第11話 明日への種まき
文字数 4,877文字
*R18の表現があります。
第一章 俺だけの秘密
<久我の秘密: 快楽の中で>
ユウリが嫌がることはしない。
それが俺の原則だ。
でも今日はユウリが悪い。あんなに俺を煽って。
失いたくないだと?当たり前だ。離してやらないって何度も言っているのに、俺が別れるわけないだろ。
仕事が忙しくてユウリを抱けない日々が続き、俺が溜めていたストレスは、取引先にセクシャリティを揶揄されるより辛かった。
そんな俺のドス黒い気持ちを知らずに、仕事で疲れているとか、失ったらどうしようとか、ピュアなフィルターで俺を神聖化して、俺を甘やかして。
こんなことしたら、俺がどう出るかをユウリはまだ理解していない。
ユウリを手に入れてから、俺は彼の純粋さを失わないよう、細心の注意を払って接してきた。
俺だけを見つめて、俺だけ愛してくれるように。
なのに俺の努力をよそに、ユウリは他のやつにも優しく隙を見せてしまう。そしてつけ入られてもそいつらの思いも受け止めてしまう。優しすぎるんだ。
だから気づいて欲しい。その優しさは俺にだけ向けるものだと。
こうして激しく乱暴に抱くのは無言の警告なのに、当の本人は嫌がっても結局は俺の汚い思いを受け入れ、俺を更に気持ちよくさせてしまう。
嫌がって抵抗する声も、涙を溜めて俺を見つめる瞳も、結局は俺の怒りを鎮まらせ、逆に俺の欲望を増長する。意図しないユウリの反撃に、いつも負けてしまう。
だけど、そんなところが可愛くて愛おしくて仕方がない。
俺は男が好きなわけではない。強かな女性も同じだ。ユウリは俺が誰の悪口も言わない、なんて言うけど、本当は興味があまりないだけだ。
普通の男は自分のことばかり考えて、虚栄心が強く、こだわりが強い。しかも俺と同じく嫉妬深い。男を好きになるなんて考えてもいなかった。
多くの女性は、俺の中に自分の欲しい未来しか見ようとしなかった。だからいつも孤独だった。
でもユウリは、違った。
男なのに優しくて、他人のことばかり考えて、損得勘定しない。しかも凄くそそられる外見だ。
加えて付き合ってからも、俺の外見ではなく中身を愛してくれて、心から尽くして受けとめてくれる。
性別なんて関係ない。俺にはユウリしかいないんだ。
ふと我に帰ると、ユウリは俺の二の腕を掴んで、喘ぎの合間に「エイジ」と名前を繰り返し呼んでいる。
そして、気持ちいい、愛してると繰り返す。
目尻に溜まった涙を頬に流し、俺が与える強い快楽を何度もやり過ごし、俺が気持ちよくなることを優先して快楽に耐えている。
俺は、激しい行為の合間で流した涙や唾液を拭う時間をユウリに与えない。俺だけに集中して、全身で俺だけ感じていればいいんだ。
俺はドス黒い欲望を彼の中に何度も吐き出し、綺麗な身体を汚す。
それなのに、どうしてそんな幸せなそうな顔をして微笑むんだ、お前は。
こんなに意地悪をしているのに、俺の耳を甘噛みして愛していると喘ぐなんて酷い。
冷静になり、我に返った。
「ごめん、身体大丈夫か?身体に負担をかけてしまってごめん、辛かったよな」
心配になり顔を覗き込むと、ユウリはふわっと笑い、枯れた声でありがとう、すっげぇ気持ちよかったと呟き、顔を拭う。かわいい。
俺は申し訳なさで、ユウリの顔に知らず涙を落とした。
ユウリは目を見開き、大丈夫?無理させたか?と逆に俺を労わる。
「本当にごめん、お前なしじゃ、生きていけない。こんなに酷い抱き方してごめん。俺、お前に甘えてばかりだ」
俺は更に涙をハラハラ流してユウリを困らせた。
ユウリは俺の気持ちを察してか、頬に手を添えた。
「泣くなよ、お前が何を考えてても怒っていても構わない。俺、エイジのこと愛してるんだ」
と言ってキスしてくれた。
俺はユウリの腕の中でベソベソしながら、快楽の余韻に包まれながら眠りに落ちた。
・・・
「おはよう、お寝坊助さん、朝ごはんだぞ。早く起きないとお前の分、俺が食べるぞ」
ん、、、なんかかわいい声がする。
快楽の残った身体をなんとか動かすと、ユウリが俺の頭をワシワシ撫でている。
「ユウリ、身体辛くない?いま何時?」
「8時だぞ。お腹空いたろ。朝ご飯行こうよ!」
昨夜の妖艶さは跡形もなく、いつものかわいいユウリが笑っている。俺はモタモタと服を着て、手を引かれて朝ごはん会場に向かった。
食事は海が一望できるテラス席だった。
ユウリの黒髪を朝日が照らし、風に髪がなびく。
白い肌がほのかに蒸気し、瞳に俺を映して微笑む。
その瞬間を俺は目に焼き付けて、また恋に落ちている自分を感じていた。
第ニ章 明日への種まき
<久我の幸せ: 海辺と人生の途中で>
石川県の千里浜なぎさドライブウェイは青空が澄み渡っていた。
海岸線沿いに砂浜を8キロに渡って走ることができる珍しい国道の海岸線だ。
今日は俺が運転した。車の帆をオープンにして、隣りにユウリを乗せて、朝の海岸線を走った。
「ねぇ、この辺はUFOが出るらしいぞ!遭遇してみたいな。日本海って、太平洋とは違って海と空が青グレーで、確かに出そうな神秘的な雰囲気だもんな」
ユウリは本気で宇宙人との遭遇を考えているようだ。まぁ、それもあながち悪くないかもしれない。2人で宇宙の旅に出て、永遠の命なんかを得たら、ずっと一緒にいられる。
俺たちは走行車の邪魔にならない所に車を停めて、海の方に歩いた。ユウリがうーん、と伸びをして、潮風に髪を揺らしている。
ザザーンと波が海岸に寄せる。海は規則正しいかと思えば、急に大きな波になって足元近くまで寄せてくる。
「久我、見て、蟹がいるよ。かわいいな、小さい。ん、エイジ?何見てるんだ?」
俺は海岸線に溶け込むユウリをずっと見ていた。
白い首すじに、俺の付けた赤い跡が目立つ。
ユウリは気づいているはずだ、俺の強い所有欲を。でも気にしないのだろう。
黒い髪を潮風になびかせ、俺に手を振る。
「何でもないよ。ユウリ、ありがとうな。この砂浜、車で走ってみたかったんだ。本当の海岸線ドライブだな。
この後、どこに行きたい?」
ユウリは波際まで近づき、ヒョイと白い石を拾い上げ、その石をポケットにしまうと、俺の方に駆け寄ってきた。
「この海岸、あと数年で車が走れなくなるらしいよ。温暖化で侵食が進んでいるんだって。
今日の久我との思い出に、石を一つだけ持って帰るよ。もう来れなくても、一緒に来た証になるもんな。
今日はこの後、金沢城の兼六園に行きたいかな。お昼は近江町市場で軽く海鮮はどう?
時間があったら、ひがし茶屋街も良いけど、優先したいのは気多神社かな。
万葉集の中にも出てくる歴史深い神社で、縁結びの良縁のパワースポットなんだって。”入らずの森”は国の天然記念物みたい」
「縁結び?ユウリと俺の?結婚したのにか?」
ユウリはふははっと笑って、頷いた。
「そう、俺たちの。エイジとの良縁、ありがとうって神様にお礼を言いたいんだ。
あと、出来れば2人がいつか離れ離れになっても、また出会えるように。まだまだ先の話しだけど、神様には未来なんて一瞬の時間だろ?だったら先に予約しておきたいんだ」
ユウリ、、可愛すぎる。ずっと未来に渡って俺と一緒にいたいと願ってくれるなんて。
思わずひざまづき、顔を覆った。
ユウリは慌てて俺に駆け寄った。
・・・
今日の観光を終え、俺たちは旅館に戻ってきた。まだ3時だったが、早くユウリと2人きりになりたくてドライブのスピードを早めてしまった。
ユウリはそんな俺の想いに気づかず、運転上手いな!と喜んでくれたので良かった。
実際、北陸のドライブは快適で走りやすく、久々の運転を心から楽しむことができた。
「今日は運転ありがとう。久我、サングラス似合うから、車すれ違う度に女子グループが大騒ぎしてたぞ。何だか妬けた。
それに気多神社、行けてよかった!神様が本当に居そうな雰囲気で荘厳だったよ。北陸、満喫できたな。
この後、温泉入らないか?潮風で少しベタつくし、少し汗ばんだから」
ユウリはニコニコして、お土産をまとめてパッキングし、温泉に行く準備を始めた。
3時台の温泉はほぼ貸切状態で、昨夜の情事の跡も気にせず2人でゆっくりお湯に浸かった。
何度もユウリの濡れた髪は見ているが、おでこを出した今日はいつもに増して妖艶に見える。
人がいない事を良いことに、俺は後ろから抱きつき、うなじに何度もキスを浴びせた。
ユウリは黙って俺のキスを受けていたが、突然振り返り、俺の口に舌を差し込んできた。
「ん、ふぅ、んん、、エイジ、、気持ちいい。。はやく上がろう」
ユウリも同じ気持ちだったんだな。
俺たちは急いで温泉を出て、部屋に戻った。扉を閉めたとたん、俺は我慢出来ず、濡れた髪のままのユウリをベットに押し倒した。
浴衣からはみ出た白い足と胸元が、陰り始めた日差しで一層白く輝いてみえる。
温泉で湿った肌は吸い付くようで、俺は浴衣をはだけて下着をはぎ取り、ユウリのものを唇と舌で弄んだ。
「んん、あ、いい、、エイジ、もっと強くして、、あ、ダメいっちゃう、ああ、、」
こんな声を聞いていたら理性なんてなくしてしまう。俺はユウリの一番弱いところを舌と指で刺激した。
ユウリが果てた後、俺は息が整うのを待った。
目尻に涙を溜めたユウリは、俺を見上げて赤く色づいた唇を差し出し、キスをねだってきた。
ユウリの腰を高く持ち上げ、後ろを向かせた。大人しくされるがままになっていたが、ゴムを付けようとする俺の手を止めて、そのままがいいと囁いた。
俺は強い締め付けと絡まりつく感触を堪能し、持っていかれないように声を押し殺し堪えた。
ユウリは俺の我慢に気づいて、俺が制御できないよう、腰を揺らして更に強くうねる様に締め付けた。
「ダメだ、そんなにキツく締め付けたらイッてしまう。もっと長くお前の中にいたい。。」
「我慢しないで、気持ち良くなって、お願い、そこ気持ちいい、もっと奥にきて」
更に奥にとユウリは腰を突き出して揺らしながらおねだりをする。脳が焼き切れそうで、力加減も出来ず俺は本能のままに揺らした。
気付くと、汗まみれの身体で、ユウリは潤んだ目で俺を見上げている。口を開け、物欲しそうに卑猥な喘ぎ声を上げて、もっともっとと繰り返す。貪欲に俺から全て貪るように。
俺は耳を甘噛みしながらユウリの良い所を刺激した。そして、むせび泣く声に耐えきれず、俺は身体を震わせながら耐えていた自分を開放した。
「久我、起きて!夕飯行こう」
ユウリは俺のおでこにキスをして起こした。
ぼんやり目を開けると、暗くなった空が窓の外に広がっている。
俺はもう一度ユウリを手繰り寄せ、「お前はご飯の時間は忘れないよな」と呟いて、ありがとうとキスをした。
・・・
次の日、東京に戻るのはあっという間だった。
1時間の飛行機で、気づけば見慣れた東京の喧騒に戻る。
俺たちは明日からの仕事に備えることにした。
「久我は夜ご飯の準備をお願い。買ってきた鱒寿司で今日は簡単にしよう。俺は荷物整理と洗濯物しちゃうよ」
いつものユウリだ。家のことをテキパキ終わらせ、海岸で拾った小石をさりげなく居間の置物の横に飾った。
すっかりリフレッシュした俺は、空っぽの心身がフル充電され、またいつも通り仕事をこなす日々に戻った。
取引先の揶揄は、正論で打ち負かすか流す術を心得た。ユウリが心配しすぎないよう、仕事もセーブしている。
「ユウリ、なんか富山から届いたぞ。これ何だ?」
数日後、富山からダンボールが届いた。
ユウリは待ってましたとかけ寄り、中からチューリップの球根を取り出した。
「予約販売してたんだ。自分でも咲かせてみたくて。チューリップは比較的簡単らしいぞ、育てるの頑張ってみる。お前の好きな品種の”春天使”と”ニューサンタ”も買ったぞ。来年の春、咲くの楽しみだな!」
翌年から、ウチでは春に白や赤のチューリップがベランダに咲き誇るようになった。
春天使はユウリらしい白の花弁、ニューサンタは俺っぽいとらしく、赤に白のフリルの縁取りがある品種だ。
俺はそれを見る度に、ユウリとの癒やし旅の時間を幸せに思い出す。
今日も2人の部屋に、爽やかな風が吹き込んでカーテンを揺らした。
第一章 俺だけの秘密
<久我の秘密: 快楽の中で>
ユウリが嫌がることはしない。
それが俺の原則だ。
でも今日はユウリが悪い。あんなに俺を煽って。
失いたくないだと?当たり前だ。離してやらないって何度も言っているのに、俺が別れるわけないだろ。
仕事が忙しくてユウリを抱けない日々が続き、俺が溜めていたストレスは、取引先にセクシャリティを揶揄されるより辛かった。
そんな俺のドス黒い気持ちを知らずに、仕事で疲れているとか、失ったらどうしようとか、ピュアなフィルターで俺を神聖化して、俺を甘やかして。
こんなことしたら、俺がどう出るかをユウリはまだ理解していない。
ユウリを手に入れてから、俺は彼の純粋さを失わないよう、細心の注意を払って接してきた。
俺だけを見つめて、俺だけ愛してくれるように。
なのに俺の努力をよそに、ユウリは他のやつにも優しく隙を見せてしまう。そしてつけ入られてもそいつらの思いも受け止めてしまう。優しすぎるんだ。
だから気づいて欲しい。その優しさは俺にだけ向けるものだと。
こうして激しく乱暴に抱くのは無言の警告なのに、当の本人は嫌がっても結局は俺の汚い思いを受け入れ、俺を更に気持ちよくさせてしまう。
嫌がって抵抗する声も、涙を溜めて俺を見つめる瞳も、結局は俺の怒りを鎮まらせ、逆に俺の欲望を増長する。意図しないユウリの反撃に、いつも負けてしまう。
だけど、そんなところが可愛くて愛おしくて仕方がない。
俺は男が好きなわけではない。強かな女性も同じだ。ユウリは俺が誰の悪口も言わない、なんて言うけど、本当は興味があまりないだけだ。
普通の男は自分のことばかり考えて、虚栄心が強く、こだわりが強い。しかも俺と同じく嫉妬深い。男を好きになるなんて考えてもいなかった。
多くの女性は、俺の中に自分の欲しい未来しか見ようとしなかった。だからいつも孤独だった。
でもユウリは、違った。
男なのに優しくて、他人のことばかり考えて、損得勘定しない。しかも凄くそそられる外見だ。
加えて付き合ってからも、俺の外見ではなく中身を愛してくれて、心から尽くして受けとめてくれる。
性別なんて関係ない。俺にはユウリしかいないんだ。
ふと我に帰ると、ユウリは俺の二の腕を掴んで、喘ぎの合間に「エイジ」と名前を繰り返し呼んでいる。
そして、気持ちいい、愛してると繰り返す。
目尻に溜まった涙を頬に流し、俺が与える強い快楽を何度もやり過ごし、俺が気持ちよくなることを優先して快楽に耐えている。
俺は、激しい行為の合間で流した涙や唾液を拭う時間をユウリに与えない。俺だけに集中して、全身で俺だけ感じていればいいんだ。
俺はドス黒い欲望を彼の中に何度も吐き出し、綺麗な身体を汚す。
それなのに、どうしてそんな幸せなそうな顔をして微笑むんだ、お前は。
こんなに意地悪をしているのに、俺の耳を甘噛みして愛していると喘ぐなんて酷い。
冷静になり、我に返った。
「ごめん、身体大丈夫か?身体に負担をかけてしまってごめん、辛かったよな」
心配になり顔を覗き込むと、ユウリはふわっと笑い、枯れた声でありがとう、すっげぇ気持ちよかったと呟き、顔を拭う。かわいい。
俺は申し訳なさで、ユウリの顔に知らず涙を落とした。
ユウリは目を見開き、大丈夫?無理させたか?と逆に俺を労わる。
「本当にごめん、お前なしじゃ、生きていけない。こんなに酷い抱き方してごめん。俺、お前に甘えてばかりだ」
俺は更に涙をハラハラ流してユウリを困らせた。
ユウリは俺の気持ちを察してか、頬に手を添えた。
「泣くなよ、お前が何を考えてても怒っていても構わない。俺、エイジのこと愛してるんだ」
と言ってキスしてくれた。
俺はユウリの腕の中でベソベソしながら、快楽の余韻に包まれながら眠りに落ちた。
・・・
「おはよう、お寝坊助さん、朝ごはんだぞ。早く起きないとお前の分、俺が食べるぞ」
ん、、、なんかかわいい声がする。
快楽の残った身体をなんとか動かすと、ユウリが俺の頭をワシワシ撫でている。
「ユウリ、身体辛くない?いま何時?」
「8時だぞ。お腹空いたろ。朝ご飯行こうよ!」
昨夜の妖艶さは跡形もなく、いつものかわいいユウリが笑っている。俺はモタモタと服を着て、手を引かれて朝ごはん会場に向かった。
食事は海が一望できるテラス席だった。
ユウリの黒髪を朝日が照らし、風に髪がなびく。
白い肌がほのかに蒸気し、瞳に俺を映して微笑む。
その瞬間を俺は目に焼き付けて、また恋に落ちている自分を感じていた。
第ニ章 明日への種まき
<久我の幸せ: 海辺と人生の途中で>
石川県の千里浜なぎさドライブウェイは青空が澄み渡っていた。
海岸線沿いに砂浜を8キロに渡って走ることができる珍しい国道の海岸線だ。
今日は俺が運転した。車の帆をオープンにして、隣りにユウリを乗せて、朝の海岸線を走った。
「ねぇ、この辺はUFOが出るらしいぞ!遭遇してみたいな。日本海って、太平洋とは違って海と空が青グレーで、確かに出そうな神秘的な雰囲気だもんな」
ユウリは本気で宇宙人との遭遇を考えているようだ。まぁ、それもあながち悪くないかもしれない。2人で宇宙の旅に出て、永遠の命なんかを得たら、ずっと一緒にいられる。
俺たちは走行車の邪魔にならない所に車を停めて、海の方に歩いた。ユウリがうーん、と伸びをして、潮風に髪を揺らしている。
ザザーンと波が海岸に寄せる。海は規則正しいかと思えば、急に大きな波になって足元近くまで寄せてくる。
「久我、見て、蟹がいるよ。かわいいな、小さい。ん、エイジ?何見てるんだ?」
俺は海岸線に溶け込むユウリをずっと見ていた。
白い首すじに、俺の付けた赤い跡が目立つ。
ユウリは気づいているはずだ、俺の強い所有欲を。でも気にしないのだろう。
黒い髪を潮風になびかせ、俺に手を振る。
「何でもないよ。ユウリ、ありがとうな。この砂浜、車で走ってみたかったんだ。本当の海岸線ドライブだな。
この後、どこに行きたい?」
ユウリは波際まで近づき、ヒョイと白い石を拾い上げ、その石をポケットにしまうと、俺の方に駆け寄ってきた。
「この海岸、あと数年で車が走れなくなるらしいよ。温暖化で侵食が進んでいるんだって。
今日の久我との思い出に、石を一つだけ持って帰るよ。もう来れなくても、一緒に来た証になるもんな。
今日はこの後、金沢城の兼六園に行きたいかな。お昼は近江町市場で軽く海鮮はどう?
時間があったら、ひがし茶屋街も良いけど、優先したいのは気多神社かな。
万葉集の中にも出てくる歴史深い神社で、縁結びの良縁のパワースポットなんだって。”入らずの森”は国の天然記念物みたい」
「縁結び?ユウリと俺の?結婚したのにか?」
ユウリはふははっと笑って、頷いた。
「そう、俺たちの。エイジとの良縁、ありがとうって神様にお礼を言いたいんだ。
あと、出来れば2人がいつか離れ離れになっても、また出会えるように。まだまだ先の話しだけど、神様には未来なんて一瞬の時間だろ?だったら先に予約しておきたいんだ」
ユウリ、、可愛すぎる。ずっと未来に渡って俺と一緒にいたいと願ってくれるなんて。
思わずひざまづき、顔を覆った。
ユウリは慌てて俺に駆け寄った。
・・・
今日の観光を終え、俺たちは旅館に戻ってきた。まだ3時だったが、早くユウリと2人きりになりたくてドライブのスピードを早めてしまった。
ユウリはそんな俺の想いに気づかず、運転上手いな!と喜んでくれたので良かった。
実際、北陸のドライブは快適で走りやすく、久々の運転を心から楽しむことができた。
「今日は運転ありがとう。久我、サングラス似合うから、車すれ違う度に女子グループが大騒ぎしてたぞ。何だか妬けた。
それに気多神社、行けてよかった!神様が本当に居そうな雰囲気で荘厳だったよ。北陸、満喫できたな。
この後、温泉入らないか?潮風で少しベタつくし、少し汗ばんだから」
ユウリはニコニコして、お土産をまとめてパッキングし、温泉に行く準備を始めた。
3時台の温泉はほぼ貸切状態で、昨夜の情事の跡も気にせず2人でゆっくりお湯に浸かった。
何度もユウリの濡れた髪は見ているが、おでこを出した今日はいつもに増して妖艶に見える。
人がいない事を良いことに、俺は後ろから抱きつき、うなじに何度もキスを浴びせた。
ユウリは黙って俺のキスを受けていたが、突然振り返り、俺の口に舌を差し込んできた。
「ん、ふぅ、んん、、エイジ、、気持ちいい。。はやく上がろう」
ユウリも同じ気持ちだったんだな。
俺たちは急いで温泉を出て、部屋に戻った。扉を閉めたとたん、俺は我慢出来ず、濡れた髪のままのユウリをベットに押し倒した。
浴衣からはみ出た白い足と胸元が、陰り始めた日差しで一層白く輝いてみえる。
温泉で湿った肌は吸い付くようで、俺は浴衣をはだけて下着をはぎ取り、ユウリのものを唇と舌で弄んだ。
「んん、あ、いい、、エイジ、もっと強くして、、あ、ダメいっちゃう、ああ、、」
こんな声を聞いていたら理性なんてなくしてしまう。俺はユウリの一番弱いところを舌と指で刺激した。
ユウリが果てた後、俺は息が整うのを待った。
目尻に涙を溜めたユウリは、俺を見上げて赤く色づいた唇を差し出し、キスをねだってきた。
ユウリの腰を高く持ち上げ、後ろを向かせた。大人しくされるがままになっていたが、ゴムを付けようとする俺の手を止めて、そのままがいいと囁いた。
俺は強い締め付けと絡まりつく感触を堪能し、持っていかれないように声を押し殺し堪えた。
ユウリは俺の我慢に気づいて、俺が制御できないよう、腰を揺らして更に強くうねる様に締め付けた。
「ダメだ、そんなにキツく締め付けたらイッてしまう。もっと長くお前の中にいたい。。」
「我慢しないで、気持ち良くなって、お願い、そこ気持ちいい、もっと奥にきて」
更に奥にとユウリは腰を突き出して揺らしながらおねだりをする。脳が焼き切れそうで、力加減も出来ず俺は本能のままに揺らした。
気付くと、汗まみれの身体で、ユウリは潤んだ目で俺を見上げている。口を開け、物欲しそうに卑猥な喘ぎ声を上げて、もっともっとと繰り返す。貪欲に俺から全て貪るように。
俺は耳を甘噛みしながらユウリの良い所を刺激した。そして、むせび泣く声に耐えきれず、俺は身体を震わせながら耐えていた自分を開放した。
「久我、起きて!夕飯行こう」
ユウリは俺のおでこにキスをして起こした。
ぼんやり目を開けると、暗くなった空が窓の外に広がっている。
俺はもう一度ユウリを手繰り寄せ、「お前はご飯の時間は忘れないよな」と呟いて、ありがとうとキスをした。
・・・
次の日、東京に戻るのはあっという間だった。
1時間の飛行機で、気づけば見慣れた東京の喧騒に戻る。
俺たちは明日からの仕事に備えることにした。
「久我は夜ご飯の準備をお願い。買ってきた鱒寿司で今日は簡単にしよう。俺は荷物整理と洗濯物しちゃうよ」
いつものユウリだ。家のことをテキパキ終わらせ、海岸で拾った小石をさりげなく居間の置物の横に飾った。
すっかりリフレッシュした俺は、空っぽの心身がフル充電され、またいつも通り仕事をこなす日々に戻った。
取引先の揶揄は、正論で打ち負かすか流す術を心得た。ユウリが心配しすぎないよう、仕事もセーブしている。
「ユウリ、なんか富山から届いたぞ。これ何だ?」
数日後、富山からダンボールが届いた。
ユウリは待ってましたとかけ寄り、中からチューリップの球根を取り出した。
「予約販売してたんだ。自分でも咲かせてみたくて。チューリップは比較的簡単らしいぞ、育てるの頑張ってみる。お前の好きな品種の”春天使”と”ニューサンタ”も買ったぞ。来年の春、咲くの楽しみだな!」
翌年から、ウチでは春に白や赤のチューリップがベランダに咲き誇るようになった。
春天使はユウリらしい白の花弁、ニューサンタは俺っぽいとらしく、赤に白のフリルの縁取りがある品種だ。
俺はそれを見る度に、ユウリとの癒やし旅の時間を幸せに思い出す。
今日も2人の部屋に、爽やかな風が吹き込んでカーテンを揺らした。