【02】

文字数 1,732文字

翌日。
マイは自宅に帰った途端、制服も脱がずにベッドに横になった。

今日学校で、些細なことでアヤと言い争いになったのだ。
何故そんなことになったのか、思い出せない程些細な理由だった。

2人が険悪な雰囲気になったので、慌ててユイが間に入って事なきを得たが、マイは今でもムカついて仕方がなかった。

――あいつ、マジでハブってやろうか。
――ああ、ムカつく。けど、アヤなんかのせいで、気分悪いまま過ごすのも嫌だし。ゲームでもしよっと。
マイはポケットからスマホを取り出した。

***
――ちょっと。待ってよ。私またこっちに来ちゃったの?
――嫌だ。もう帰りたい。帰ったら、もう絶対スマホ見ない。

――あ、でも駄目だ。あっちのあたしは、こっちのこと全然覚えてなかった。
――そしたらまたスマホ見ちゃうよね。

――どうしよう。昨日どうやって出たんだっけ?
――そうだ。バッテリー切れそうになったんだ。

――あ、でも結構充電残ってたっけ。
――どうしよう。

マイがそんなことを考えている時、1つの浮遊物が体に触れた。

――なにこれ?グループラインじゃん。ハブマイ?
マイは恐る恐る中身にアクセスしてみた。

アヤ:じゃじゃん。新しいグループライン立ち上げまーす。
ユイ:なになに?

アヤ:マイの奴をハブるラインでーす。
ユッキー:おもしれー。マイ、マジムカつくからハブっちゃおーぜ。
ヨーコ:それ受ける―。

アヤ:でも急にハブると、ぎゃあぎゃあ騒ぎそうじゃん
ユッキー:いえてる。いえてる
ユイ:ほいで、どうすんの?

アヤ:だからさー。本人気づかないように、徐々にハブろーぜ
ヨーコ:それ受けるー
ユイ:賛成
ユッキー:サンセー

アヤ:気が付いたらハブられてましたーとか
ユイ:あいつ結構嫌われてっから、あたしらがハブると友達いないくなるんじゃね?

ユッキー:自殺したりして
アヤ:そんなん、こっちの知ったこっちゃねーわよ
ヨーコ:それ受けるー

***
アヤ:あいつ今日、何て言ったと思う?
ユイ:なになに?

アヤ:スマホになって、1日中TikTok見たいんだって
ユッキー:バカじゃねえの

ユイ:マイは疑う余地のないバカだと思います
ヨーコ:それ受けるー

***
アヤ:段々マイも気づき始めたかな?
ユイ:今日険悪だったもんね

ユッキー:あんた何で止めたん?
ユイ:もうちょい、いたぶりたいじゃん
ヨーコ:それ受けるー

***
――何よこれ?どういうこと?
――あいつら、寄ってたかってあたしをハブろうとしている訳?

――ぜってー許さん。明日学校行ったら、アヤの奴、ボコボコにしてやる。
――それより、このライングループ入れないかな?

マイは自分に纏わりついたものを、あちこち触ってみる。
すると、どこからか声が聞こえた。

『※※アプリが、あなたの位置情報へのアクセスを求めています。許可しますか』

――何これ?許可だ。許可。
すると突然漂流物の手ごたえが変わり、マイはそれの情報にアクセスできるようになっていた。
――やったじゃん。アヤの奴。見てろ。

***
マイ:おまえら、あたしに隠れて好き放題やってくれてんな
アヤ:なにこれ?

マイ:アヤ、てめえ、小学生の時にあたしにボコられたの忘れた?
アヤ:何でマイがいんの?バグ?

ユイ:ちょっと、これ変だよ
ユッキー:これやばくね?
マイ:ヨーコ、お前、受けるーって言わねえのか?

(全員沈黙)

マイ:まあ、いいや。明日学校行ったら、全員ボコってやんからよ
アヤ:ちょっと待ってよ。マジでマイなん?

マイ:そうですけどー
アヤ:何で?何でマイ入ってんの?そんなのおかしいじゃん

マイ:うるせえよ。それよりアヤ。明日学校休んでも、お前んちまで行くからな

***
「ははは。ビビってやんの。すっきりしたあ」
マイは自分がどこにいるかも忘れて、有頂天になっていた。

しかしその時マイは、自分が地獄に足を踏み入れたことに気づいていなかった。

***
「あれ、ゲーム終わってる。どうしたんだろ?」
「マイ。ご飯よ」
下から母の呼ぶ声がした。

***
「何か、今日アヤたち変だったな。どうしたんだろ?」

学校から帰宅したマイは、アヤやユイの様子が変だったので、ちょっと変な気分を味わっていた。

皆よそよそしくて、自分を怖がって避けているような気がしたからだ。

「まあいいや」
そう言うとマイは早速スマホを手にする。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み