだからね。
さっき店員が俺のこと見てたとか言ってたけど、あれはお前のこと、きれいな青年ねって褒めてたんだよ。俺のこと彼氏とわかってたみたいで声かけれなくて残念っていう会話だから。
もう、本当に警戒感がなくて心配だよ」
「えぇ、青年?俺、おじさんだけど」と、ユウリは心底びっくりして目をぱちぱちした。フランス人ってお前みたいになんか感性違うな、と真剣な顔をする。
ほんと、1人にしてやれないな。今度からトイレも共連れだ。
海風が気持ちよく、ワイン片手に暮れていく街並みと、黒く静まる海を見つめた。
「世界って広いんだな。知らない街や考えがまだまだ沢山ある。久我っていつも俺の手を引いて、知らない世界を見せてくれるな」
いつの間にか月明かりに照らされて、残りの旅の予定を話しながら、俺たちは見つめ合ってキスを交わした。
第ニ章 愛しい人
<ユウリの願い: ふたりの時間>
ついつい飲み過ぎてしまい、久我に寄りかかりながらホテルに帰った。
部屋から見える海を見て、今、久我と何も縛らねない時を過ごしているんだな、という実感を改めて感じた。
大きめのバスタブに2人で入ると、久我が優しく後ろから抱きしめてくれた。気持ちよくてゆっくりと目を閉じると何だか眠たくなってきた。
「ユウリ、そろそろ出て寝よう。今バスローブ持ってくる」
久我は俺をバスローブでくるんでベットに横たえてくれた。
抱き合ってうとうとしていると、久我は電気をそっと消し、お休み、と額にキスをした。
少し寝ていたようだ。
ふと目を覚ますと、久我が観光ガイドを読んでいた。
「寝ないの?」
「俺は列車で少し寝たからな。ユウリは風景見てて寝てないだろ。ゆっくり休んで」
久我は優しく布団をかけてくれた。
思わず俺は久我の上によじ乗り、高い鼻や瞼に軽くキスをしていた。
久我はくすぐったそうにして、寝ぼけた?っと笑う。
俺はそのままゆっくり下に降りながら、久我の香り良い肌にキスをしていき、久我のものを手で包み込んでそっと口に含んだ。
びっくりする久我に何も答えず、俺はしばらく唇や舌を好きに動かして恋人を堪能した。
なんだかすごく気持ちいい。
時間を気にせず好きな人を思いやり、身体で愛情伝えるのって、心地よいな。
自分がされて気持ち良いと感じる箇所を、何度も強く吸ったり舐め上げたり軽く歯をたてた。
久我がいっそう大きくなり、声にならない吐息を漏らす。
いつも久我はこんな気持ちで俺を抱いているのかな、すごく気持ちいい。
焦る顔も、余裕のない声も、俺の頭を苦しげに抱き寄せる手つきも、すべて愛おしい。
舌と唇から水音をさせ、更に奥に咥えて久我を盗み見た。お互いの欲にまみれた視線が絡み合った。
上りつめるのに合わせて舌を激しく動かし、更に追い込んだ。
久我は苦しそうに声を震わせ、俺の口でゆっくりと果てた。震えが止まるまで、俺はそっと口に含んだまま舌で慰めながら、全てを飲み干した。
「ユウリ、、すごかった…こんなの初めてだ…嬉しいけど、大丈夫?」
目元を赤くした久我は、余韻に浸りながら俺の髪をサラサラとなでた。
返事の代わりに、俺は久我の首に手を回し、首すじに舌と唇を這わせ、何度もキスを繰り返した。
また固くなると、自分の中に久我を入れて、肩に手を添えて、腰を揺らして強く締め付けた。
今、とても久我が欲しい。
俺を見上げる久我は、髪を振り乱してきれいなおでこを出し、口を半開きにした可愛い子供のように泣きそうな顔をしている。
思わず舌を絡めてキスをねだった。
しばらくは俺の動きに合わせて喘ぎ声をあげていたが、しばらくすると可愛い表情は消え、獣のように俺の動きを見つめ、いつ襲おうか思案している顔になった。
そっと起き上がった久我は、俺を抱きしめながらシーツに沈めた。強い力と身体の重みに抵抗できず、俺は久我にされるがままに激しく抱かれた。
何度も襲う激しい快楽の波が、いつの間にか窓辺の海の波音と重なりあった。いつの間にか、2人で寄り添い深い眠りに落ちていた。
「ユウリ、俺のいない間、何かあった?あんなイタズラ、どこで覚えた?」
いつもの過保護な久我に戻ってから、本気で俺の浮気を心配し始めて、なだめるのに骨を折った。
「え、俺はお前しか知らないよ。イヤだったらもうしてあげない。
それと俺の気持ち、少しはわかった?俺、いつもお前の余韻消えずに仕事モードに切り替えるの苦労してんの。少しは反省しろよ」
「いや、、イヤとかそう言うのではなく、何というか気持ち良すぎたと言うか、ユウリの色気がすごいというか、天使が小悪魔に目覚めたというか…
俺の留守の間に変なビデオとか見たの?ダメだよ一緒に見ないと」
うるさい。せっかくの朝焼けの海を堪能させてくれ。俺は久我の口に朝食の苺を入れて黙らせた。
そして2人でふわっと笑った。
俺の身体に、また大きく深い何かが刻まれた気がする。重なって流れていく時間の中で、いつか俺も久我もこの世から消えても、互いの時間だけは真実で永遠なんだろうな。
朝日に染まるニースの風景を目に焼き付けながら、そっと手を繋いだ。
・・・・
「雨夜さん、肌艶イイわね。パートナーさんとフランスを満喫したのかしら?うふふふ」
休み明け、花井さんとの打合わせでも気づかれるくらい、俺はすっかりリフレッシュしたようだ。
久我とフランス観光を満喫し、仲良く日本に帰国した。久我はさっそくフランスで締結した業務報告と社内調整で忙しい。
俺はプロジェクトリーダーとしての企画推進のため、花井さんと商品開発で忙しい毎日に戻った。
そして帰国して初めて休日、俺たちはいつまでも布団から抜け出せずにいた。
旅の疲れもあるが、いつもの場所で2人でいる日常を噛みしめて、久我の腕の中で温もりに包まれていたい。
でも、お腹は空くんだよな。
「久我、コーヒー飲みたい。俺、朝ごはん作るから」
「いいね。一緒に起きよう。お土産のトリュフ塩使って、美味しい目玉焼き食べよう」
今回のフランス出張の別離は、俺達には愛を深める良い機会だった。
でも、やっぱりもう離れるのはイヤだ。
別々に生きてきて、ようやく出会えたんだ。
残りのふたりの時間は一緒にいたい。
俺たちのいつもの日常が、また動きはじめた。