エピローグ

文字数 453文字

 私の唐揚げ屋さんでのドラマはこうして最終話を迎えた。初めてにして、かなり強く記憶に刻み込まれたアルバイトだった。こうして文章にまでしているのだから、私がここでの経験をどのくらい大事にしているかが分かるかと思う。
 私は辞めた後、一度も唐揚げ屋さんに行っていない。あの味が恋しくなる時もあるが、ダイエットを口実に後ろを振り返らないようにしているのかもしれない。
 たまに私の常識を外れた言動を見せるけど、お店を守るために表に出さずとも懸命なオーナー。我流を突き通すけど、どうしても根の優しさが滲み出る女の先輩。頑固なところがあるけど、人一倍気配りのできる男の先輩。私が辞めた後、一回くらいは私の話をしてくれたかな。生意気な新人以上の印象はあっただろうか。いつか何かを成し遂げたときには、あの時バイトに求めていた何かが見つかった時には、自分のなりたい大人になれたときには、報告ついでに唐揚げを食べに行きたい。このたった半年のバイトが私の脳に残り、体に染みつき、心に響いている。唐揚げを一口食べた、その音と一緒に。
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