第5話 取引

文字数 1,298文字

ぺちゃぺちゃぺちゃ……

「……っ!!!

ハアッハアッハアッ……あぁ、陛下っ!」

ズズズズっ……ズズッ……

ハーバーの王室の目の前で餌の女性を犯し、首から血を吸い、意識を操られていたエヴァンの記憶。

そんな目の前に映っている記憶の中のエヴァンの姿は、青白い色をしており眼は真っ赤で我武者羅で獲物を貪り犯していた。

そして当の本人のエヴァンの意識はと言うと、その吸血鬼のエヴァンの前で冷や汗をかき息をきらしながらその場で体が思うように動けず、まるで金縛りになった状態で暗闇の空間で身動きできずにいた。

吸血鬼のエヴァンはそんな状態のエヴァンに囁くように言う。

「欲しいだろ、エヴァン……

喉が乾いて人間の生き血がもっと欲しいだろ、エヴァン。

欲望のままに女を犯し快楽に身を委ね、この国の吸血鬼の王としてもっともっと力をつけていくがいい。

そしてお前は私の右腕として、人間どもに恐怖を植付け戦争をおこさせ、世を乱し、争いの絶えない世界にするのだ」

それを聞いたエヴァンは苦悶の表情をしながら、目の前にいる吸血鬼のエヴァンに向かって、

「……誰がそんな、お前に手を貸すものか、ハーバー。

私達を解放しろ、ハーバー。

意識がなかったとはいえ私は、多くの国民やレオに手を出してしまった。

だが、まだバルトス将軍がかけてくれた封印の呪法がまだ効いている。

後、数日はもつ。

呪法が効いている間に、お前を……」


それを聞いた吸血鬼の姿をしたエヴァンは、フフンとした表情をし、金縛りにあってるエヴァンに向かって、

「それでどうしようと言うのだ、エヴァン。

そんな猪口才な人間のちっぽけな呪法で、私の能力を完全に遮断できるものか、まあいい……

いずれお前の意識はどうであれ、我が軍門に下り人間どもを脅かす存在になるのだ。

たかが人間どもの呪法で、どうこうしようなどと……

だがわかった。

あくまでも残された時間で私に歯向かって抵抗するんだな、エヴァン。

なら、お前の大切な、可愛い弟子を奪ってやる。

お前が意識がなかった時のレオを襲い吸血鬼にした愛弟子レオをな……」

……フッ

「!……レオ!」

エヴァンはハッとそこで目を覚め、夢の中から意識を取り戻した。

エヴァンが目を覚ました場所はレオが拘束され鎖で繋がれていた牢屋の前。

どうやらエヴァンはいつの間にかそこで意識を落ちレオの前で寝ていたようだ。

だがエヴァンの夢の中でハーバーがエヴァンに向かって話しが終わった瞬間、いつの間にか現実世界ではエヴァンの目の前にいたレオは鎖が外されいなくなっていた。

いなくなったレオの姿を見て声をあげ、弟子の名前を叫ぶエヴァン。エヴァンが声をあげレオを探していると、 何やらバルトス将軍の兵の皆が騒がしく、兵は皆武器を持ち、王室の中央広間で集まった。

何事だと思い急ぎ足で兵と同じく中央広場で向かおうとするエヴァン。

エヴァンが向かおうとするその先には、吸血鬼化してレオを取り押さえ体を担いでいる魔族の王ハーバーの姿がバルトス達の前で現れていたのだった。
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