25. 伯父の罪

文字数 1,124文字

 ミナルシア神殿に残ったシャナイアとミーアは、イヴとアンリのほかにもあと三人の修道女が使っている六人部屋にいた。今その部屋には、シャナイアとミーア、そして、仕事を終えて早めに戻ったアンリがいた。

 戻ってからというもの、アンリは元気がないように見えた。シャナイアが気使って何度か声をかけたが、作り笑顔をうかべて短い返事をするだけ。

 やがてそこへ、今度はイヴが帰ってきた。

 イヴはひどくだるそうな重い足取りで真っ直ぐにソファーへ向かい、崩れるようにそこに腰を落とした。

「お帰りなさい、イヴ。向こうはどうなの。」
 何があったのかと思いながら、シャナイアがきいた。 

「いろいろ話し合っていたみたいだけど、まだたいしたことは何も決めていないようだったわ。明日、また改めて具体的な話し合いをするんじゃないかしら。」

「レッドのところに行きたい。みんなに会いたいよ。」
 ミーアがベッドの上で足をバタバタさせながらぐずった。

 シャナイアは困ったようにほほえんで、ミーアの頭を()でてやった。
「レッドの邪魔になりたくないでしょ。もう少し、私と一緒に待ちましょうね。」

 イヴは、複雑というよりは不思議な気持ちでミーアを見つめた。レッドのことを慕うこの幼い少女は、彼にとても大事にされているのだというのが伝わってきて、顔がほころぶと同時に、ちょっぴりヤキモチを焼きたくもなる・・・。
 イヴはどうにもならない思いに苦笑し、それから浮かない顔の親友に視線を転じた。
「アンリ、おじさまの具合はどうなの。」

「良くはなったわ。それより、ノイローゼ気味な方が気がかりで。」アンリは、大きな重いため息をついた。「ねえ・・・おじさまは、どうなってしまうの。」

 気休めを言ってはいけない・・・と思い、イヴは黙って顔を曇らせた。

 リューイが関わった鐘楼(しょうろう)広場での出来事と、アンリが伯父(おじ)の屋敷の地下室で見たものとの関係。それについて詳しいテオは、ロザリオから受けた相談 ―― 彼の父であるグレーアム伯爵の異変 ―― についても関係があると、迷うことなく断定した 。それによって、アンリの伯父は、今回の怪事件の容疑者となっている。

 実際のところ、数年前に突然現れたその伯父とは、アンリは、修道女として会うまでずっと面識がなかった。だからそれほど親しいわけではなかったが、弱っている彼をその度に回復させてあげていた情があったし、会う時には伯父はいつも優しかった。あの日、様子がおかしくなった時でさえ。それに、母親のことが心配だった。彼は母の兄だから。

 アンリは複雑な表情で下を向いていた。

 イヴはソファーから立ち上がって、そんな親友にそっと歩み寄った。分からない・・・としか答えてあげられなかったが。



 

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