2.招かざる来訪者

文字数 7,460文字

 手に取ったレジャーシートのタグに二人用と書かれているのを、ぼんやりと眺める。
 普段、一人で星空の写真を撮る時は、レジャーシートではなく簡易な折り畳み椅子を使っていた。その横に三脚を立てて、道具は直置き。男一人だ。中身さへ綺麗ならそこまで汚れなど気にしたことはなかった。しかし、今回は勝手が違う。人数からして二人増えて三人。男二人に女性が一人。俺が椅子で、二人がシートに座ってもらうか。
 そう考えて、手に持ったシートを買い物かごに入れようとしてハッとする。
――いや、ダメだ、ダメだ!それじゃあ、いかんだろう!!
 頭を振って、シートを素早い動きで元の場所へと戻した。
 何がダメかって、そこに座る二人に問題があった。
 俺以外の参加メンバーが、瀬戸内智也と高取七穂なのだ。幼馴染二人。表向きは大した問題でもないが、俺の心の内的に大問題だった。ただでさえ高取さんへの恋心で疑念を抱いている友を、わざわざピッタリ寄り添うような構図に持ち込んでどうするのか。恋敵(かもしれない)相手に塩を送るような真似は出来れば阻止したかった。そうなったら、もはや月の観測も、星空撮影もあったものではない。
 そもそも事の発端は、本日の午前中だった。

「――星空の写真って、どこでもこんなに綺麗に撮れるものなの?」
 近々部活に提出する写真を選ぼうと、休み時間に机に広げた星空の写真。
 その一枚を手に取って、不意に高取さんがそんな質問をしてきた。
「いや、どこでもってわけじゃないよ」
 ちらりと高取さんの手に持つ写真を見る。それは冬休みに寒さと戦いながら何とか撮った、ここら辺では少し高い山での一枚だった。テントを張って、ほぼ徹夜で挑んだだけあって、俺も気に入っている一枚だった。
「やっぱり、空気が澄んでいる方が綺麗に撮れるし、人口の光が少ない方が星がたくさん見えて綺麗に撮れるよ。今持っているのも、山の上で冬に撮ったものだし」
「なるほど。確かに、冬の方が花火も綺麗に見えるって言うものね」
 納得しながら差し出して来た写真を受け取り、頷き返す。
「そうだね。花火の写真も冬は綺麗に撮れるね」
「そうそう」
「けど、七穂の撮った花火の写真って、ほぼぶれていて何が映っているのか分からないよな」
 ぼそりと別の写真を眺めながら呟いた智也の脇腹に、高取さんの拳が飛ぶ。勢いはさほどないが、そのままぐりぐりと拳を捻ると智也の顔が歪んだ。
「ぶはっ?!や、やめろ!ふはっ、脇腹はやめろって!」
 必死で振り払うが、高取さんの拳はそれを全て避け、尚も突進む。拳は今や、グーからパーに変わっていた。
「ふふん。智也は脇が弱いのよねー」
 そう言うとスッキリしたのか、パッと手をどけた。
「……油断した。七穂の悪口を言う時は、脇を締めてからっていうのを、すっかり忘れていた」
 勝ち誇る高取さんを、半分涙目になりながら智也が恨めし気に睨みつける。
「まったく……」
 ブツブツと文句を言いつつ、智也は身を捩らせた際手から飛んで行った写真を席から腰を浮かせて拾い上げた。机の上に戻されたそれは、夏休みを利用して小笠原諸島へ行き撮影した一枚だった。日本の中でも比較的美しい星空が見えると評判の場所で、素人の俺でもプロ並みの素晴らしい写真が撮れた。非常に満足している一枚だ。
 それも提出に入れようと手に取ると、高取さんが覗き込んできた。急な接近に、俺の心臓がトクンと一つ跳ねる。
「うわぁ!綺麗な写真!ここにある中でも、一番星が多いんじゃないかしら。これ」
「これは小笠原諸島へ夏休みを利用して、写真を撮りに行った時のものだよ」
 鼓動の速さを一切表情に出さない様に注意しつつ、何でもないように説明をした。
「へぇー。やっぱり凄いね、笠間くんは。行動力あるよ。いいなあ。私も行ってみたいなあ」
 羨ましげに写真を眺める高取さんは、とても可愛らしく俺の目に映る。
 ドキドキと煩い心音に、体が熱くなるのを感じた。それが顔に出ていないか気にしつつ高取さんを見ていると、不意に視線がこちらへと向いた。
「!」
「ねぇ、ねぇ。もしかして笠間くんて、比較的近所にある星が綺麗に見える場所を知っていたりするの?」
 高取さんが少々身を乗り出したせいで、より体が近づく。
 更に跳ね上がった心音に、質問へ一拍置いてから口を開いた。
「そ、そうだね。知っていると思うよ。全部ってわけじゃないだろうけど」
「じゃあ、今度案内してよ」
「え?」
 高取さんの言葉に、数回瞬きを繰り返した。
「みんなもうすぐ卒業して、ばらばらになっちゃうでしょ?その前に、皆で見に行こうよ。テント貼ってさ。キャンプとかしても良いと思うの」
「七穂を溺愛する、おじさんがキャンプなんて許可するとは思えないね。しかも、男二人に女一人で」
 キラキラと目を輝かせて言う高取さんに、智也が眉間に皺を寄せてぼやく。
 自分としては嬉しい半分、困惑半分の提案に複雑な心境だった。
「智也の言う通り、多分キャンプは無理だよ。いくら三月といっても、夜に冷え込む時はあるし……」
 高取さんとのキャンプは嬉しいが、泊まり込みとなると緊張し過ぎて何か減滅されそうな失態を演じそうで正直怖い。できれば諦めてくれる方向に流れて欲しかった。
 しかし、当の高取さんは非常に乗り気だ。
「大丈夫!寒さぐらいどうってことないわ。普段から陸上の部活で鍛えていますからねっ」
 そう、根っからのスポーツ少女の高取さんは、陸上部に所属していた。大学も、スポーツ特待生という枠で地方の有名な私立大に決めていた。
「それに、麻里(まり)ちゃんを誘うから、智也の方も問題ないわ」
「ああ。あの、お前とは全く正反対な大人っぽい女子生徒ね」
「麻里ちゃんは特別よ。私の自慢の友達なんだから、何を言われようと気にならないわ」
 ふふんと鼻を鳴らす高取さん。
 彼女の言う『麻里ちゃん』とは、同じクラスメイトの有田麻里(ありたまり)のことだ。スラッとしたとても背の高いモデル体型美人で、顔立ちも整っており瞳が大きく可愛らしい高取さんと並ぶと、大人っぽさがさらに際立っていた。立ち振る舞いにも非常に品があり、どこかのお嬢様ではないかと噂が立つほどだ。しかしそれは高取さんによって否定されており、俺たちはごく普通の家庭の子だと言うことすでに知っていた。
「でも、有田さん来るかな?ちょっと話した感じだと、彼女割とリアリストっぽかったけど」
「ま、まあ、思考的に現実主義なところがあるのは認めるわ。でも、私が説得するから大丈夫よ!だから、笠間くんは良さそうな所を決めておいてね。あ、あと、何か持って行く必要があるものがあったら、後で教えてね」
 そう言うが早いか、意気揚々と自分の席へ戻っていった。
「……おい、おい。俺たちへの参加意思確認はないのかよ」
 大袈裟な智也の呆れ声に、俺は思わず吹き出していた。

 そんな高取さんの意気込みも空しく、その日はピアノの先生との先約があるとあっさり有田さんには断られたのだった。
 結局、俺と智也と高取さんの三人で行くことになり、今にいたるわけだ。
 ちなみに、高取さんのお父さんは、高取さん自身が説得したそうだ。まあ、高校最後の思い出だからと言われれば、溺愛する娘の頼みでは中々断れないだろう。それに、おじさんからの信頼も厚い智也が一緒なのだ。
「まあ、みんな椅子でいいか」
 そうぼやくと、俺は折り畳み椅子売り場へ移動。二脚の椅子を手にレジへと向かったのだった。後は、今手元にある道具で足りるだろう。どのみち、本格的に写真を撮るのは自分だけだろうし。
「……スマートフォンとかで、星空を綺麗に撮る方法もレクチャーした方がいいのかな?」
 そんなことをぼやきつつ、支払いを済ませホームセンターを出た。
 自転車置き場に置いた紺色の自転車の籠へ、先程購入した商品を入れる。鍵を外すと乗らずに押して、店の前の大通りへ出た。そのまま駅へ向かって転がし続ける。
 背負っていたリュックの片方の肩ひもを外し、中からスマートフォンを取り出した。カメラアプリを開き、いつも夜空を撮影する設定を確認していく。最近はもっぱらデジカメの一眼レフで撮影していたため、皆に教えられるか不安になったのだ。心配する必要もなく、俺の頭と体は覚えていた。これなら、大丈夫そうだ。明日、二人のスマートフォンで確認しておこう。もしかしたら、機種の違いから設定方法が違うかもしれないので念のため。
 そんなことを考えつつカメラアプリを閉じた時だった。
「きゃっ。な、何なのこの人!!」
 不意に行く先から女性の悲鳴が上がった。悲鳴はそれだけにとどまらず、男性のものも雑じっている。
「は?おっさん、ちょっと何言ってるかわかんねぇよ」
 恐怖の雑じった若者の声が聞こえたのと丁度同じタイミングで、俺は顔を上げ声のした方向へと視線を向けた。
そうして俺は、絶句した。
「――っ?!」
 そこにいたのは、下着のボクサーパンツただ一つを身につけた、ほぼ裸体の成人男性だった。その体はガリガリに痩せ細り、土気色の肌に骨の形がそれとわかるほどくっきりと浮かび上がっていた。
 そんな男性が、フラフラとおぼつかない足取りで駅のロータリーを彷徨っている。そして、通りかかる人々に縋りつき何事かを訴えているようだった。
「な、んだ。アレは……」
 一体何があったらあんな見た目になるのか、訳も分からずポカンと立ち尽くしてしまった。
 そんな俺に、とうとう彼の視線が止まる。
 動かないのをこれ幸いと、彼はフラフラと歩み寄り、倒れ込むように俺の両腕をがっしりと掴んできた。骨と皮ばかりの手に力はなく、振り払えば難なく抜け出せそうだ。しかし、それでは男性を地面に倒してしまう恐れがあった。何より、触れてちょっと力を入れただけでポッキリ折れてしまいそうで、怖くてできない。全身が乾いているその中で、目玉だけは爛々と輝き落ちくぼんだ穴の上でギッと俺を見ていた。
「どう、なっている?どうして、ここには、人がこんなにいるんだ?」
「は……?」
 やっとの思いで絞り出された声は掠れ、下手をすると喋るだけで口の中がささくれ立ってしまいそうだった。そして、その内容たるや意味が全く分からない。先に声をかけられた人々が、怪訝な表情を浮かべるわけだ。
「おじさん。何を言っているのか分からないよ。それより、どうしたの?何があったの?」
 行動と言動は怪し過ぎるおじさんだが、その表情に困惑と助けを求める色が見えてとにかく落ち着かせようと声をかける。しかし、おじさんは極度の飢餓状態にあるようで、まともに言葉を返すことができないようだった。
「分からない……わか……。考え、られな、何も、食べてな…から……」
 そう言った途端、おじさんは意識を失った。
「え、ちょっと!おじさん、おじさん?!」
 力の抜けた体の重みがドッと俺にかかり、軽いとは言え自分より背の高いその体を支えきれず尻餅をついた。押していた自転車が倒れ、ガシャン!と大きな音を立てた。籠から荷物も散乱し慌てていると、様子を見ていた周囲の男性何人かが駆け寄って来てくれ、俺は何とかおじさんの下から解放されたのだった。
 その後は駅前の交番から警察も駆け付け、救急車も呼ばれて大騒ぎだった。
 その間、俺は少し離れたところでその様子を暫く眺めていた。自転車も荷物も、有難い事に親切な人たちが元に戻して俺に渡してくれたのだった。
 おじさんの意味不明な言葉の意味が、妙に気になって仕方なかったから。
「何だったんだ?あれ」
「ああ、何か、最近ここへ流れてきたホームレスの人だったらしいわよ。ここ最近風邪をこじらせて寝込んでいたらしいわ」
「それで、あんな格好でフラフラしていたのか。高熱で幻覚でも見えたか?大丈夫かね」
「まあ、病院に運ばれていったから大丈夫じゃない?」
「そうだといいな」
 近くで同じ様に眺めていた男女二人の会話が聞こえて来た。
 なるほど、そう言うことだったのか。
 二人の会話がストンと心にはまり、俺は納得して自転車に跨った。
 先程まで感じていた妙な違和感は、不思議なほど綺麗さっぱり霧散していた。


 告白の日まで、あと五日。


  * * * * *

 白い廊下を歩きながら、白衣の女性は持っていたカルテを捲る。そこには、最近入って来た一人の男性の容態が事細かに書かれていた。
「意識は戻ったのね」
「はい。会話もできますし、食事も三食全て召し上がっております。ただ、記憶が混乱されているようです。ここへどうやって来たのかも、それ以前何をしていたのかも、自分が誰なのかも分からないご様子です」
 数歩後ろを歩く女性の看護師が、事務的な口調で男性の症状を告げて行く。
「傷の具合は?」
「後頭部にあった打撲痕以外はかすり傷です。骨にも内臓にも異常はありません。脈拍、血圧共に正常値まで回復しております」
「なるほど」
 看護師の報告に、女性は考え込む。しかし、その足の歩みは止まらない。
「記憶の混乱は、頭の傷からかしら?」
「多少の影響はあるかと思われますが、決定的な原因ではないと思われます。内部のダメージレベルがそれほどありませんので、推測するに原因は他にあるのではないかと」
「ふむ」
 淡々と述べる言葉に、女性は短く頷いて口を閉ざした。
 様々な可能性をはじき出していた彼女の足が、一つの病室の前で止まった。
 そこだけドアが開け放たれ、ふわりと穏やかなそよ風が女性の白衣の裾を揺らした。
 開け放たれたドアを、コンコンと叩く。
 すると、中から「はい」と少々しゃがれた男性の声で応答があった。
「お邪魔するわね」
 そう言うと、女性は看護師を従えて病室へと足を踏み入れた。
 薄暗い廊下とは違い、そこは光で溢れていた。半分開けられた窓から見える桜の花が、より一層部屋に暖かみを与えていた。それにつられたのか、硬い女性の表情も和らぎ病室のベッドに横たわる男性へと歩み寄った。ベッド以外、何もない白い部屋だった。ここへ来た時、彼は何も持っていなかった。荷物も、身分証明書も、記憶も何もかも。
「気分はどう?」
「はい。随分良いです。頭の痛みも段々引いていっています。難儀と言えば、寝たきりで筋肉が衰えっぱなしと言う事ぐらいですね」
 そう言って苦笑する男性に、女性も小さく笑みを浮かべた。
「それだけ言えれば、もう大丈夫そうね。でも、リハビリは少しずつよ?急激なトレーニングは返って悪化させるだけだから」
「はい、先生」
 笑みを消して静かに言う女性に、男性は目を伏せて答える。頷くことがまだ難しいことを、その細い首が物語っていた。
「それと、何か思い出したことはないかしら?」
 不意に、女性の目が厳しくなる。しかし、男性はそれに気づく様子もなく目を伏せたまま「うーん」と唸った。
「……いえ。自分の名前すら思い出せないままです。すみません」
「謝ることはないわ」
 肩を落としたのが雰囲気で分かる程落ち込む男性に、女性は険しい視線を消す。次の言葉を口にしようとした時、「あ」と男性が小さく声を上げた。
「どうかしたの?」
「あ、あの。一つだけありました。あ、でも、思い出したわけではなくて、よく病室に遊びに来てくれる女の子に指摘されたことなんですけど……」
「いいわ。何でも言って?」
 言いよどむ男性に、女性は少し強い口調で先を促す。
「はい。あの、私、寝ているときに寝言で女性の名前を呼んでいたそうなんです。“ハルミ”って。何度も何度も」
「ハルミさん、ね」
 白衣の胸ポケットからボールペンを取り出し、カルテにその名前を書き加える。
「あなたは、その名前を聞いて何か感じるものはないのかしら?」
 聞かれて男性は目を閉じ、胸を押さえる。
「そうですね……。その名前を聞く度に、胸の、この辺りがキュッと痛くなります。でも、それは嬉しい類のものではなくて、何と言いますか……不安になるといいますか、モヤモヤした感じが生まれます」
「なるほど……」
 聞いたことを、女性はカルテへと一字も漏らさず記入して行く。少し考え込み、トントンとボールペンのお尻でカルテの挟まれたバインダーを叩いた。
「……もしかすると、その人があなたの記憶を曇らせている原因の一つなのかもしれないわね。名前を呼ぶ程に知っている仲だったその人の身に、何か…思い出したくないことが起きたのかもしれない」
「思い出したく、ないこと……」
 女性の言葉に、男性は神妙な面持ちでじっと一点を見つめた。思考を巡らせ、懸命に思い出そうとしているようだった。しかし、次第に眉間に皺が寄り始める。そんな男性の肩を、女性がぽんぽんと叩いた。
「全身に力が入り過ぎているわ。そんなんじゃ、思い出せるものも、思い出せないわよ?記憶っていうのは、大概ふとした瞬間に戻るものなんだから、逆にリラックスした方が良い結果を招く可能性が高いかもしれないわ」
「そう、なんですか」
 眉間から皺を消し、ホッと詰めていた息を吐く。
「ええ。だからあなたは、先に体の調子を戻すことに専念するといいわ」
「分かりました。有り難うございます、先生」
 優しくも有無を言わさない強さを持った女性の言葉を、心からのものと取って小さく頭を下げた。
「それじゃあ、また来るわね」
「はい」
 くるりと踵を返した女性の後を、病室に来た時と同じ様に看護師が付き従う。その姿を見送ろうとして、ふと男性は思い出したようにその背に声をかけた。
「あ、そうだ。先生」
「何かしら?」
 それに答え、女性は今一度彼へと向き直った。
「夜に何度か空を見て思ったんですけど、月が見えないようなんです。今は、何か特別な天体状況か何かなんですか?それとも、この病院からは月が見えない角度に今は昇っているのですか?」
 男性の問いかけに、女性の表情が一瞬強張る。
「先生?」
 いつもなら直ぐ何かしらの返答をくれる先生から、何も返って来ない。
 訝しむように見つめていると、小さくため息が女性から漏れた。
「月は、もう二度と昇らないと思うわ」
「それは、一体どういう?」
 不思議そうに尋ねた男性に、女性は何かを振り払うようにきっぱりとした声で直ぐに返事をくれた。
「私にも分からない。でも、月はある日突然、昇らなくなったのよ。永遠にね」
「月が、ない?」
 余りの事実に納得が行かないのか、男性の表情は困惑に歪んでいた。その視線は、窓の外へと向かう。白い雲が浮かぶ青空に、桜のピンクが良く映える。そこに、昼間の月の姿を見つけることは出来なかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み