渚

文字数 804文字

「渚君」


「....」



「渚君」




「......」





「ねぇ 渚君ってば」




「あっ ごめん。考え事してた」



「何味にする?」




「ブルーハワイ」



俺は彼女の園未(そのみ)と、地元の夏祭りに来ている。

母親と離れて7年が経つ
優しい仕事のできる母親だ。
仕事で忙しそうだが、いつも俺の事を気にしてくれているし 愛情を受けて俺は育った。
父は俺が幼い時 女と消えたらしいが、そんな父親を憎んでいた時もあったが、父親は父親の人生だからと今は割り切っている。

俺は今は祖母と一緒に住んでいる。
この春から就職して、働き出している
社会人一年目で、ただがむしゃらに教わったことをやりこなしている。 周りの上司は親切で、今のところ 大きな不安や不満はないが、 でも自分がこれで合っているか、この先もこの仕事をずっと続けていくかは、分からない。あまりこうじゃなきゃ行けないと決めつけないで、自分のむいている職にいつかは落ち着けると考えている。誰もがそうなるように。落ち着ける場所が、むいている場所となる。俺は仕事も大事だが 友人や彼女や家族も同じくらい、いやそれ以上に大事にしたい。親しい人には人としての泥臭さやカッコ悪さを隠さなくていい。カッコつけなくたっていい。一生懸命生きてる、みんな。


学生時代から付き合っている園未は、おとなしく俺だけを見てくれる。俺はただそれだけで良い。

贅沢も さほどなくて良い。「俺の心の隣人」が 園未が現れてから、孤独から園未に変わった。


今年の園未の浴衣姿を夏祭りの音と夏の潮の匂いとともに、俺は記憶する。


きれいだ


何年経ったって、俺は園未を離さない。

離れていってしまうなんて、想像もできない


来年も一緒に花火を観るんだ


俺は多くは望まない


日常のささやかな 幸せを 感じて


俺は生きる




打ち上げ花火が目の前に上がった




ヒュ~~~~~~~~~~~~


ドドーーーン!!





俺は 花火を見上げる園未の横顔を
気づかれないように 見て、
二人の未来を願った




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