第8話

文字数 313文字

顔を覆っていた手が解かれ、シェヘラの唇に、やわらかいものが触れた。
シェヘラは驚いて、瞬きも忘れ、王の目を見詰めた。
猛禽類に似たその目に、あたたかな灯がともっていた。
王は今度はゆっくりと、自分の唇をシェヘラの唇に重ねた。
彼の舌の動きに合わせて、シェヘラは最初はおずおずと、次第に大胆に応じかえした。

シェヘラの頸に顔を埋めていた王は、しばらく動きを止めていたが、やがてシェヘラを抱き上げ、ベッドに横たえた。

「わたし、殺されるのは嫌よ……」
「馬鹿な。君は殺さないよ……」


夜が明けた。
シェヘラザードは、JRに乗らなくてもいい身分となった。
今では、シャハリヤール王が付きっきりで、彼女の小説の添削をしている。
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