『月のように穏やかに』

文字数 253文字

夜風をうけて
野草がかすかに揺れている
傍らに少女が眠るベッドの上
私は腰を下ろして見上げていた
自ら輝く幾つもの星の中で
恒星ではない月が
ひときわ大きく照らし出されているのを

少女の頬には 涙のあと
夜ごと強まる吐き気と恐怖
自らなす術のない苛立ちと
抗いきれない虚しさを
私も少女も抱えていた

「お月さま、きれい」
暗闇の病室に
涙目でそっと呟いた少女の
美しい心が浮かび上がる

月のように穏やかに
やがて来る朝日を羨むことなく
たとえ自ら輝けなくとも
人を惹きつける力はあるのだと
自分自身を抱きしめて

始まる今日よ
切ないほどに
晴れろ!空!
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