第32話 新しいバイトの後輩
文字数 2,587文字
学校の授業の方で特に変わった事はなかったが、もう一人いた日本人の女の子が学校に来なくなった。多分自分からドロップアウトしたのだろう。
彼氏と何処かに行ったのかそれとも日本に帰ったのか。消息はわからなかった。
元々本気でデザインを勉強する気がなかったのかも知れない。特にこの国は誰でも入学は優しいが卒業は難しいと言われている。そこは日本とは正反対だ。
それに引き換え学生でバイトをする子は、まだ切羽詰まったものがあるので、女の子でも地味しな生活をしている子が多かった。
当時の話だが、日本人の間でピアノバーと言うものが流行り出していた。今で言えばカラオケにコンパニオンガールが付いたものと思えばいいか。
そう言う所で働いている女の子達の事は良くわからないが、彼女達もまた頑張っているんだろう。ただしそれでドロップアウトしてしまう子は別だが。
そう言う所は夜明けの3時4時までやっていたので、それで授業に出られるのかと言う問題もある。ヒロユキはそれをやり通したが。
その頃ヒロユキもバイトの方で要約100%に近づいていた。そんな時寿司カウンターと天婦羅カウンターを任されていたウエイターが辞めたので、ヒロユキが後を引き継いで遂に100%になった。
辞めた彼は勿論学生ではない。学生と言うには薹が立ち過ぎている。ちゃんとグリーンカードを持っていたし、こちらの日本のレストラン業界ではちょっと名の知られたウエイターだった。
何でも日本では役者だったとか。ただし彼はゲイである事でも有名だった。
それに彼は仕事がよく出来たので、噂では何処かに引き抜かれたのではないかと言う話だった。
そしてこの店でももう一つの引継ぎがあった。それはヒロユキと同じ苗字のマネージャーだが彼も辞めた。もしかしたらこう言う所には向かなかったのかも知れない。
そして新しくマネージャーになったのはこの店の仕入れをやっていた人物だった。彼とは何となく気が合ったので親しくなった。そして店が終わってから二人でよく飲みに行った。
そんな時だ、新しいバイトの女の子が入って来た。女の子と言ってももう20代後半だろう。しかしバイトの上では後輩が出来た事になる。
彼女もまたヒロユキの様にアメリカの南部、 North Carolina にいたとか。ちょっと細身だが健康そうではきはきした背の高い女性だった。
そんな所で何をやっていたんだと聞いたら住み込みのベビーシッターをやっていたと言う。そんな事でアメリカに来れるのか。
その辺りの事情はよくわからなかったが、それなりに色々あるんだろう。
そしてNYにはファッション関係の仕事をやりたくて来たと言っていた。ただしファッション・デザイナーではなくパタンナーになるんだとか。似たような状況なので好感が持てた。
初め彼女は何処かの安ホテルに泊まっていたが、店の近くで良いアパートが見つかったと言って、ヒロユキにその部屋を見せてくれた。
それはヒロユキの所の様なスタジオ・アパートだったが狭くて縦に長い部屋だった。何だかウナギの寝床の様な。
そこにミシンを置いて色々な物を縫って作品を作りたいと言っていた。それはまた裁縫のバイトにもなるだろう。
彼女はグリーンカードを持ていた。どうして手に入れたのかわからないが大したものだ。それなら働くのに何の問題もない。
それで店が終わってからよく二人で近くのバーやレストランへワインを飲みに行った。
ミッドタウンの 2nd Ave には遅くまで開いている店が一杯あった。基本的にヒロユキは禁酒してるが状況に応じては適当に飲んでいた。
ただし家では飲まないし、必要がなければ飲む事はなかった。
ところがか彼女が来てからは、マネジャーと飲みに行く事が少なくなったので、この頃何処に行ってるんだよとブーブー言っていた。
まさか男より女の方が良いに決まってるだろうとは言えなかったので適当に胡麻化していた。
ただ飲むにしてもいつもグラス一杯だけにしていた。そこにはまだ禁酒を守りたいと言う気持ちがあったのだろう。
飲んだ時点でもう禁酒ではないのだが、それはまぁ良いとしよう。(もう一つ禁断のリンゴはどうや)(いるか)
それで彼女とは結構親しくなったんだが、その頃この店がもう一軒新しい店を出した。
そこは比較的若い客層を狙った居酒屋だった。そこに彼女がウエイトレスとして引き抜かれてしまった。
そこはウエイトレスも若い子で仕切るんだとかで、そのまとめ役として彼女が本店から抜擢された様だ。こっちはババーばっかりだったから。(ごめんなさい)
お陰で夜のデートが出来なくなってしまった。もっとアタックを掛けておけば良かったと思ったが遅過ぎた。(ほんまアホやな)
そんな時だ、辞めたウエイターからヒロユキにコンタクトがあった。「一度会わないか」と。
それで会ってみると「ヒロちゃんどうだろう、こっちの店に来てくれないかな」と言う話だった。
そのレストランの場所は比較的ヒロユキのアパートの近くだった。これなら歩いても行ける。
そしてその店は滅茶苦茶忙しいらしい。だから普通のウエイターでは役に立たないんだと言った。でもヒロちゃんなら出来るだろうと。
ヒロユキはその話の後一度その店に食べに行ってみた。確かに忙しそうだ。物凄く流行ってた。
これなら普通の回転では追いつかないだろうなと思った。まるで夜中のコーヒーショップの様に。でも自分ならこなせると思った。
ウエイターは現在3人でもしヒロユキが入ると4人になる。
まるであの夜中のコーヒーショップと同じじゃないかと思った。その中の一人が先輩格で、バーカウンターでカクテルも作れると言っていた。
そう言う意味ではヒロユキも出来る。ヒロユキも深夜スナックでバーテンダーをやらされた経験がある。
そして彼の紹介でその店のオーナーに会ってみた。気さくな人だが仕事になると厳しそうな気もしたが遣り甲斐はありそうだ。
それでヒロユキはこの仕事を受ける事にした。
ただしその為にイーストサイドに行く事がなくなってしまったので、彼女とはとうとうそれっきりになってしまった。
ここでもヒロユキはまた失恋をしたんだろうか。やはりヒロユキにはそっち方面の縁がない様だ。
(言うたやろう、あんたには縁がないって)(ほっとけ)
彼氏と何処かに行ったのかそれとも日本に帰ったのか。消息はわからなかった。
元々本気でデザインを勉強する気がなかったのかも知れない。特にこの国は誰でも入学は優しいが卒業は難しいと言われている。そこは日本とは正反対だ。
それに引き換え学生でバイトをする子は、まだ切羽詰まったものがあるので、女の子でも地味しな生活をしている子が多かった。
当時の話だが、日本人の間でピアノバーと言うものが流行り出していた。今で言えばカラオケにコンパニオンガールが付いたものと思えばいいか。
そう言う所で働いている女の子達の事は良くわからないが、彼女達もまた頑張っているんだろう。ただしそれでドロップアウトしてしまう子は別だが。
そう言う所は夜明けの3時4時までやっていたので、それで授業に出られるのかと言う問題もある。ヒロユキはそれをやり通したが。
その頃ヒロユキもバイトの方で要約100%に近づいていた。そんな時寿司カウンターと天婦羅カウンターを任されていたウエイターが辞めたので、ヒロユキが後を引き継いで遂に100%になった。
辞めた彼は勿論学生ではない。学生と言うには薹が立ち過ぎている。ちゃんとグリーンカードを持っていたし、こちらの日本のレストラン業界ではちょっと名の知られたウエイターだった。
何でも日本では役者だったとか。ただし彼はゲイである事でも有名だった。
それに彼は仕事がよく出来たので、噂では何処かに引き抜かれたのではないかと言う話だった。
そしてこの店でももう一つの引継ぎがあった。それはヒロユキと同じ苗字のマネージャーだが彼も辞めた。もしかしたらこう言う所には向かなかったのかも知れない。
そして新しくマネージャーになったのはこの店の仕入れをやっていた人物だった。彼とは何となく気が合ったので親しくなった。そして店が終わってから二人でよく飲みに行った。
そんな時だ、新しいバイトの女の子が入って来た。女の子と言ってももう20代後半だろう。しかしバイトの上では後輩が出来た事になる。
彼女もまたヒロユキの様にアメリカの南部、 North Carolina にいたとか。ちょっと細身だが健康そうではきはきした背の高い女性だった。
そんな所で何をやっていたんだと聞いたら住み込みのベビーシッターをやっていたと言う。そんな事でアメリカに来れるのか。
その辺りの事情はよくわからなかったが、それなりに色々あるんだろう。
そしてNYにはファッション関係の仕事をやりたくて来たと言っていた。ただしファッション・デザイナーではなくパタンナーになるんだとか。似たような状況なので好感が持てた。
初め彼女は何処かの安ホテルに泊まっていたが、店の近くで良いアパートが見つかったと言って、ヒロユキにその部屋を見せてくれた。
それはヒロユキの所の様なスタジオ・アパートだったが狭くて縦に長い部屋だった。何だかウナギの寝床の様な。
そこにミシンを置いて色々な物を縫って作品を作りたいと言っていた。それはまた裁縫のバイトにもなるだろう。
彼女はグリーンカードを持ていた。どうして手に入れたのかわからないが大したものだ。それなら働くのに何の問題もない。
それで店が終わってからよく二人で近くのバーやレストランへワインを飲みに行った。
ミッドタウンの 2nd Ave には遅くまで開いている店が一杯あった。基本的にヒロユキは禁酒してるが状況に応じては適当に飲んでいた。
ただし家では飲まないし、必要がなければ飲む事はなかった。
ところがか彼女が来てからは、マネジャーと飲みに行く事が少なくなったので、この頃何処に行ってるんだよとブーブー言っていた。
まさか男より女の方が良いに決まってるだろうとは言えなかったので適当に胡麻化していた。
ただ飲むにしてもいつもグラス一杯だけにしていた。そこにはまだ禁酒を守りたいと言う気持ちがあったのだろう。
飲んだ時点でもう禁酒ではないのだが、それはまぁ良いとしよう。(もう一つ禁断のリンゴはどうや)(いるか)
それで彼女とは結構親しくなったんだが、その頃この店がもう一軒新しい店を出した。
そこは比較的若い客層を狙った居酒屋だった。そこに彼女がウエイトレスとして引き抜かれてしまった。
そこはウエイトレスも若い子で仕切るんだとかで、そのまとめ役として彼女が本店から抜擢された様だ。こっちはババーばっかりだったから。(ごめんなさい)
お陰で夜のデートが出来なくなってしまった。もっとアタックを掛けておけば良かったと思ったが遅過ぎた。(ほんまアホやな)
そんな時だ、辞めたウエイターからヒロユキにコンタクトがあった。「一度会わないか」と。
それで会ってみると「ヒロちゃんどうだろう、こっちの店に来てくれないかな」と言う話だった。
そのレストランの場所は比較的ヒロユキのアパートの近くだった。これなら歩いても行ける。
そしてその店は滅茶苦茶忙しいらしい。だから普通のウエイターでは役に立たないんだと言った。でもヒロちゃんなら出来るだろうと。
ヒロユキはその話の後一度その店に食べに行ってみた。確かに忙しそうだ。物凄く流行ってた。
これなら普通の回転では追いつかないだろうなと思った。まるで夜中のコーヒーショップの様に。でも自分ならこなせると思った。
ウエイターは現在3人でもしヒロユキが入ると4人になる。
まるであの夜中のコーヒーショップと同じじゃないかと思った。その中の一人が先輩格で、バーカウンターでカクテルも作れると言っていた。
そう言う意味ではヒロユキも出来る。ヒロユキも深夜スナックでバーテンダーをやらされた経験がある。
そして彼の紹介でその店のオーナーに会ってみた。気さくな人だが仕事になると厳しそうな気もしたが遣り甲斐はありそうだ。
それでヒロユキはこの仕事を受ける事にした。
ただしその為にイーストサイドに行く事がなくなってしまったので、彼女とはとうとうそれっきりになってしまった。
ここでもヒロユキはまた失恋をしたんだろうか。やはりヒロユキにはそっち方面の縁がない様だ。
(言うたやろう、あんたには縁がないって)(ほっとけ)