第7話  それぞれの引けぬ思い

文字数 4,990文字

「…来ましたね、エヴァン。

流石は、私の魔力で作った矢を突き落とすとは、見込んだ男よ……

どうです?もっと力を使いたくありませんか、エヴァン。

絶大なる吸血鬼の力をもっと活用し、他者を喰らい、力をもっと活用したいとは思いませんか?」

ハーバーは目の前に現れたエヴァンに向かってそう言い、もう一度自分の意思でハーバーの下に来いとエヴァンに対して言った。

そんなハーバーの誘いに対してエヴァンはレオを担いでるハーバーに向かって、

「……レオを返せ、ハーバー。

その子は私にとって大切な子だ。

お前がレオを返す気がなければ、今、この場でレオを取り戻す!!」

ダッ!!

そうエヴァンはハーバーに向かってそう言うと、エヴァンはハーバーに対して電撃を帯びた剣で攻撃を仕掛け向かって行った。

が、ハーバーはそんなエヴァン対してフッと瞬間移動をしエヴァンの攻撃を避けその場から消えた。

そして再び別の場所で現れ、エヴァンや人間達に向かってレオを担ぎながら特に攻撃を仕向けてくるエヴァンに対してハーバーは皆がいる前でエヴァンに向かってこう言い吸血鬼化しているレオを連れてその場から吐き捨てるように消えた。それは、

「レオを帰して欲しければ一人でこい、エヴァン。

私はお前が欲しい……

わかってるな、エヴァン。

もしお前一人が私の元に訪れなかったら、その時は弟子のレオの首を城の前で吊りさらす。

まあ、どうせ数日もすればお前は再び吸血鬼化し、人間を襲い人間の仇となる魔物に変貌するがな、クククッ……

待ってるぞ、エヴァン。

クククッ、アハハ!」

そうハーバーがエヴァンに向かって言うと、吸血鬼化しているレオを連れて暗闇の闇の中で一緒にその場から消えた。

エヴァンはそんな消えたハーバーに向かって、

「レオ!

くそっ、待て!ハーバー!」

と言い、弟子を連れていったハーバーに対してその後追おうとした。

だが、そんなエヴァンの行動を見て立ち塞がり止めに入るバルトス。

そしてそんな苛立ち、焦りを見せ冷静さを失って敵の城に単身乗り込もうとしているエヴァンに向かってバルトスは、

「残念だが行かせないよ、エヴァン君。

弟子のレオは諦めろ。

今の君に何が出来る?

行って敵の罠にはまり、敵のコマとして我々の元に現れるだけだ。

そうなる事を分かっているからなんとしても行かせるわけにはいかない。

絶対にここは通さんぞ、エヴァン君」

それを聞いたエヴァンは立ち塞がってるバルトスに向かって、

「そこをどいてくれ!バルトス将軍。

彼は、私にとってかけがいのない大切で失いたくない愛弟子レオなんだ!

奴は本当にレオを八つ裂きにし、無惨な姿で私の前に遺体を吊るす。

だから絶対に一人で行かなければならない!


頼む!将軍!ここを通してくれ! 」

エヴァンは前に立ち塞がり城に向かわせてくれないバルトスに言うと、バルトスはこの時無言でスッと剣を抜いた。

そしてバルトスはレオを救出しようとするエヴァンに向かって、

「どうしても城に行こうとするなら、ここで四肢を切って動けなくするか、それともここで大人しく君が我々に対して身を引くか、どちらか選ぶがいい……」

ダッ!

バルトスはエヴァンに向かっていきなり言い終わると素早く剣を持ち斬りかかってきた。

この時エヴァンは本気で襲いかかってくるバルトスの姿を見て、

(本気だ。本気で私に向かってバルトス将軍は私に斬りかかってくる。

っ……くそ!

どうすればいい……戦うしかないのかここで。

レオが、レオが、私のせいで、くそっ……)

エヴァンはひとまず持ってきた剣を持ち、向かってくるバルトスに対して剣を交えた。

両者激しく剣がぶつかり合う音。

バルトスの剣は容赦なくエヴァンに向かって襲いかかる。

しかもバルトス自身が力が強く流石は軍人といった所で、もし戦うのが並の人間でエヴァンではなかったら剣圧で弾き飛ばされていただろう。

それほどまでに強い相手。

半端ない。

このままではエヴァン自身が力付くで押さえられて本当に動けるなくなってしまうのかもしれない。

エヴァンはこの時咄嗟に剣に青い電撃を発生させ、バルトスの剣を電撃で叩き割ろうとする作戦に出た。

そしてもう一度バルトスがエヴァンに向けて刃を差し出し攻撃を仕掛けようとすると、エヴァンは剣が交えた瞬間高圧な電撃でバルトスの剣を破壊することに成功した。

そして剣を失ったバルトスの姿を見て、バルトスに向かってエヴァンは、

「ここを通して下さい」

と再度言い、武器がなくなったバルトスに向かってエヴァンはハーバーのいる城の所に向かおうとした。

だがバルトスはなんとしてもエヴァンを行かせるつもりではなかった。

このままエヴァン1人で城に向かえば必ずエヴァンは魔族の手におちる。

あの魔族はヤバイ。

力も未知数だが、それよりも頭が切れ性格も冷静だ。奴は人を惑わし相手のペースを自分のペースに持っていく事が何よりも長け、先の行動を読め、かなりの実力を持っていると見える。

なんとしても行かせる訳には行かない。

…………

その為には……

バルトスは右手をフッと前に出し、バルトスの回りにいる兵達に合図を出した。

それはエヴァンの中に仕込まれている封印術の術式を強制的に密度をあげ、エヴァンはこの影響を受けて術式の式が赤く体に浮かび上がりその場で倒れた。

バルトスは倒れたエヴァンに向かってこう述べた。それは、

「……こんな卑怯なやり方はしたくなかったが行かせる訳には行かない。

もう一度言う。

弟子のレオは諦めろ。

行って君に何が出来る?

ただ相手のペースに呑み込まれ、全てを失うぞ」

バルトスは術式に縛られているエヴァンにさらに言葉を続け、

「君はあの魔族と戦ったらしいが、妃の姿が見えぬとみたら大方妃を人質に取られたのだろう。

そして不意を突かれ、敵に攻撃のチャンスをよこし、挙げ句に敵の駒の吸血鬼にされ……

君は王である資格はない……

見ろ、周りを見ろ!エヴァン君。

君の国はどうなった?

守るべき国民は君が奴に敗れたせいで吸血鬼にされ、敵の操り人形となった。

国は乱れ魔族に支配され、挙げ句の果てに誰一人守れてはしない。

国のリーダーであろう者は時に冷酷で誰かを犠牲にしなければいけない時もある。

それを君はそんな状態にもなっているにも関わらずたった一人の者の為にまた同じ過ちを繰り返そうとして……

君は本当に国のリーダーの王としての重みを感じないのか?」


それを聞いたエヴァンは術式に縛られながらもバルトスに向かって、

「返す言葉もない……

私は、自分は元々王になる器もなかった。

自分勝手で子供の時から一人になる事が多く、皆をまとめてその国の王になるなど考えた事もなかった。

でもティファーと一緒になって、この国の人達に触れて……

生まれて初めて人を好きになりこんな自分を後押ししてくれたのは紛れもない弟子のレオだったんだ。

だから100%国のリーダーとして判断として正しくないのは分かっている。

でも、でも……

失いたくない……大切な者を二度と失う事など……

お願いだ!バルトス将軍!

私は、私は!」

それを聞いたバルトスはエヴァンに向かって、

「甘い!だからそれが甘いんだと言うんだ、エヴァン君。

私がまだ幼い時、私の住んでいた地にも魔族の侵攻を受けた。

力なき者は惨たらしく殺され、父は早々に病気で死に、そして私と母もその時魔族どもに捕まり、女手一つで育ててくれた母は私の身と引き換えに魔族の贄となった。

毎日私の目の前で犯され、声をあげ叫び続けてる母の姿を……

やがて母は動けなくなり死に至った。そして私はこの時いよいよ魔族どもに殺されるかと思った。だがその時人間達の連合軍が来て私の命は助かったのだ。

私はこの時誓った。

君が最愛の弟を殺され魔物に対して復讐の鬼と化したのなら、私は二度と魔族どもの言いなりにならない屈強な国を作ろうと……

そう、

君と私達二人は他人の命を犠牲にし、その上に成り立ち糧にした存在に過ぎない」

バルトスの最後のその言葉を聞いたエヴァンは、グッと拳を握り締め呪法で拘束されている体を動かそうとした。

そしてそんなセリフを吐いたバルトスに向かってエヴァンは、立ちあがり抵抗するエヴァンの姿を見てエヴァンはその姿を見て驚いているバルトスに向かって、

「だからこそ、だからこそ私達はもう大切な者を失う後悔など二度としてはいけない。

目の前にいる大切な人……

もう二度とあの時力がなくて何も出来なかった自分に戻りたくはない。

たとえこの命、すべてをかけても……

自分の命よりも大切な者を、もう二度と見殺しは……


させない!!」

ゴッ!!

エヴァンはこの時人間ではない力を発生させ眼は赤くなり、ハーバーの吸血鬼の力を体から発生させた。

禍々しく危険なオーラ。

城内はピリピリと凄まじい音をたてる。

バルトスは驚き戸惑った。

あの時吸血鬼化して理性をなくし暴れていたエヴァンの気配とは程遠く、そうまるで力が集中し密接で一点に濃厚な気を発していたからだ。

バルトスはそんなエヴァンの姿を見て、禍々しい気を発しているエヴァンに向かって、

「……そんなにあの弟子のレオの命が大切なのか。魔物の力に身を委ね、そこまでして君は……

エヴァン君、私は……」

エヴァンは体を呪法で縛られながらも抵抗し体をぐぐっとかがんだ。

そして目の前にいるバルトスに向かってエヴァンはその重く縛られた体をしながらもバルトスに向かって攻撃を仕掛けた。

バルトスはこの時隠し持っていた小さな短剣で襲いかかってくるエヴァンの体に向かって咄嗟に刺そうとした。

だがこの時バルトスはあまりのエヴァンの気迫に圧倒され一瞬体が怯み判断が誤った。

バルトスはこの時しまったと思い、後悔し殺られると思った。

だがエヴァンはわざとバルトスが手に持ってる短剣の尖端の刃を脇にくらった。

この時エヴァンなりにバルトスに対する申し訳なさからその行動に出たのだろう。

バルトスの立場なら自分もそうするだろうと彼なりにそうすると思ったからだ。

だがここは引くわけにはいかない。

エヴァンの決意は揺るぎない信念でこの時動き、まるで体から流れポタポタと落ちるその血は、 複雑な色どりをし真っ赤で熱く彩っていた。

「……どうしても行くのか、君は……」

「…………」

コクン……

バルトスは無言でバルトスの顔を見て体から血を流してるエヴァンに向かって、

「大切な者の為に何もかも自分の思いに突き進み、すべてを失ってでも弟子を助けに行くのか……」

コクン……

エヴァンはバルトスの問いの言葉を聞き、深くうなずきただじっと尚も真剣にバルトスの顔を見た。

バルトスはそんな決意が緩まぬエヴァンの姿を見てそんな自分の思いに引かぬエヴァンに向かって、

「……わかった。

この勝負私の敗けだ。

力づくでも押さえても今の君には到底私には力が及ばない。

意思を持ち、人間以上の力を今の君にはコントロールできるからな。

だがエヴァン君。少し待ってほしい……

カルベロッカの城に行って敵を拘束しようとして我々が向かった途中、何やら部下がカルベロッカの地下から一冊の本を見つけた。

そしてその本の内容にはあの魔族との戦いの歴史が書かれており、その中に吸血鬼化に関する内容も書かれていた。

過去に起こったこの戦いからもしかしたら何か掴めるのかもしれないのと……

そしてその地下の瓦礫のすぐ側から部下がこれを見つけ出し、私の手元に持ってきた物だ。

エヴァン君、これを……」

エヴァンはバルトスから何やら筒のような物を受け取り、手に持ちそれを見た。

そしてエヴァンはそれを持ちながらバルトスに向かって、

「……これは」

と言い、 二人はその場でそれを見てその場を後にした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み