教習所の幽霊

文字数 294文字

私は自動車教習所で、もう30年近く教官をやっている。
そんな中で、今日の教習生は稀に見る落ちこぼれだった。

第一段階は、16時間オーバー。
仮免発行の修了試験は、5回目でやっと合格。

そんな人間が今日、初めて路上に出るんだから、さすがに私も緊張する。
彼女が車に乗り込み、教習開始。
「次の交差点を左ね。」
「あ!右に曲がっちゃった!」

しばらくすると、事故が多発する道に来た。
以前事故があり、教習ルートからはずされた場所だ。

「君、一旦戻ろうか。」
そう促した瞬間、彼女はアクセルを全開にした。
「アンタ達がこんなところを教習ルートにしたせいで、私は死んだのよ!」

私達の乗った車は、勢いよく電柱にぶつかった。

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