文字数 1,580文字

 
 うひゃひゃひゃひゃ。
 純粋で混じりけのない子供の笑い声だ。ちょー楽しそう。でも、何でこんなに笑っているのかめちゃめちゃ気になる。

 すると、急に泣き始めた。
 
 決して同じ人とは思えないくらい、息を詰まらせながら呻くように泣いている。
 子供の情緒ってやばいな…。
 心配するところかもしれないが、のんきにそんなことを考えてしまった。

 ……。

 泣き止んだ。
 気が付くと、真っ暗だったはずの視界の遠くに地球が見えた。普段生活してると、地球という大きさについてすらも考えないような大きさなのに、こんなにも小さく見える。人の目というのは不思議だな。
 
 「ニャー、ニャー」
 
 そんなことを考えていると、ご飯をくださいと言わんばかりのネコの鳴き声が聞こえてきた。
 どこだろうと思って周りを見渡そうとすると、いきなり体が浮遊感に包まれた。

 うわぁぁぁぁぁーーー。
 
 ゴンッ。
 ベッドから落ちていた。
 久しぶりにベッドから落ちた。子供のころから寝相が悪かったけど、最近直ってきたと思っていたのに。

 二十歳になってもこんな寝相とか、彼女が出来ても一緒に寝れないじゃん。
あぁー誰か俺の寝相を受け入れてくれる女の子いないかなー。まぁ出来る気配もないんですけどね。
 朝からいい思考をしている。

 「あー、おはよ」

 独り言を言いつつ床から起き上がって、ベッドに横になりながら、スマホを手に取る。
 画面には七時一三分の表示。

 今日もしっかり早起き。健康的すぎる。
 最近はアラームがなくても起きれちゃうという何ともストレスフリーな体をゲットした。こうなった自分の体に感謝したい。
 
 何しよーかな、と思いながらホーム画面をフリックする。結局Instagramのアイコンをタップした。
 インスタを見ていると、世界にはいろんな人がいるんだなーと毎回思う。スマホを見ているだけで、勝手に世界を知った気になれる。不思議だ。
 
 気づけば、二十分も過ぎていた。
 あぁー、また時間無駄にした。これを毎朝しているから自分が如何にダメ人間かとも思う。でも、特に直したいとも思わないからもう末期だ。もはやここまでが毎朝の一つのルーティンになっている。
 
 だらけた体を起こして、洗面所へ向かう。
 
 鏡の自分を見て、やっぱり自分眠そうじゃんと思った。
 顔は少しむくんでいて、目も垂れている。

 「いーーー」

 自分の歯を見ながら今日も変化がないことを確認する。いい感じである。
 次に、顔を洗って濡れた顔をタオルの上から掌で目が八の字になるまで頬を全力で下に引っ張りながらで拭く。この瞬間がたまらなく好きだ。寝起きの皮膚を伸ばしに伸ばし、おはようと言わせる。血の流れが速くなり、皮膚が寝坊したかのように起きるこの瞬間。整うって感じで気持ちぃ。

 洗面所の電気を消して、冷蔵庫へ向かう。
 ヨーグルトを取り、コーヒーに牛乳を混ぜ机に持っていく。今日はおなかが減っているなと思って、食パンを二枚取りに戻って、机に置く。

 朝ご飯はいつもyoutubeを見ながら食べる。今日はおすすめにのっている、きっちりと白に整えられた勉強机を背景に「勉強vlog」と書いたサムネイルをタップした。最近は、こういうvlogというものを見るのにハマっている。なぜか、やる気が出る。へぇ~こんな勉強の仕方あるんだ、紹介されたアプリを後でインストールしよ、と思いながら見て、結局はやらないというオチだけど、そう思いながら見るのが好きだ。

 十分ほどの動画が終わり、コップを傾け、底に残ったカフェオレを飲み干す。

 テレビの前の時計で時間を確認するなり、今日もバイトだということを認識する。
 あぁー、頑張るかーー、なんて思いながら歯磨きをして、カバンにバイトの服を詰める。
 玄関に行って、

 「おい、今日も頑張ってくれよ」
 
 と言いながら靴を履き、玄関の戸を開ける。
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