4◆気持ちの良いこと

文字数 288文字

 まっすぐ自分を見つめるサファイアの瞳に琶右(わつき)は改めて見惚れる。
 そして抵抗する意思が薄らぐとそのまま瞼を閉じた。

 それを合意とみなしたアリエルは、すぼめた唇を耳に寄せそっと息を吹きかけるように囁く。

「それじゃ、はじめましょう」

 琶右(わつき)は音を殺して唾を飲み込む。
 だがその先の言葉は予想したものとちがっていた。

「とってもとっても気持ちの良くしてあげる。
 あたしの『耳掃除』でね」

 開かれた瞳には、悪戯っぽく表情を崩すアリエルが写った。
 先ほどまでの澄まし顔はどこにもなく、琶右(わつき)はどちらが彼女の本性なのだろうと疑うのだった。
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