地縛霊?㈢
文字数 1,557文字
そして、意外や意外。
突然語り出した、彼の身の上話。
「────俺も、自分が死んだなんて信じられなかった。三年前の今日……、俺はここで死んだ」
「ここ……で?」
「ああ。“あの世”っていわれる世界に───、なんか俺には思い残したことがあるみたいでさ、それを思い出すまでいけないんだとか。それがなんだったのか、いまだにわからない。だから、俺はここから離れられないんだ…………」
「離れられない? 離れられないって、どういうこと?」
「…………」
「ちょっとまって、頭の中、整理するから。それって、つまり…………。アレよね?」
なんだか嫌な予感がして、彼から一歩離れる。
「アレ?」
「そう、アレ……」
「“アレ”ってなんだよ?」
「だから、アレっていったらアレよ!」
「はっきり言えよ」
彼は一歩詰め寄る。
「もうっ! 自分の死んだところから離れられない霊のことっ!」
私は一気にしゃべると、さらに五〇メートルほどダッシュし、止まっている車の
そして、恐る恐るその名を口にする。
「……もしかして、あなた、
「そっ、あたり!」
「なんでそんな、うれしそうな顔してんのよ? てか、当てちゃった……」
「なあ……、なんでそんなに離れてんだよ」
彼が一歩踏み出したところで、私は指で十字をつくってみせる。
「ち、近寄らないでっ! むむむ無理無理無理っ!」
「なんだよ、急に。地縛霊だって知った途端、みんなそーゆー態度とんのな。そんなに引かなくてもいいだろ?」
「無理なもんは無理っ! そんな
「はあ?」
「てかココ、いわくつきの場所だったよね。夜中にお化けが出るっていう!」
「へぇー」
「知らない? 夜中にこの大通りを通ると、一台のバイクがやってきて、目の前までくるとスッと消えるとかなんとかっていう有名な話があるんだけど…………」
お化けにお化けの話をしても……、ってまさか……。
「……あっ! それ、俺だわ。毎日暇だし」
「えっ……」
やっぱり、おまえか……。
「そっかそっか。俺って、実は有名人だったんだ。よしっ! 俺、アンタの友達になってやるよ」
「えっ?」
「友達第一号なっ! 仲良くやってこーぜ」
彼はそう言うと、私の手をぐっとつかんで手をぶんぶん振る。
え、えぇ────っ!?
なんか、おかしなことになってる……。
「んじゃ、他の連中にも声かけてみるか!」
「はい?」
「お~い、みんな出てこいよ! かわいい新入りだぜ、しかも女子高生♪」
彼が呼びかけると、あちこちから、もぞもぞと
まさか、地縛霊仲間ってやつですか?
「ったく、あいつら恥ずかしがり屋さんだからな、隅っこに隠れて出てこないや」
「か、隠れてるの? へぇー、残念……」
「残念? じゃ、あいつらにアンタが会いたがってるってこと伝えておくから」
「えっ、いやいやいいです……っ!」
「遠慮すんなよ。友達が増えるチャンスじゃん」
「そ、そうだけど……、地縛霊はちょっと…………」
ボソッと言う私に、背筋が凍るような殺気をじわじわと感じる。
ま・さ・か……!
「ぬぁ~にぃ~! さっきから聞いてりゃ、“地縛霊、地縛霊”ってアンタ一体何様のつもり? アンタだってな、この世に未練がありゃー、地縛霊になる可能性大っ!」
ひぇーっ!
コ、コワ……。
これぞ、地縛霊オーラ……。
えっ?
「わ、私もっ!?」
口をあんぐりと開けて、彼を見たそのときだった。
────ドク……ン、……ド……ク…………ン。
***