お化けじゃないの?㈠
文字数 710文字
『
黒猫がぬっと現れると、私にそう言った。
死んだ?
死んだって、どういうこと…………?
プップッ─────!
突然、クラクションの音とともに現れた大型トラック。
目を見開いたまま動けずにいると、誰かにグイッと引き寄せられた。
……誰?
目の前がぼんやりとしていて、その人の顔がわからない。
でも、私の知ってる誰か……。
誰だったっけ?
ねぇ、あなたは誰?
「……はっ!」
私はガバッと飛び起きる。
今のは、夢?
すごい寝汗……。
それにしても、なんて変な夢だったんだろう。
……夢?
ううん、ちがう。
全部、本当にあったことだ。
そう、黒猫を追いかけていたら死んじゃって…………。
「死ん、だ?」
私ははっとすると、すぐさま胸に手をおいた。
ドクン、ドクン……。
生きてる。
私、生きてるっ!
「……まぶしい」
カーテンのすき間から、日が射し込む。
あれ?
私の部屋のカーテン、こんなんだった?
ピンクのドット柄……。
ママ、いつカーテン取り替えたんだろう。
あれ……、
なんか、部屋に置いてあるものも違うような……。
そうだよ、あんな洋服ダンスなかったし!
「……ここ、私の部屋じゃない!」
どこ、なの?
掃除の行き届いた部屋。
床には肌触りの良さそうな、オフホワイトのウール
部屋の中央には、おしゃれなガラスのテーブルが置かれている。
────わかったのは、女の人の部屋だということ。