第七夜「女の子と女の子」

文字数 1,317文字

 りんは、サキちゃんのおうちに、おとまりして、サキちゃんといっしょのおふとんで、ねていたはずなのに。おててつないで、ねていたはずなのに。

 ここ、しってる。ようちえんのうらのおやま。えんそくで、のぼったことある。
 なんでここに、りんひとりで、パジャマのままでいるの? サキちゃんはどこいったの?

 やまみちのいりぐちに、やじるしがふたつあって、なにか、かいてある。

「サキちゃんのおよめさん」
「ユースケくんのおよめさん」

 りんは、サキちゃんがすき。サキちゃんも、りんのことすきだって。だから、ようちえんではいつもいっしょ。
 おとなになったらけっこんしようね、とサキちゃんとやくそくしてる。
 でも、そのことをママにはなすと「おんなのこどうしは、けっこんできないのよ」という。パパは「まあ、ずっとおともだちでいられればいいんじゃない?」とわらう。
 ときどきママは「おとこのこともあそんだら?きんじょのユースケくんとか、やさしくていいこよ。」という。
たしかにユースケくんは、いいおともだち。でも、おともだちは、おともだち。サキちゃんをすきなのと、ちょっとちがう。
 りん、おかしいのかな。おんなのこをすきになっちゃ、いけないのかな。

 なきそうになりながら、やじるしをみていると、いつのまにか、となりにぶたさんがいた。
「ねえ、ぶたさん、ここはどこ? あなたはなんで、ここにいるの?」

「こんばんは。ここは、りんちゃんの夢のなかだよ。ボクは、えらぶー。迷っている子供たちと、お話するのが、ぼくの仕事。」

「どうしてりんのゆめのなかにいるの?」
「大切な子を探しているんだ。」
「みつかるといいね。わたしも、すごく、たいせつなこがいるんだ・・・でも・・・」
「どうしたの?」
「うん、りんのすきなこは、おんなのこなの。へんかな?」
「そんなことないよ。りんちゃんは、どうしたいの?」
「わたしはサキちゃんのおよめさんになりたい。でも。ママはだめっていうし。どうしたらいいか、わからない。」
 おめめから、なみだがポロポロこぼれて、とまらなくなっちゃった。

 りんがなきやんだら、ぶたさんがいった。
「じゃあ、おめめをつぶってごらん。」
「えーと、こうかしら?」
「そうそう。なにか、みえた?」

「あ、みえた。トラックにのってる。」

「そう。じゃあ、だいじょうぶだね。」
「りん、よくわからない。」
「りんちゃんは、ワガママでいいんだよ。おやすみ。」

 ママには、「ワガママはいけませんよ」とおこられるけど、いいのかな。むずかしくてわかんない。ムニャムニャ・・・


 あれ、いま、ゆめをみていたのかな?
 りんのめのまえでは、サキちゃんがすやすやねている。
 よかった。おてて、つないじゃおう。ほんと、よかった。 
 ムニャムニャ・・・


 ちっちゃいトラックのうしろのせきに、おとなになった、りんとサキちゃんが、ならんですわっている。トラックは、おひっこしの、にもつをいっぱいつんでいる。 
「これから、りんちゃんといっしょにくらすの、すごくたのしみ。」とサキちゃんがいってくれた。
「もうすぐつくよー」
 おひっこしのてつだいと、トラックのうんてんをしてくれたユースケくんが、おおきいこえで、おしえてくれた。
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