第12話 私的読書体験(2)

文字数 764文字

 アプリゲームの「ブルーアーカイブ」のイベントストーリーやメインストーリーが更新されるたびに、YouTubeの実況動画を三軒くらいはしごするのですが、なにかといろいろ発見があってとても面白いです。どう考えても物語の需要のされ方というか、物語の読み込み方が変化しているように感じられます。結論から申し上げますと、

「こういった、セリフや描写間の改行がとても重要」だという事に気づかされます。

 これがなぜかというと、読者はこの行間で様々な操作? を、行っているように見えるからです。
① 今後のストーリーがどのような展開をしていくか、予想する。
② その背後にあるコンテクストを裏読みする。
③ キャラクター性にマッチングしている状況なのか、審査する。(解釈一致)
④ 実体験に引き付けて共感する。
 これは正直すごいです。一行一行ここまで複雑な操作をすると大分こころのカロリーを消費するのではないか。比較しますが、文芸小説を読んでいる人間はここまでじっくりと、行間で作業してないと思います。下手したら風景描写なんて飛ばし読みしたりする。「はいはい、ここは時間経過が表現できれば良い場面ですよね」みたいな感じに。あと、サルトルの吐いたゲロに対して、「分かる」とか、「あるある」なんて共感しないです。全部読み終えた後に背表紙を閉じ、「あれ? 私は今ものすごい体験をしたぞ? なんだこれ」となって、言語で書かれているものを読み終えたはずなのに、体験そのものを言語化できないという地平にポツンと立っている。そもそも良い文芸小説にぶち当たると、最初の50ページぐらいはどう読んでいいのかすらわからなくなるという、変な混乱のなかに「投擲」される、というのが正直な印象です。意外かもしれませんが「異世界転生」は小説体験の根源的な部分を付いていると思います。
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