3◆夢の中

文字数 684文字

「あの、これ、ひょっとして夢なんですか?」
 自分でも突拍子のないことを言っていると思ったが、それでも琶右(わつき)はそう尋ねずにはいられなかった。

 夢の登場人物に「あなたは私の夢ですか?」と聞いているようなものだ。
 夢の人物が正答を示すとは思えない。夢でないなら「あなた大丈夫?」と正気を疑われることになる。
 普通なら彼女とてそんな質問はしないが、自らに起きた変化や周囲の環境を省みるにそう判断せざるをえない。

 琶右(わつき)の願望が反映されたかのように、アリエルは彼女の推理を肯定した。

「そうね、そんな感じの場所かしら。
 現実ではない、非現実的などこか……。
 人が肉体を持って入れない場所(ここ)を『夢』と扱うのは正しい判断かもしれないわね」

「だったら……」
 琶右(わつき)は言い掛けた言葉を喉で溶かした。

 目覚める方法を聞きだそうとして辞めたのだ。

 夢から覚めたところで、別段良いことがあるわけでもない。
 そう考えると、一気に脱力し、自分の置かれてる状況がどうでもよくなった。

「それにしても私がこんなエッチな夢を見るなんてね。ストレスが爆発したのかな?」
 アリエルと自分の破廉恥な姿を改め、琶右(わつき)は苦笑した。
 アリエルはそれに「そうかもね」と短く合わせる。

 そして「落ち着いたみたいだし、そろそろはじめましょう」と琶右(わつき)にハグをして誘った。

「はじめるってなにを?」
「も・ち・ろ・ん。と~っても気持ちの良いことよ」
 妖精の如き美を持つ少女は、それまでとは少し異なる含みのある笑みを浮かべた。
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