第8話 人質 翻弄、そして……
文字数 7,940文字
月が大きく真っ赤に染まる満月の日。
エヴァンはレオを人質に取られているハーバーの元に一人で向かった。
薄暗く淀んだ城。
ここはかつてカルベロッカの城であり、白をモチーフとした現在はエヴァンとティファーが住んでいた城だった。
だがそれも単身突然乗り込んでハーバーにより闇の城に変えられ、国もそのままそっくりハーバーによって乗っ取られてしまった。
エヴァンはそんなハーバーがいる最上階の部屋に乗り込み、暗闇の部屋の中玉座に座ってる憎いハーバーと対面した。
そしてそのハーバーの横には吸血鬼化したレオがグルルと声を鳴らしながら赤い目をし師であるエヴァンの方を睨み付け、この時のレオは吸血鬼の王であるハーバーによって心をコントロールされていた。
ハーバーは玉座の前でここまできたエヴァンに向かってこう言う。それは、
「……約束通り一人で来ましたね、エヴァン。
どうです?
ここは素直に貴方の意思で私の片腕として側にいてくれませんかね、エヴァン。
私はお前が可愛い。
可愛くて仕方がない。
腕もたつし、そして何より昔のお前は残忍で魔族頼の考えだったからだ。
今、再びその性格に戻してやる。」
それを聞いたエヴァンは片手に持ってる剣に魔力で電流を流し、目の前にいるハーバーに向かって、
「戯けた事を……
誰がお前なんかの下に……
今すぐ私がこの手でお前を葬ってやる。
覚悟しろ、ハーバー!」
そうエヴァンがハーバーに向かって言葉を返すと、エヴァンはさらに剣から魔力で流している電撃の威力を高めた。
ハーバーはそんなエヴァンの姿を見て、
「……仕方がありませんね、エヴァン。
貴方も今宵今日の夜にでも完全に吸血鬼の心に支配されるのに、あくまでも残り少ない時間を抵抗するんだな、エヴァン。
わかった。
なら、お前が可愛がっていた愛弟子レオと今からやりあい殺し合うがいい。
やれ、レオ!」
グアオウ!!
「……レオ!」
エヴァンはハーバーの命令によってコントロールされてるレオの姿を見て声を出しレオに向かって大きな声で名前を呼んだ。
だが名前を呼んだのにも関わらずレオは、まるで目の前にいるエヴァンが誰だかわからずただひたすらエヴァンの顔を睨み付け威嚇しうなり声をあげた。
そんな二人の姿を見てその状況を楽しむようにニッコリとうすら笑みを浮かべるハーバー。
そして再度またハーバーは、ハーバーによって操られているレオに向かって、
「……さあ、レオ。
思う存分に喰らうがいい。
目の前にいるのはお前にとってただの獲物だ。
お前の力を見せつけ本能のままに喰らい尽くすがいい。
さあ、行け!レオ!!」
「グガアアア!」
ハーバーはレオに突き付け、その声に従いエヴァンの元に飛び込んだ。
そう、その姿はまるで一頭の空腹に浸された獣の雄ライオンのように……
エヴァンは剣を構えレオの攻撃を受け止めようとした。
鋭く尖ったレオの爪。
エヴァンがレオの爪を剣で攻撃を防ぐと、パンと甲高い音がその場を轟かせる。
エヴァンは剣でレオの爪を押えながら、正気を失っているレオに向かって、
「レオ!レオ!私だ!エヴァンだ!
君を連れ戻しにきた。
ごめんな、レオ……
私を助けに来て城から連れ出してくれたのに、このような状態になって……
今度こそ私と一緒に帰るぞ、レオ!」
そうエヴァンが呼掛けレオに向かって言うと、レオは交えていたエヴァンの剣を凪ぎ払い、凪ぎ払った瞬間エヴァンの顔を殴り付けた。
そして地面に倒れたエヴァンに向かって尚且つ鋭い爪でレオは両手で押さえ叩き付けようとしたその時、エヴァンは体を魔法で電流に代えてレオの攻撃を交わし、レオの元から離れた。
「……レオ!」
「!!!」
エヴァンは離れた瞬間魔法を唱えた。
レオの体を拘束する為の鎖の呪文、その鎖はたちまち地面から出現しレオの体をギシギシと拘束する。
レオの体はエヴァンから出した鎖で雁字搦めになった。
そして身動きとれず出来なくなったレオに向かってエヴァンは、
「待ってろ、レオ。
君を拘束してすまない。
すぐにこいつ(ハーバー)を倒して元の状態に戻すからな」
と言い、エヴァンはレオを操ってる悪の元凶のハーバーに向かってキッと睨み付けた。
その様子を見て、やはり今の力ではレオにとってエヴァンには敵わないなと思ったハーバー。
エヴァンももう少しで呪法の効果もきれ完全にまた吸血鬼の心に支配され自分の配下に加わると思っているのだが、それにしても後少し時間がある。
エヴァンは全力で魔力をあげ、
「さあ、時間もないので一瞬で貴様を吹き飛ばしてやるぞ、ハーバー。
あの時の続きをしよう。そしてティファーやまた、吸血鬼になった人々を戻し、貴様の思惑も私が今ここで粉々に打ち砕いてやる。覚悟しろ!ハーバー」
と言い、エヴァンは貯めた魔力をハーバーにぶつけようとした。
そんなエヴァンを見て玉座でただじっとエヴァンの様子をうかがうハーバー。
ハーバーはそんなエヴァンの戦う姿を見て、玉座に座りながらエヴァンに向かって、
「ほんとに貴方は仕方がないですね、エヴァン。
凶暴化している弟子もいともたやすく足止めするとは、本当に出来る男よ、エヴァン。
…………
さっきも言いましたが、本当に私の右腕になりませんかね、エヴァン。
何度も言いますが私はお前が欲しい。
こうして意識があり、尚且つ吸血鬼の力をコントロールして保っている貴方がただこの場で消すのは勿体ない。
さあ、お前の意思で今一度この場で私の手をとれ、エヴァン。
人間では味わえない楽しい経験を感じさせてやる。さあ、今一度考え直せ、エヴァン」
それを聞いたエヴァンは、そんなハーバーに向かって、
「くどいぞ、ハーバー。
私と戦うのがそんなに嫌か、ハーバー!
それとも私に負けるのが嫌で業と避けてると見える。
ならばレオ達を皆を元に戻し、今すぐこの場で降伏しろ!
そしたら私はこの場でひいてやんでもないが……
さあ、どうするのだ、ハーバー!」
「…………」
ハーバーは玉座に座りながら黙った。
エヴァンがハーバーに向かって攻撃体制に入っている姿を見ながら……
そんなハーバーの姿に痺れを切らしたエヴァンはただ黙りこんでいるハーバーに向かって、
「……来ないなら私から行くぞ!ハーバー!
今すぐお前の首をここで吹き飛ばしてやる。
覚悟しろ!ハーバー!」
ダッ!
エヴァンは玉座に座ってるハーバーに向けて出向き剣を振るった。
ハーバーの間合いに入り、剣から音をたてる激しい電流をスパークさせながら……
だが剣を振るった瞬間、ハーバーはエヴァンの前で一本の人差し指を前に出した。
指に魔力を込め、彼エヴァンを迎え撃つかのように……
だがその指に込めた魔力はエヴァンの方に向かなかった。
目の前にいるエヴァンを横切り、一本の放った光はエヴァンの体を通り過ぎ真っ直ぐ違うところにいった。
そう、その光はなんとエヴァンによって鎖に拘束されたレオの元に向かった。
エヴァンはその通りすぎるその光を見て咄嗟に、
「レオ!!」
と名前を叫びレオの方を見た。
拘束されたレオに向かって放たれた魔力がレオの体を激しくスパークする。
そしてその魔力に呼応し冒されたレオの体は鎖に繋がれながらも悶え苦しみ鎖をガチャンガチャンしながらレオはその場を暴れだした。
そんなレオの苦しんでる姿を見てエヴァンはハーバーの行為に怒り狂った。そして、
「ハーバー!貴様!!」
と叫びレオにハーバーに向かってやめさせるようにハーバーに対してエヴァンは言った。
ハーバーはその状況を作り怒り狂ってるエヴァンに向かってこう言う。それは、
「吸血鬼化している今のレオは私の思いのまま支配できる。
そう、彼を生かし私の道具としてそのまま生かす事ができるか、それとも、彼の心臓を握り潰し脳神経にダメージを与え死を与える事もできる。
そう……
すべては何もかも私の手の平の上だ、エヴァン。
貴様も、そしてお前の可愛い弟子レオや、そして強者に命を握られ細々と生きていくしかない憐れな虫ケラどもの人間も、所詮私によって命を握られてるに過ぎない。
そうだ、私がお前達を殺さないからだ、エヴァン。
お前達人間の命は、いつでも簡単に殺す事が出来る。
だがただ単に殺すのはつまらないからな、エヴァン。
さあまず弟子を拘束している鎖を解除してもらうぞ、エヴァン。
そして手に持ってる剣を地面に置き、まずは目の前にいる弟子の餌となるがいい。
そして今度目覚めた時にはお前は完全に私の物になり、小賢しい呪法も消え、今度こそ再び私の優秀な下僕として生きるのだ。
さあ、解いてもらおうか、エヴァン。
でないと弟子が………
どうなるかわかるだろ、エヴァン」
ググッ……
「…………」
エヴァンはハーバーのレオに対しての脅しの行動を見て押し黙り苦しんでるレオの方を見た。
そしてそんなまたもや卑怯な手を使ってるハーバーに向かってエヴァンは、
「……またしても私に対して人質を取るのかハーバー。
ティファーにしろレオに対しても、一体どこまで私の心を翻弄する?」
エヴァンの言葉を聞いたハーバーは、そんなエヴァンに向かって、
「ずっとですよ、エヴァン。
お前に定めた時からずっと……
もう一度私の理想だった冷酷な昔の姿に戻してやる。
お前は私から離れられない……
私に目をつけられた瞬間からお前の運命は決まっている。
早くから魔族に故郷を襲撃され両親を亡くし、そしてたった一人血の繋がった弟も魔物に殺され、そして今尚お前がもっとも大切なレオを私の手で命を握られている。
そう、お前の人生その物が魔族に翻弄され奪われ続ける哀れな生き様だな、エヴァン。
結局お前は私にあがなう権利すらない。
……ククク。
さあその大切な物の為目の前で再び光景を見たくはないだろエヴァン。
さっきも言った通り、今自分が置かれている立場をわきまえ今すぐしてもらおうか、エヴァン。
でないとお前の手塩をかけた弟子の姿がどうなるかわかるだろうエヴァン。ククク……」
「…………」
エヴァンは下を向き黙った。
そしてこの時剣から発している魔力をとめ手に持ってる剣をその場で落とした。
エヴァンにとって大切な物を失うわけにはいかない。
自分の命より最優先に大切な者を守る。
そう、それは弟ミシュランを失ってからずっと……
彼にとって大切な者を人質に取られることはこの先ずっと犠牲にする事は出来す宿命つけられた呪いとも言えるかもしれない。
「……レオ」
エヴァンは呪法の鎖を解き拘束されてるレオの体を解き放った。
その場で落ちるレオの体。
落ちた瞬間レオはハーバーの魔力に支配された状態で赤い目でギッとエヴァンの顔を睨み付け、そしてそのままエヴァンの首をめがけて鋭い牙でエヴァンの喉元に噛みついた。
「っ……、レオ」
エヴァンの首からレオの鋭い牙によって赤い血がドクドクと流れ出す。
エヴァンはレオに押し倒されるように地面に倒れた。
血がレオの喉元にどんどんと中に取り込まれていく。
そしてその光景に呼応するかのようにエヴァンはこの時体に施された呪印が消え、赤い大きな月の下でそのままレオを抱き抱え、眠るようにその場で目を閉じた。
「……レオ、私は……」
赤黒い血のような月が二人の体を照らし合わせ光を差し込む。
そんなレオに対して抵抗もせず、その場で倒れたエヴァンに向かってハーバーは倒れてる二人の元に来て、
「……愚かな」
と吐き捨てるようなセリフを言い、そして、
「見捨てたらいい物よ、エヴァン。
所詮他人など足手まといでしかならない。
このような私に対していかに大切な者を守る為だとは言え自分のすべてを失い条件に従うなど私には到底理解できない事だがな、ハッハッハ……
さあ小賢しい呪印も消え、今再び吸血鬼として生を歩むのだ、エヴァン。
そして今一度私に従い、優秀なパートナーとして私と共に人間どもを混沌の世界へと誘いあうのだ。
さあ、立てエヴァン!」
ムクッ……
エヴァンはハーバーの声に答えるようにスクッと体を起こし目を開け動いた。
そしてハーバーはそんなエヴァンの姿を見て向かって前に手を出し、虚ろぎの目をしてるエヴァンに対して忠誠の証として自分の手にキスをしろと言った。
エヴァンは差し出された手に持ちキスをした。
そして虚ろぎの目で下を向き、ただ何もいわないままその場でじっとしていた。
ハーバーはエヴァンのそのような姿を見て誇らしげに顔をにやけ嘲笑った。
そしてただじっと動かぬ人形のようなエヴァンに向かってハーバーは、
「そうですよ、エヴァン。
私に反抗し抵抗している貴方も可愛いですが、やはり犬のように従っている貴方も素敵で可愛いです。
さあ、今度は貴方の出番ですよ、エヴァン。
そこで寝転がっている弟子のレオの命を喰らいなさい。
大切な者の命を奪えば貴方は完全な残虐で冷酷な吸血鬼となり昔のお前に戻れる。
誰も貴方に近寄れず孤島な昔の魅力的なエヴァンに……
さあ、今すぐそこで倒れている弟子の命を喰らえ、エヴァン。
さあ……」
ハーバーは横で倒れているレオに向かってエヴァンに今すぐ食い殺せと言った。
今、ここで愛する者を血を吸い本能のままに命を喰らえば、身も心も完全な魔物と化し真の吸血鬼となる。
エヴァンは再度下を向きうつむいた。
だがこの時そんな嘲笑いにやけているハーバーに向かってエヴァンは、エヴァンに対して命令を出してるハーバーに向かってボソッと口に出した。
それは、
「……レオの命を奪えだと?
死ぬのはお前の方だ!ハーバー!」
「何!?」
ガッ!
エヴァンはこの時ハーバーの手を強く握りしめ片手に魔法弾をぶつけようとした。
だが攻撃しようとした瞬間ハーバーはマジックバリアを発動し、エヴァンの攻撃を相殺した。
相殺した辺りには激しく爆風の風が舞い上がる。
ハーバーはそんなバルトスの呪法が消え吸血鬼化の能力でエヴァンが操り人形と化したはずだが何故か言う事がきかないエヴァンに対して疑問に思い動揺した。
だがそんな疑問に思っている瞬間すかさず爆風の背後からレオの拳から激しく炎をまとわせた手がハーバーの顔面を殴りハーバーはその場でぶっ飛んだ。
仮面が激しく割れ損傷するハーバー。
レオの攻撃はハーバーにとって予想だにしない攻撃だったのでまともに受け、レオ達にとってこの時初めての大ダメージをくらわせた。
壁に打ち付けられ倒れてるハーバーに対して二人は、どうして正気なのかとエヴァンは倒れているハーバーに向かって言いはなつ。それは、
「バルトス将軍の部隊がカルベロッカの地下の隠れ部屋から発見された小さなグラスのフラスコ。
その中には先代カルベロッカの女王、ヨハン=カルベロスの血が僅かではあるが保存されていた。
ヨハン=カルベロスの血は地下から一緒に発見された本では特殊な血液で、ありとあらゆる毒を中和しその毒の効力を大幅に半減させる事が出来るのだ。
私はその血を体に注入した。
いちかばちかどうなるかわからなかったが結果、こうして吸血鬼化を押え見事に私の血液を吸ったレオも正気を取り戻し元のレオに戻ったわけだ。
ただ、残念ながら私はお前を倒さないかぎり完全な人間の身体には戻る事は出来ないが……
それでもこうしてお前と戦える。
覚悟しろ!ハーバー!
お前は、ここで終わりだ!!!
そうエヴァンがハーバーに対して言い放つと、レオはエヴァンから合図を受けたかのように手に魔力をこめエヴァンと共に壁に打ち付けられているハーバーに向かって魔法を全力でぶつけた。
「!!!」
レオの炎と激しく火花が散ったエヴァンの電撃魔法がハーバーを襲う。
この時二つの魔法は重なりあった。
その魔法はまるでやっと互いに心を通い合わせ、卑怯にも二人の仲を切り裂き分断しようとした者への激しい怒りをぶつけるかのように………
二人の呪文がハーバーの前で炸裂し辺り一面を吹き飛ばした時、この時もう一度ハーバーに一撃を与えたかにみえた。
だがハーバーは強かった。
不意討ちでもない限り庭かではあるがダメージを負っていたとしてもこの時魔法を相殺しており、ハーバーは上空に舞い上がり二人の姿を見た。
そして仮面から漏れている怪しげな無数の目を手で隠しながらハーバーはエヴァンに向かって、
「……今日の所は退きましょう、エヴァン。
だが私は決してお前を諦めない。
私は狙った者は執念深いからな。
必ずやお前を闇の王にしてくれる。
それまではお前は……
また会いましょう、エヴァン」
フッ……
そうハーバーがエヴァンに対して言うと、ハーバーは空間移動でその場から消え、城は二人だけを取り残し静かな空間が漂った。
エヴァンは元に戻り横にいるレオに対してこう言った。それは、
「すまなかった、レオ。
君をこんな目にあわせて……
私は、私は……」
それを聞いたレオはうつむいてるエヴァンに向かって、
「いいんですよ、別に。
元の体に戻りひとまずハーバーを撃退したのですから。
それに先生の忠告をうけず連れまわしたのは俺の勝手です。
それよりお腹すきました先生!
何かお腹いっぱい食べたいです!
それからティファー王妃を救い、一緒にハーバーを倒しに行きましょう!」
そう謝ってるエヴァンに対してレオはスタスタと夜の町に向かい、ガランとした城を出て二人はその場を後にした。
そしてそれからまず二人はバルトスの所に行き一連の話をした。
エヴァンに投与したカルベロスの血液が他の吸血鬼化した者達に対してその血液を通して元の人間の体に戻す事ができる事。
それを聞いたバルトスはさっそくこの残ってる血液を培養し吸血鬼化したカルベロスの人々に対して明日にでも投与しようとエヴァンに向かって話した。
何から何まで動き、協力してくれるバルトス。そのバルトスに対してエヴァンは、
「バルトス将軍、すまない。
私はレオを……
王失格だな」
それを聞いた隣にいるエヴァンに向かってバルトスは、
「私こそすまなかった。
あの子にとって君は本当に大切な子なんだなエヴァン君。
私も母を、君みたいに自分の命をかけてまであの時抵抗していればまた違う考えがでたのかもしれない。
まるで過去の空いた心の穴をあの時の私の写し身を君の姿を見て埋めてくれたように……
…………
この近くに美味しい麺を取り扱ってる東洋のラーメンという物がある。
確かあの子も以前君が話していたように日本人とロシアのハーフの子だったな、確か……
ラーメンという物は日本人にとっても馴染み深い物だと思うが、一回二人で行ってみてはどうかね?」
そうバルトスが言うと、エヴァンにそのラーメン屋の場所を教え、エヴァンは腹をすかして待ってるレオを連れて二人で夜の中そのラーメン屋に向かった。
エヴァンはレオを人質に取られているハーバーの元に一人で向かった。
薄暗く淀んだ城。
ここはかつてカルベロッカの城であり、白をモチーフとした現在はエヴァンとティファーが住んでいた城だった。
だがそれも単身突然乗り込んでハーバーにより闇の城に変えられ、国もそのままそっくりハーバーによって乗っ取られてしまった。
エヴァンはそんなハーバーがいる最上階の部屋に乗り込み、暗闇の部屋の中玉座に座ってる憎いハーバーと対面した。
そしてそのハーバーの横には吸血鬼化したレオがグルルと声を鳴らしながら赤い目をし師であるエヴァンの方を睨み付け、この時のレオは吸血鬼の王であるハーバーによって心をコントロールされていた。
ハーバーは玉座の前でここまできたエヴァンに向かってこう言う。それは、
「……約束通り一人で来ましたね、エヴァン。
どうです?
ここは素直に貴方の意思で私の片腕として側にいてくれませんかね、エヴァン。
私はお前が可愛い。
可愛くて仕方がない。
腕もたつし、そして何より昔のお前は残忍で魔族頼の考えだったからだ。
今、再びその性格に戻してやる。」
それを聞いたエヴァンは片手に持ってる剣に魔力で電流を流し、目の前にいるハーバーに向かって、
「戯けた事を……
誰がお前なんかの下に……
今すぐ私がこの手でお前を葬ってやる。
覚悟しろ、ハーバー!」
そうエヴァンがハーバーに向かって言葉を返すと、エヴァンはさらに剣から魔力で流している電撃の威力を高めた。
ハーバーはそんなエヴァンの姿を見て、
「……仕方がありませんね、エヴァン。
貴方も今宵今日の夜にでも完全に吸血鬼の心に支配されるのに、あくまでも残り少ない時間を抵抗するんだな、エヴァン。
わかった。
なら、お前が可愛がっていた愛弟子レオと今からやりあい殺し合うがいい。
やれ、レオ!」
グアオウ!!
「……レオ!」
エヴァンはハーバーの命令によってコントロールされてるレオの姿を見て声を出しレオに向かって大きな声で名前を呼んだ。
だが名前を呼んだのにも関わらずレオは、まるで目の前にいるエヴァンが誰だかわからずただひたすらエヴァンの顔を睨み付け威嚇しうなり声をあげた。
そんな二人の姿を見てその状況を楽しむようにニッコリとうすら笑みを浮かべるハーバー。
そして再度またハーバーは、ハーバーによって操られているレオに向かって、
「……さあ、レオ。
思う存分に喰らうがいい。
目の前にいるのはお前にとってただの獲物だ。
お前の力を見せつけ本能のままに喰らい尽くすがいい。
さあ、行け!レオ!!」
「グガアアア!」
ハーバーはレオに突き付け、その声に従いエヴァンの元に飛び込んだ。
そう、その姿はまるで一頭の空腹に浸された獣の雄ライオンのように……
エヴァンは剣を構えレオの攻撃を受け止めようとした。
鋭く尖ったレオの爪。
エヴァンがレオの爪を剣で攻撃を防ぐと、パンと甲高い音がその場を轟かせる。
エヴァンは剣でレオの爪を押えながら、正気を失っているレオに向かって、
「レオ!レオ!私だ!エヴァンだ!
君を連れ戻しにきた。
ごめんな、レオ……
私を助けに来て城から連れ出してくれたのに、このような状態になって……
今度こそ私と一緒に帰るぞ、レオ!」
そうエヴァンが呼掛けレオに向かって言うと、レオは交えていたエヴァンの剣を凪ぎ払い、凪ぎ払った瞬間エヴァンの顔を殴り付けた。
そして地面に倒れたエヴァンに向かって尚且つ鋭い爪でレオは両手で押さえ叩き付けようとしたその時、エヴァンは体を魔法で電流に代えてレオの攻撃を交わし、レオの元から離れた。
「……レオ!」
「!!!」
エヴァンは離れた瞬間魔法を唱えた。
レオの体を拘束する為の鎖の呪文、その鎖はたちまち地面から出現しレオの体をギシギシと拘束する。
レオの体はエヴァンから出した鎖で雁字搦めになった。
そして身動きとれず出来なくなったレオに向かってエヴァンは、
「待ってろ、レオ。
君を拘束してすまない。
すぐにこいつ(ハーバー)を倒して元の状態に戻すからな」
と言い、エヴァンはレオを操ってる悪の元凶のハーバーに向かってキッと睨み付けた。
その様子を見て、やはり今の力ではレオにとってエヴァンには敵わないなと思ったハーバー。
エヴァンももう少しで呪法の効果もきれ完全にまた吸血鬼の心に支配され自分の配下に加わると思っているのだが、それにしても後少し時間がある。
エヴァンは全力で魔力をあげ、
「さあ、時間もないので一瞬で貴様を吹き飛ばしてやるぞ、ハーバー。
あの時の続きをしよう。そしてティファーやまた、吸血鬼になった人々を戻し、貴様の思惑も私が今ここで粉々に打ち砕いてやる。覚悟しろ!ハーバー」
と言い、エヴァンは貯めた魔力をハーバーにぶつけようとした。
そんなエヴァンを見て玉座でただじっとエヴァンの様子をうかがうハーバー。
ハーバーはそんなエヴァンの戦う姿を見て、玉座に座りながらエヴァンに向かって、
「ほんとに貴方は仕方がないですね、エヴァン。
凶暴化している弟子もいともたやすく足止めするとは、本当に出来る男よ、エヴァン。
…………
さっきも言いましたが、本当に私の右腕になりませんかね、エヴァン。
何度も言いますが私はお前が欲しい。
こうして意識があり、尚且つ吸血鬼の力をコントロールして保っている貴方がただこの場で消すのは勿体ない。
さあ、お前の意思で今一度この場で私の手をとれ、エヴァン。
人間では味わえない楽しい経験を感じさせてやる。さあ、今一度考え直せ、エヴァン」
それを聞いたエヴァンは、そんなハーバーに向かって、
「くどいぞ、ハーバー。
私と戦うのがそんなに嫌か、ハーバー!
それとも私に負けるのが嫌で業と避けてると見える。
ならばレオ達を皆を元に戻し、今すぐこの場で降伏しろ!
そしたら私はこの場でひいてやんでもないが……
さあ、どうするのだ、ハーバー!」
「…………」
ハーバーは玉座に座りながら黙った。
エヴァンがハーバーに向かって攻撃体制に入っている姿を見ながら……
そんなハーバーの姿に痺れを切らしたエヴァンはただ黙りこんでいるハーバーに向かって、
「……来ないなら私から行くぞ!ハーバー!
今すぐお前の首をここで吹き飛ばしてやる。
覚悟しろ!ハーバー!」
ダッ!
エヴァンは玉座に座ってるハーバーに向けて出向き剣を振るった。
ハーバーの間合いに入り、剣から音をたてる激しい電流をスパークさせながら……
だが剣を振るった瞬間、ハーバーはエヴァンの前で一本の人差し指を前に出した。
指に魔力を込め、彼エヴァンを迎え撃つかのように……
だがその指に込めた魔力はエヴァンの方に向かなかった。
目の前にいるエヴァンを横切り、一本の放った光はエヴァンの体を通り過ぎ真っ直ぐ違うところにいった。
そう、その光はなんとエヴァンによって鎖に拘束されたレオの元に向かった。
エヴァンはその通りすぎるその光を見て咄嗟に、
「レオ!!」
と名前を叫びレオの方を見た。
拘束されたレオに向かって放たれた魔力がレオの体を激しくスパークする。
そしてその魔力に呼応し冒されたレオの体は鎖に繋がれながらも悶え苦しみ鎖をガチャンガチャンしながらレオはその場を暴れだした。
そんなレオの苦しんでる姿を見てエヴァンはハーバーの行為に怒り狂った。そして、
「ハーバー!貴様!!」
と叫びレオにハーバーに向かってやめさせるようにハーバーに対してエヴァンは言った。
ハーバーはその状況を作り怒り狂ってるエヴァンに向かってこう言う。それは、
「吸血鬼化している今のレオは私の思いのまま支配できる。
そう、彼を生かし私の道具としてそのまま生かす事ができるか、それとも、彼の心臓を握り潰し脳神経にダメージを与え死を与える事もできる。
そう……
すべては何もかも私の手の平の上だ、エヴァン。
貴様も、そしてお前の可愛い弟子レオや、そして強者に命を握られ細々と生きていくしかない憐れな虫ケラどもの人間も、所詮私によって命を握られてるに過ぎない。
そうだ、私がお前達を殺さないからだ、エヴァン。
お前達人間の命は、いつでも簡単に殺す事が出来る。
だがただ単に殺すのはつまらないからな、エヴァン。
さあまず弟子を拘束している鎖を解除してもらうぞ、エヴァン。
そして手に持ってる剣を地面に置き、まずは目の前にいる弟子の餌となるがいい。
そして今度目覚めた時にはお前は完全に私の物になり、小賢しい呪法も消え、今度こそ再び私の優秀な下僕として生きるのだ。
さあ、解いてもらおうか、エヴァン。
でないと弟子が………
どうなるかわかるだろ、エヴァン」
ググッ……
「…………」
エヴァンはハーバーのレオに対しての脅しの行動を見て押し黙り苦しんでるレオの方を見た。
そしてそんなまたもや卑怯な手を使ってるハーバーに向かってエヴァンは、
「……またしても私に対して人質を取るのかハーバー。
ティファーにしろレオに対しても、一体どこまで私の心を翻弄する?」
エヴァンの言葉を聞いたハーバーは、そんなエヴァンに向かって、
「ずっとですよ、エヴァン。
お前に定めた時からずっと……
もう一度私の理想だった冷酷な昔の姿に戻してやる。
お前は私から離れられない……
私に目をつけられた瞬間からお前の運命は決まっている。
早くから魔族に故郷を襲撃され両親を亡くし、そしてたった一人血の繋がった弟も魔物に殺され、そして今尚お前がもっとも大切なレオを私の手で命を握られている。
そう、お前の人生その物が魔族に翻弄され奪われ続ける哀れな生き様だな、エヴァン。
結局お前は私にあがなう権利すらない。
……ククク。
さあその大切な物の為目の前で再び光景を見たくはないだろエヴァン。
さっきも言った通り、今自分が置かれている立場をわきまえ今すぐしてもらおうか、エヴァン。
でないとお前の手塩をかけた弟子の姿がどうなるかわかるだろうエヴァン。ククク……」
「…………」
エヴァンは下を向き黙った。
そしてこの時剣から発している魔力をとめ手に持ってる剣をその場で落とした。
エヴァンにとって大切な物を失うわけにはいかない。
自分の命より最優先に大切な者を守る。
そう、それは弟ミシュランを失ってからずっと……
彼にとって大切な者を人質に取られることはこの先ずっと犠牲にする事は出来す宿命つけられた呪いとも言えるかもしれない。
「……レオ」
エヴァンは呪法の鎖を解き拘束されてるレオの体を解き放った。
その場で落ちるレオの体。
落ちた瞬間レオはハーバーの魔力に支配された状態で赤い目でギッとエヴァンの顔を睨み付け、そしてそのままエヴァンの首をめがけて鋭い牙でエヴァンの喉元に噛みついた。
「っ……、レオ」
エヴァンの首からレオの鋭い牙によって赤い血がドクドクと流れ出す。
エヴァンはレオに押し倒されるように地面に倒れた。
血がレオの喉元にどんどんと中に取り込まれていく。
そしてその光景に呼応するかのようにエヴァンはこの時体に施された呪印が消え、赤い大きな月の下でそのままレオを抱き抱え、眠るようにその場で目を閉じた。
「……レオ、私は……」
赤黒い血のような月が二人の体を照らし合わせ光を差し込む。
そんなレオに対して抵抗もせず、その場で倒れたエヴァンに向かってハーバーは倒れてる二人の元に来て、
「……愚かな」
と吐き捨てるようなセリフを言い、そして、
「見捨てたらいい物よ、エヴァン。
所詮他人など足手まといでしかならない。
このような私に対していかに大切な者を守る為だとは言え自分のすべてを失い条件に従うなど私には到底理解できない事だがな、ハッハッハ……
さあ小賢しい呪印も消え、今再び吸血鬼として生を歩むのだ、エヴァン。
そして今一度私に従い、優秀なパートナーとして私と共に人間どもを混沌の世界へと誘いあうのだ。
さあ、立てエヴァン!」
ムクッ……
エヴァンはハーバーの声に答えるようにスクッと体を起こし目を開け動いた。
そしてハーバーはそんなエヴァンの姿を見て向かって前に手を出し、虚ろぎの目をしてるエヴァンに対して忠誠の証として自分の手にキスをしろと言った。
エヴァンは差し出された手に持ちキスをした。
そして虚ろぎの目で下を向き、ただ何もいわないままその場でじっとしていた。
ハーバーはエヴァンのそのような姿を見て誇らしげに顔をにやけ嘲笑った。
そしてただじっと動かぬ人形のようなエヴァンに向かってハーバーは、
「そうですよ、エヴァン。
私に反抗し抵抗している貴方も可愛いですが、やはり犬のように従っている貴方も素敵で可愛いです。
さあ、今度は貴方の出番ですよ、エヴァン。
そこで寝転がっている弟子のレオの命を喰らいなさい。
大切な者の命を奪えば貴方は完全な残虐で冷酷な吸血鬼となり昔のお前に戻れる。
誰も貴方に近寄れず孤島な昔の魅力的なエヴァンに……
さあ、今すぐそこで倒れている弟子の命を喰らえ、エヴァン。
さあ……」
ハーバーは横で倒れているレオに向かってエヴァンに今すぐ食い殺せと言った。
今、ここで愛する者を血を吸い本能のままに命を喰らえば、身も心も完全な魔物と化し真の吸血鬼となる。
エヴァンは再度下を向きうつむいた。
だがこの時そんな嘲笑いにやけているハーバーに向かってエヴァンは、エヴァンに対して命令を出してるハーバーに向かってボソッと口に出した。
それは、
「……レオの命を奪えだと?
死ぬのはお前の方だ!ハーバー!」
「何!?」
ガッ!
エヴァンはこの時ハーバーの手を強く握りしめ片手に魔法弾をぶつけようとした。
だが攻撃しようとした瞬間ハーバーはマジックバリアを発動し、エヴァンの攻撃を相殺した。
相殺した辺りには激しく爆風の風が舞い上がる。
ハーバーはそんなバルトスの呪法が消え吸血鬼化の能力でエヴァンが操り人形と化したはずだが何故か言う事がきかないエヴァンに対して疑問に思い動揺した。
だがそんな疑問に思っている瞬間すかさず爆風の背後からレオの拳から激しく炎をまとわせた手がハーバーの顔面を殴りハーバーはその場でぶっ飛んだ。
仮面が激しく割れ損傷するハーバー。
レオの攻撃はハーバーにとって予想だにしない攻撃だったのでまともに受け、レオ達にとってこの時初めての大ダメージをくらわせた。
壁に打ち付けられ倒れてるハーバーに対して二人は、どうして正気なのかとエヴァンは倒れているハーバーに向かって言いはなつ。それは、
「バルトス将軍の部隊がカルベロッカの地下の隠れ部屋から発見された小さなグラスのフラスコ。
その中には先代カルベロッカの女王、ヨハン=カルベロスの血が僅かではあるが保存されていた。
ヨハン=カルベロスの血は地下から一緒に発見された本では特殊な血液で、ありとあらゆる毒を中和しその毒の効力を大幅に半減させる事が出来るのだ。
私はその血を体に注入した。
いちかばちかどうなるかわからなかったが結果、こうして吸血鬼化を押え見事に私の血液を吸ったレオも正気を取り戻し元のレオに戻ったわけだ。
ただ、残念ながら私はお前を倒さないかぎり完全な人間の身体には戻る事は出来ないが……
それでもこうしてお前と戦える。
覚悟しろ!ハーバー!
お前は、ここで終わりだ!!!
そうエヴァンがハーバーに対して言い放つと、レオはエヴァンから合図を受けたかのように手に魔力をこめエヴァンと共に壁に打ち付けられているハーバーに向かって魔法を全力でぶつけた。
「!!!」
レオの炎と激しく火花が散ったエヴァンの電撃魔法がハーバーを襲う。
この時二つの魔法は重なりあった。
その魔法はまるでやっと互いに心を通い合わせ、卑怯にも二人の仲を切り裂き分断しようとした者への激しい怒りをぶつけるかのように………
二人の呪文がハーバーの前で炸裂し辺り一面を吹き飛ばした時、この時もう一度ハーバーに一撃を与えたかにみえた。
だがハーバーは強かった。
不意討ちでもない限り庭かではあるがダメージを負っていたとしてもこの時魔法を相殺しており、ハーバーは上空に舞い上がり二人の姿を見た。
そして仮面から漏れている怪しげな無数の目を手で隠しながらハーバーはエヴァンに向かって、
「……今日の所は退きましょう、エヴァン。
だが私は決してお前を諦めない。
私は狙った者は執念深いからな。
必ずやお前を闇の王にしてくれる。
それまではお前は……
また会いましょう、エヴァン」
フッ……
そうハーバーがエヴァンに対して言うと、ハーバーは空間移動でその場から消え、城は二人だけを取り残し静かな空間が漂った。
エヴァンは元に戻り横にいるレオに対してこう言った。それは、
「すまなかった、レオ。
君をこんな目にあわせて……
私は、私は……」
それを聞いたレオはうつむいてるエヴァンに向かって、
「いいんですよ、別に。
元の体に戻りひとまずハーバーを撃退したのですから。
それに先生の忠告をうけず連れまわしたのは俺の勝手です。
それよりお腹すきました先生!
何かお腹いっぱい食べたいです!
それからティファー王妃を救い、一緒にハーバーを倒しに行きましょう!」
そう謝ってるエヴァンに対してレオはスタスタと夜の町に向かい、ガランとした城を出て二人はその場を後にした。
そしてそれからまず二人はバルトスの所に行き一連の話をした。
エヴァンに投与したカルベロスの血液が他の吸血鬼化した者達に対してその血液を通して元の人間の体に戻す事ができる事。
それを聞いたバルトスはさっそくこの残ってる血液を培養し吸血鬼化したカルベロスの人々に対して明日にでも投与しようとエヴァンに向かって話した。
何から何まで動き、協力してくれるバルトス。そのバルトスに対してエヴァンは、
「バルトス将軍、すまない。
私はレオを……
王失格だな」
それを聞いた隣にいるエヴァンに向かってバルトスは、
「私こそすまなかった。
あの子にとって君は本当に大切な子なんだなエヴァン君。
私も母を、君みたいに自分の命をかけてまであの時抵抗していればまた違う考えがでたのかもしれない。
まるで過去の空いた心の穴をあの時の私の写し身を君の姿を見て埋めてくれたように……
…………
この近くに美味しい麺を取り扱ってる東洋のラーメンという物がある。
確かあの子も以前君が話していたように日本人とロシアのハーフの子だったな、確か……
ラーメンという物は日本人にとっても馴染み深い物だと思うが、一回二人で行ってみてはどうかね?」
そうバルトスが言うと、エヴァンにそのラーメン屋の場所を教え、エヴァンは腹をすかして待ってるレオを連れて二人で夜の中そのラーメン屋に向かった。