エピローグ(現代)

文字数 503文字

2020年、拓也は62歳になっていた。
弘美と結婚し、二人の間には二人の子供が出来た。その子達も、もう大人だ。
あの後、拓也はIT系の会社に入り直し、それなりに出世もしたが、周りから見たら『平凡』と言われるような生活を送っていた。しかし、拓也は今のささやかな幸せに満足していた。

1960年代は、高度成長期と言われた時代だった。人々は豊かになったと言われる時代だが、貧富の差も激しかった時代でもある。
1990年代は、バブルが弾け、経済は混沌としていたが、様々な価値観が認められていく時代でもあった。
2020年代は、どうなっていくのであろうか。

拓也は思う。時代は単独ではない。そこまでに至る人々が積み重ねて変化していくのだと。愛があっても嘘をつかなければいけない時代もあった。子供達には素直に『愛している』と言える時代で生きて欲しいと願うばかりだ。

「あなた、今日の晩御飯は何にします?」
「お前の好きなものでいいよ。」
「そういうのが一番困るのよねえ…。」

弘美が小言を言いながら台所に戻っていく。拓也は苦笑した。
だって、仕方ないじゃないか。お前の好きなものは、俺も好きなんだから。


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登場人物紹介

斉藤拓也(さいとうたくや)

父親の病気をきっかけに、父親の過去を調べ始める。

木本弘美(きもとひろみ)

拓也の恋人。孤児だったが、現在は明るく評判のいい看護師。

斉藤隆(さいとうたかし)

拓也の父親。公務員。

小野美咲(おのみさき)<サキ>

「ミラージュ」のダンサー。

小林登(こばやしのぼる)

中島の同級生。

中島清太郎(なかじませいたろう)

隆の先輩。中学時代同じ部活(野球部)だった。

間宮潤子(まみやじゅんこ)<ジュン>

「ミラージュ」のダンサー。

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