『NICUの音楽』

文字数 393文字

心電図モニターが
高音のリズムを打つ
合わせるように
低めの呼吸器音が重なる

まだ1年余りしか生きていない
小さな胸が一生懸命上下している

彼にとっては命の音
私が耳を傾けている音
それなのに
なんて無機質な音

音と連動するように
細かに並ぶ数字の列
簡単には割り切れない想いが溢れる

今朝もNICUに足を踏み入れ
きみの頭をなでる
すると、真っすぐに視線を私に寄せた

昨日は大変だったんだよ
ここで一晩頑張っていたんだ
そう言っているように見えた

きみが大好きなのに
私は家で惰眠を貪っていた罪悪感に苛まれる

気休めだろうか。
きみの枕元に置かれたオーディオから
優しいインストゥルメンタルを流す

この曲がお気に入りだよね
音楽に反応するように
きみは優しいまなざしを向けるもの

その表情は私に潤いを与えてくれ
一瞬、無機質な音が遠のく

厳しい現実をも包み込んでいく
きみの強さを感じる

無機質な空間の色を変えていく
きみのうたごえが聞こえるようだ
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み