第10話

文字数 318文字

父が大切にしていた、椅子に座りながら
長い手紙を読み終えた。

何通もあったその手紙をゆっくり封筒にしまう。

ぽたぽたと流れ落ちる涙を止めることはできない。
何度も手で拭うけれど、それでも溢れ出す涙をとめる事はできなかった。

どうして

その言葉だけが頭を反芻する。

どうにもならない気持ちを、僕はどう吐き出せばいいのか。
これから先、どうやって生きていけばいいのか。

今の僕には、全くわからなかった。

春風が、窓の隙間から入ってくる。

古い家なので、隙間が沢山あったがこの時期の
隙間風は、心地よく
母が作った桜餅を食べながら、縁側でゴロゴロしていたことを思い出した。



父は、どうしてこの手紙を残したんだろう。

そう思いながら庭に咲いた散りゆく桜をぼんやり眺めていた。

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登場人物紹介

稲葉 玲  

39歳 

東京から離れた田舎で、一軒家を借りてエッセイを書いている

猫のチャイと2人暮らし



米田 コウ

29歳

写真家

今井ゆうこ

39歳

玲の元同僚

米田勇

54歳

玲の死んだ恋人

島田 美久

56歳

コウの叔母

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